メチルアルコール（別名：メタノール）は、実験や工業用などで幅広く使われるアルコールの一種です。しかし、一般の人が「どこで買えるの？」と探しても、すぐに見つからないのが現実。この記事では、メチルアルコールが購入できる場所や、購入時に注意すべきポイントを、法律面や安全性も踏まえて詳しく解説します。
メチルアルコールとは？基本情報をおさらい
まず、メチルアルコール（メタノール）は、化学式 CH₃OH で表される無色透明の液体です。揮発性が高く、独特の刺激臭を持ちます。燃料、塗料、溶剤、洗浄液、実験用試薬など、用途は非常に幅広い一方で、人にとって有害な性質を持つため、厳しく管理されています。
メチルアルコールは「エチルアルコール（エタノール）」と似ていますが、決定的な違いはその毒性です。誤って体内に入ると、視覚障害や神経障害を引き起こすことがあり、最悪の場合、命に関わる中毒症状を起こします。そのため、取り扱いには専門的な知識と法的な資格が必要です。
メチルアルコールはどこで買える？
一般の薬局やドラッグストアでは、メチルアルコールを取り扱っていません。これは、メチルアルコールが「毒物及び劇物取締法」で「劇物」に指定されているためです。販売するには行政への登録が必要で、購入者の身元確認や記録保存も義務付けられています。
それでも、正しいルートをたどれば購入は可能です。以下に主な購入場所を紹介します。
化学薬品の専門通販サイト
最も確実なのが、試薬や化学品を扱う専門通販サイトです。
代表的なサイトとして、ナカライテスク、関東化学、富士フイルム和光純薬などが挙げられます。これらのサイトでは「メタノール（特級）」や「メチルアルコール 99.8％」といった純度の高い製品を取り扱っています。
ただし、購入には法人登録や事業者登録が求められるケースが多く、個人では購入できない場合もあります。また、購入時には用途や所属を記載しなければならないこともあります。
化学品商社や試薬販売店
工場や研究所に化学薬品を卸している商社・販売店でも取り扱いがあります。
たとえば、「高杉製薬」や「三協化学」などでは、劇物販売の資格を持った登録業者を通して販売しています。
こちらも基本的には法人向けですが、大学・研究機関や企業での実験用途ならスムーズに手に入る場合があります。
ホームセンター・アウトドア用品店
ホームセンターで「燃料用アルコール」として販売されている製品の中には、メチルアルコールを主成分とするものがあります。
キャンプやアウトドア用のストーブ燃料として使われることが多く、パッケージに「メタノール」「燃料用アルコール」などの表記があります。
ただし、このような製品は純粋なメチルアルコールではなく、他の溶剤と混合された製品がほとんどです。純度や用途が異なるため、実験・化学用途としては不向きです。また、燃料用アルコールを誤って消毒や清掃などに使用するのは非常に危険です。
オンラインモール（Amazon・楽天市場など）
Amazonや楽天市場でも「メタノール」や「燃料用アルコール」で検索するとヒットします。
ただし、これもほとんどが燃料用アルコールや混合品です。純粋なメチルアルコール（試薬級・特級）は、販売業者が「劇物販売業者」である必要があり、個人への販売を行っていない場合が多い点に注意が必要です。
購入時に必要な条件と法的な注意点
メチルアルコールを購入する際には、いくつかの法律が関わります。特に重要なのが「毒物及び劇物取締法」と「消防法」です。
劇物としての取り扱い
純粋なメチルアルコールは「劇物」に指定されており、販売や譲渡を行う場合、販売業者は都道府県知事への登録が必要です。
また、購入者の氏名・住所・職業などの情報を販売記録として保存する義務が課せられています。購入時に署名や押印を求められることもあります。
このため、一般消費者が自由に購入することは難しく、正当な使用目的（研究・工業用途など）が求められます。
消防法による規制
メチルアルコールは引火性液体に分類され、消防法上の「危険物 第4類 第1石油類」に該当します。
保管や輸送には厳しい条件があり、火気や高温を避け、換気の良い場所で密封して保管しなければなりません。大量に保管する場合には、自治体への届出も必要になる場合があります。
メチルアルコールの用途と注意点
主な用途
・塗料やインクの溶剤
・燃料（バーナー用、ストーブ用など）
・洗浄液、脱脂剤
・化学実験や研究用途
・医薬品・香料製造の原料
これらはいずれも、正しい設備と知識を持つ環境でのみ使用されるべき用途です。特に実験や分析用の試薬として使う場合は、高純度のものを厳格な条件下で扱う必要があります。
使用上の注意
メチルアルコールは極めて毒性が高く、吸入や皮膚接触でも中毒を起こす可能性があります。
誤って飲むと、体内で代謝されてホルムアルデヒドやギ酸を生成し、視神経や中枢神経を侵します。少量（10ml程度）でも失明することがあるため、絶対に飲用してはいけません。
作業中は以下の点に注意しましょう。
- 換気を十分に行う
- 手袋・保護眼鏡を着用する
- 火気を絶対に近づけない
- 使用後は密封して冷暗所に保管する
メチルアルコールを消毒用として使ってはいけない理由
「アルコール」と聞くと、手指の消毒や掃除を連想する人も多いかもしれません。しかし、メチルアルコールは絶対にそのような用途に使ってはいけません。
手指消毒や掃除用の「消毒用アルコール」は、主にエタノール（エチルアルコール）を使用しています。
メチルアルコールは見た目が似ていますが、人体への安全性がまったく異なります。誤って皮膚に多量に触れたり、蒸気を吸い込むだけでも健康被害が出るおそれがあります。特に密閉空間で使用するのは非常に危険です。
安全に取り扱うためのポイント
- 使用目的を明確にする
— 研究・実験などの正当な目的以外では扱わない。 - 販売業者を確認する
— 劇物販売業の登録を持つ業者かをチェック。 - SDS（安全データシート）を確認する
— 毒性・引火性・応急処置などが明記されています。 - 保管環境を整える
— 密閉容器で換気の良い冷暗所に置く。 - 廃棄方法にも注意する
— 下水に流さず、産業廃棄物処理業者に依頼する。
これらのポイントを守ることが、自身の安全と法令遵守の両立につながります。
まとめ：メチルアルコールは専門業者から正しく購入を
メチルアルコール（メタノール）は、一般消費者が気軽に購入・使用できる化学物質ではありません。
劇物に指定されており、販売・購入・保管のすべてに法的な制限があるため、購入する場合は必ず登録業者や化学品通販サイトなど、正規ルートを利用する必要があります。
燃料用アルコールや混合溶剤として市販されているものもありますが、これらは用途や純度が異なります。誤用すると健康被害や事故につながる危険性があるため、安易に使用することは避けましょう。
もしメチルアルコールが必要な場合は、専門業者の指導のもと、安全な環境で正しく扱うこと。それが、あなた自身の安全と法令遵守のための最善の方法です。
メチルアルコールはどこで買えるのかを理解したうえで、安全と法律を守りながら、正しく取り扱うことが大切です。
