小型ながら高性能なPCを組みたい──そんな人の間で話題になっているのが、Lian LiとDan Casesが手がけた「A3-mATX」です。見た目のミニマルさと機能性を兼ね備えたこのケース、実際の使い心地はどうなのか。今回は、静音性やエアフロー、拡張性を中心に、リアルな使用感を掘り下げていきます。
A3-mATXとは？コンパクトでも侮れないマイクロATXケース
Lian Li A3-mATXは、マイクロATX／Mini-ITX対応の小型ケース。容量は約26.3リットルと、一般的なミニタワーよりもひと回り小さいサイズ感です。
それでもGPUは最大415mm、CPUクーラーは165mmまで対応し、電源ユニットもATXサイズが搭載可能という懐の深さを持ちます。
ケース全体がメッシュ構造になっており、通気性を最優先した設計。トップ、サイド、ボトムに最大10基のファンを取り付け可能で、360mmラジエーターにも対応します。冷却を重視したビルドにも十分対応できるスペックです。
組み立てやすさと作業性
A3-mATXを初めて手に取ったときに感じるのは、パネルの着脱が非常にスムーズだということ。
ネジを外す手間が少なく、磁石とラッチ構造で簡単に開閉できるため、内部アクセスが楽です。組み立てのしやすさはこのクラスのケースの中でもトップクラスといえます。
ただし、裏配線スペースはややタイト。ケーブルマネジメントにこだわる場合は、SFX電源や短めのケーブルを選ぶなど工夫が必要になります。
内部は広く見えますが、実際にパーツを組み込むとケーブルの取り回しに頭を使う場面も多いです。自作初心者よりは、中級者以上のビルダーに向いたケースといえるでしょう。
エアフロー性能：小型ながら高冷却設計
A3-mATXの最大の魅力は、なんといってもエアフロー性能です。
トップ、サイド、ボトム、背面すべてが通気口として機能し、吸気・排気の流れを効率的に作り出せます。
実際に組み上げてみると、GPUやCPUの温度は大型ATXケースと遜色ないレベル。特に水冷構成を採用した場合、360mmラジエーターを搭載できるため、ハイエンドCPUでも安定した温度を維持できます。
エアフローが良好な分、ファンの回転数を抑えても冷却効果を得やすく、結果的に静音化につながる場面もあります。
ただし、サイドにファンを追加する際は注意が必要です。設置位置や回転方向を誤ると、GPUの吸気と排気が干渉し、かえって温度が上がるケースがあります。エアフローの流れを意識して配置することが、A3-mATXを活かすコツです。
静音性の評価：メッシュ構造の光と影
静音性に関しては賛否両論。A3-mATXは全面メッシュ構造のため、通気性が高い一方で、内部の音が外へ抜けやすい設計です。
高負荷時にはファンの風切り音やポンプ音が感じられることもあり、「静音性は控えめ」というのが正直な印象です。
ただし、ベースのエアフロー効率が高いおかげで、ファンを低速運転させても十分に冷却できる構成が組めます。静音ファンや防振マウントを活用すれば、ノイズレベルを大きく抑えることも可能です。
つまり、静音ケースではなく「チューニング次第で静かにもできるエアフロー重視ケース」と捉えるのが適切でしょう。
冷却重視派にとっては理想的なバランス設計です。
拡張性：小型クラスとは思えない自由度
A3-mATXのもう一つの魅力が拡張性です。
mATXサイズながら、ATX電源を搭載でき、ハイエンドGPUも問題なく収まります。これは、同クラスのコンパクトケースでは珍しい特徴です。
また、ストレージベイは2.5インチ×2、3.5インチ×1と必要十分。NVMe SSDを活用する現代的な構成なら、これで不足を感じることはないでしょう。
さらに、トップ・サイド・ボトムのいずれかに360mmラジエーターを搭載できるため、水冷ユーザーにも選ばれています。
パーツ選びの自由度が高く、「小型PCなのに妥協したくない」という人にとって理想的な構成を実現できます。
外観とデザイン：シンプルで洗練された印象
A3-mATXは一見シンプルですが、ディテールが非常に丁寧。Lian Liらしい金属フレームの質感により、安っぽさを感じさせません。
ブラックとホワイトのカラーバリエーションがあり、どちらも落ち着いた雰囲気。インテリアにも馴染みやすいデザインです。
フロントパネルには木製パネルバージョンも登場しており、温かみを加えたい人にはこちらも人気。メッシュパネルへの交換も可能で、見た目と機能を両立できます。
ガラスサイドパネル仕様もあり、RGBライティングを活かしたい人にもおすすめです。
組み立て後の実使用感：熱も音もコントロールしやすい
実際に使ってみると、A3-mATXは冷却効率の良さが際立ちます。
高負荷時でも温度の上昇が穏やかで、CPUやGPUの熱を上手く逃がしてくれます。ケース全体がしっかりしており、振動による共鳴音も少ない印象です。
エアフロー重視のため静音性はやや犠牲になりますが、ファン設定を調整することでバランスは取りやすいです。
PCを長時間稼働させるゲーマーやクリエイターでも安心して使える構成を組みやすいケースといえるでしょう。
A3-mATXのメリットと注意点
メリット
- エアフローが優秀で冷却性能が高い
- ATX電源や大型GPUが搭載可能な拡張性
- 組み立てやすく、パネルのアクセス性が高い
- デザインがシンプルで高級感がある
- 水冷・空冷どちらにも柔軟に対応
注意点
- 静音性は構造上そこまで高くない
- ケーブルマネジメントの難易度がやや高い
- メッシュ構造のため埃対策が必要
埃対策としては、定期的なフィルター清掃やファンの正圧構成を意識することで、長期的な安定動作を維持できます。
どんな人におすすめか
A3-mATXは、「コンパクトでも妥協したくない」ユーザーにぴったりのケースです。
特に次のような人には強くおすすめできます。
- ハイエンドGPUを搭載したいゲーマー
- 水冷構成で静かかつ強力な冷却を狙うユーザー
- 美しいデザインのPCを組みたいビルダー
- 将来的なパーツ交換・増設を視野に入れている人
逆に、静音性を最優先したい人や初心者には、やや扱いづらい部分もあります。ケースの特性を理解してチューニングする楽しみを味わえる人に向いた製品です。
まとめ：a3 matxの実際の使い心地は？静音性や拡張性を徹底レビュー
A3-mATXは、静音性よりも「性能と拡張性」を重視したマイクロATXケースです。
フルメッシュ構造による冷却性能は抜群で、ハイエンド構成でも安定して動作。小型ながらも大型GPUやATX電源を収められる拡張性は特筆すべき点です。
一方で、メッシュゆえにノイズは多少感じられます。静音化を重視するならファン制御や吸音材の工夫が欠かせません。
とはいえ、調整次第でバランスを取りやすく、「冷却性能と静音性の両立」が可能なケースとして高評価を得ています。
総合的に見て、A3-mATXは「見た目」「性能」「自由度」の三拍子が揃った完成度の高いPCケース。
コンパクトPCを極めたい人には、間違いなく検討する価値のある一台です。
