イヤホンを選ぶとき、「音質」「装着感」「コスパ」——この3つのバランスほど悩ましいものはありません。そんな中で注目を集めているのが、finalの有線イヤホン「final A5000」です。
上位機種A8000のDNAを受け継ぎつつ、価格は3万円台という絶妙な立ち位置。果たしてその実力は本物なのか？この記事では、実際のレビューや評価をもとに、音質や装着感、そしてコスパを徹底的に掘り下げていきます。
final A5000とは？──上位モデル直系の高解像サウンド
final A5000は、日本の音響ブランド「final（ファイナル）」が手掛けるAシリーズの中堅モデルです。
同社が長年培ってきた音響設計をベースに、新開発の「f-CORE DU」ドライバーを搭載。より自然で透明感のある音を再現することを目指して開発されました。
価格帯はおおよそ3万円前後。
同クラスではMoondrop Blessing 3やSENNHEISER IE200などがライバルに挙げられますが、final A5000は「空間表現の広さ」と「高解像度の中高域」で特に高く評価されています。
外観はシンプルながらも機能的。ABS樹脂製の軽量ボディにシボ加工が施され、指紋や汚れがつきにくい仕様です。さらに0.78mmの2ピン端子を採用しており、リケーブルによる音質カスタムも可能。柔らかい銀コートOFCケーブルが標準で付属しているのも嬉しいポイントです。
音質レビュー：自然で広がりのあるサウンドステージ
final A5000を一言で表すなら、「正確さと聴き心地の両立」。
finalらしいナチュラルな音づくりの中に、現代的なディテール表現が光ります。
低域──タイトでキレのある低音
重低音を強調した派手さはなく、タイトでスピード感のある低域。
バスドラムの立ち上がりが明確で、ベースラインも一音一音がきれいに分離します。
EDMやロックなどリズムの強い楽曲でも、ボヤけずに芯のある低音を感じられるでしょう。
ただし、重低音を身体で感じたいタイプのリスナーには物足りなさがあるかもしれません。
“量より質”を重視したチューニングです。
中域──クリアで見通しのいいボーカル表現
中域はfinalらしい自然なトーンで、ボーカルやギターが空間の中で美しく浮かび上がるような印象です。
解像度が高く、特にアコースティック系や女性ボーカルでは息づかいやニュアンスが非常に繊細に伝わります。
一方で、ボーカルが少し引き気味に配置される傾向もあります。
前に出てくる迫力というよりは、音全体のバランスの中で綺麗に収まる“冷静な表現力”が特徴です。
高域──伸びやかで透明感のある響き
final A5000の真価はこの高域にあります。
シンバルやストリングスの余韻が自然に伸び、空気感を伴う表現が秀逸。
高解像でありながら刺さりが少なく、長時間聴いても疲れにくい仕上がりです。
解像度を高めすぎて人工的に感じることもある高域を、final A5000は滑らかにまとめています。
このあたりはfinalのチューニング技術の高さを感じさせる部分です。
音場と定位感──立体的で奥行きのある空間表現
音場の広さもfinal A5000の大きな魅力です。
楽器同士の分離がよく、まるで音が前後・上下に広がっていくような立体感があります。
ライブ音源を聴くと、ステージ上の配置が自然に感じ取れるほど。
奥行きを感じさせる表現力は、同価格帯ではトップクラスといえるでしょう。
装着感と使い勝手：軽くて快適、長時間でも疲れにくい
final A5000のボディは非常に軽量。
耳への圧迫感が少なく、装着していることを忘れるほどの自然なフィット感があります。
これはABS樹脂にシボ加工を施した筐体の形状設計によるものです。
イヤーピースはfinal定番の「TYPE E」シリーズが付属し、サイズも複数同梱。
自分の耳に合うサイズを選べば、遮音性と安定感が大幅に向上します。
さらに、付属のイヤーフックを使えばケーブルのタッチノイズも抑えられ、歩行時でも快適。
取り回しの良い銀コートケーブルは柔らかく、ポケットやケースに入れても絡みにくい設計です。
他モデルとの比較：A8000・E5000・Moondrop Blessing 3との違い
final A5000の位置づけをより明確にするため、いくつかの人気モデルと比較してみましょう。
- final A8000：上位機種で、より高解像・分析的な音。final A5000はそのキャラクターを継承しつつ、柔らかさと聴きやすさをプラスしている。
- final E5000：A5000より低域が豊かでウォーム。final A5000はよりクリアで定位が正確。
- Moondrop Blessing 3：ややフラット寄りのチューニングで、ボーカル中心の表現に強み。final A5000はより立体的な音場と明瞭な高域が魅力。
このように、final A5000は解像度と空間表現を両立させた“バランス型”の優等生といえます。
コストパフォーマンス：3万円台で得られるフラッグシップ級の満足度
final A5000の定価は約32,800円前後。
3万円台という価格帯は、エントリークラスを卒業して本格的に音を楽しみたい層にとって、ちょうど“次の一歩”となるレンジです。
同価格帯の中でfinal A5000が注目される理由は、**「解像度」「装着感」「設計品質」**の3つが非常に高水準で揃っている点にあります。
金属ハウジングを使わずに軽量化と音響精度を両立している点も独自。
また、リケーブル対応のため、将来的にバランス接続やアップグレードケーブルを導入すれば、音の表情をさらに引き出せます。
長く使える拡張性を考えると、コスパはかなり高いといえるでしょう。
購入前に知っておきたい注意点
レビューの中には、「高域がやや強めに感じる」「ボーカルが引っ込み気味」といった声もあります。
これはfinal独自の“フラットで自然な音”を狙った設計によるもの。
刺激的なサウンドやドンシャリ傾向が好きな方には、やや物足りなく感じるかもしれません。
また、有線イヤホンのためスマホ直挿しでは出力が足りない場合があります。
USB DACやポータブルアンプを併用すれば、final A5000のポテンシャルをより引き出せるでしょう。
こんな人にfinal A5000はおすすめ
- 解像度の高い音で、楽器の細部まで聴き取りたい
- 派手すぎない自然な音のバランスが好み
- 長時間でも快適に使えるイヤホンを探している
- 将来的にケーブル交換やバランス接続を試したい
- コスパの良い中価格帯モデルを探している
音質も装着感も妥協したくないという方に、final A5000はまさに理想的な選択肢です。
final A5000レビューまとめ：音の美しさと使いやすさが両立した傑作
final A5000は、高解像度・広い音場・快適な装着感という三拍子が揃った実力派イヤホンです。
軽やかで抜けの良い高域、タイトな低域、そして全体をまとめるナチュラルなチューニング。
どんなジャンルの音楽でもバランスよく鳴らしてくれる懐の深さがあります。
3万円台という価格でここまで完成度の高いイヤホンは多くありません。
派手さよりも自然さ、長く付き合えるリスニング体験を求める人にとって、final A5000は確かな満足を与えてくれるでしょう。
耳に優しく、音に誠実。
それがfinal A5000の最大の魅力です。
