ゼンハイザーの人気シリーズ「HD600系」に、待望の最新モデル「HD660S2」が登場しました。HD600やHD650から続く伝統の音作りを受け継ぎつつ、現代の音楽リスニング環境に合わせてアップデートされた開放型ヘッドホン。その音質や装着感、進化したポイントを実際のレビューをもとにじっくり掘り下げていきます。
HD660S2とは?ゼンハイザー600シリーズの新たな到達点
HD660S2は、ドイツの音響ブランドSennheiser(ゼンハイザー)が手掛ける開放型オーバーイヤーヘッドホン。伝統ある「HD600」「HD650」「HD660S」などに続く、いわば“第四世代”の600番台モデルです。
このシリーズは長年、自然で正確な音の再現力に定評があり、リスニング用はもちろん、音楽制作やミキシングにも多くのファンを持っています。HD660S2では、その系譜を保ちながらも現代的な改良が随所に施されています。
主なスペックは以下の通り。
- 開放型ダイナミックドライバー
- インピーダンス:300Ω
- 周波数特性:8Hz〜41.5kHz
- 新設計38mmトランスデューサー採用
- 3.5mmケーブルと4.4mmバランスケーブルが付属
外観は従来モデルに近いクラシックなデザインですが、内部はかなり刷新されています。特にドライバーのチューニングと低域の改善は注目ポイントです。
音質レビュー:HD660S2が描く“深みと自然さ”
HD660S2のサウンドでまず印象的なのは、低音の豊かさと伸び。前モデル「HD660S」と比べて共振周波数が110Hzから70Hzへと下がり、サブベースの再生能力が明確に向上しています。
キックやベースラインがより沈み込み、重心が安定。とはいえ量感過多ではなく、あくまで自然で音楽的なバランスを保っています。ゼンハイザーらしい正確さを損なわずに、低域の厚みを加えるという絶妙なチューニングです。
中音域はこのシリーズの真骨頂。ボーカルやアコースティックギター、ピアノなどが生々しく、余計な味付けのないナチュラルな音色で鳴ります。声の息遣いがリアルに伝わり、歌の温度感が感じられるのがHD660S2の魅力でしょう。
高域は滑らかで繊細。刺さりや強調感がなく、長時間のリスニングでも疲れにくい仕上がりです。シンバルの煌めきやストリングスの艶が程よく広がり、耳に心地よい透明感があります。
全体の印象をひとことで表すなら、「自然で音楽的」。どの帯域にも過度な強調がなく、音源そのもののバランスを素直に再現してくれる印象です。
HD660Sとの違い:変化は小さく、しかし確実に“上質”
前モデルHD660Sと比べると、HD660S2は見た目こそ大きく変わりません。しかし内部構造は進化しており、聴き比べるとその違いは明確です。
まず感じるのは低域の改善。HD660Sではやや控えめだった低音が、S2ではしっかりと沈み込み、量感とスピード感のバランスが取れています。音の輪郭がより滑らかで、空間全体に厚みが出ました。
中高域の表現も微調整されています。HD660Sのややクールな印象に比べ、S2は温かみが増しており、ボーカルが近く自然に感じられます。聴き疲れしにくいトーンでありながら、解像感はしっかり保たれている点も高評価です。
とはいえ劇的な変化ではなく、方向性としてはHD660Sの完成度をさらに磨き上げた「ブラッシュアップモデル」という印象。音の個性を維持しながら、より現代的でリッチな音楽再生を可能にしています。
HD650・HD600との比較:クラシックな“温かみ”vs現代的“バランス”
HD660S2をシリーズ内で見ると、位置づけは「HD600とHD650の中間を現代化したモデル」と言えます。
HD600は中域の正確さとモニターライクな音質で知られ、HD650はよりウォームで柔らかな響きを持ちます。HD660S2はその両者の美点を引き継ぎつつ、現代の音源やストリーミング時代に合わせて解像感や低域のレスポンスを強化した設計です。
HD650の滑らかさを残しながら、HD600の明瞭さを取り戻す。まさに「HDシリーズの集大成」とも言える音作りで、クラシックからポップス、ジャズまで幅広いジャンルに適応します。
装着感と使い心地:長時間でもストレスフリー
装着感については、ゼンハイザーらしい安定感があります。イヤーパッドは深めで耳をしっかり包み込み、ヘッドバンドのクッションも程よい柔らかさ。最初はやや側圧が強めに感じるかもしれませんが、数時間の使用で馴染んできます。
重量は約260gで、開放型としては軽量クラス。長時間のリスニングでも首や頭への負担は少なく、集中して音楽に没入できます。
付属ケーブルは3.5mm(アンバランス)と4.4mm(バランス)の2種類が同梱されており、ポータブルプレーヤーやバランス対応DAP、据え置きアンプなど環境を選ばず使用可能です。
音楽ジャンルとの相性:ボーカル中心の音楽で真価を発揮
HD660S2はどんなジャンルもそつなくこなしますが、特に相性が良いのはボーカル中心の楽曲やアコースティック系。中音域のリアルさが際立つため、シンガーソングライターやジャズボーカル、室内楽などでは圧倒的な存在感を発揮します。
低音が強化されたとはいえ、ドンシャリ傾向ではないため、EDMやヒップホップで“迫力ある重低音”を求める人には少し控えめに感じるかもしれません。しかし、その代わりに音の立ち上がりや解像感、音像の自然さは抜群です。
また、開放型ゆえに音の抜けが良く、空気感を伴った広がりのある音場を楽しめます。密閉型にはない「空気の流れ」を感じたい人には理想的なモデルです。
HD660S2を最大限に活かすアンプ・環境
HD660S2のインピーダンスは300Ω。スマートフォンやノートPC直挿しでも音は出ますが、本来の実力を発揮するにはヘッドホンアンプが必須です。
据え置きのDAC/AMPを通すことで、低域の締まりや音場の広がり、ボーカルの艶が格段に向上します。特に真空管アンプや高出力のバランス駆動環境では、S2のしなやかな音色がより際立ちます。
もしポータブル用途で使いたい場合は、出力に余裕のあるDAP(例:Fiio、iBasso、Astell&Kernなど)を選ぶと良いでしょう。
口コミ・ユーザー評価まとめ
実際のユーザーからも高い評価が集まっています。
良い点として多く挙げられているのは、
- 低音の厚みと伸びが心地いい
- ボーカルが自然で聴き疲れしない
- 長時間使用でも快適
- HD600系らしい正確な音がより豊かに
一方で、
- サウンドステージがやや狭く感じる
- 高域の煌めきが控えめ
- 価格がやや高め
といった声もあります。つまり「極端な派手さよりも、音楽の“本質”を聴かせるヘッドホン」という評価が多い印象です。
HD660S2レビューの総評:静寂の中に宿る深い音楽性
HD660S2は、ゼンハイザー600シリーズの集大成と呼ぶにふさわしい完成度を誇ります。派手さよりも、音楽の空気感や演奏の温度を丁寧に再現するヘッドホン。低音の強化によって音楽全体に深みが増し、どんなジャンルでも安心して聴ける“日常使いのリファレンス”として頼れる存在です。
また、開放型ならではの透明感と自然な響きが、リスニングをより没入的な時間に変えてくれます。静かな環境でじっくり音楽と向き合う──そんな時間を求める人にこそ、このモデルをおすすめしたいです。
HD660S2レビューでわかった、最新モデルが示す進化
改めてまとめると、HD660S2は前モデルの良さを継承しつつ、低音の表現力と音楽的な自然さを大幅に向上させたモデルです。ゼンハイザーの伝統と技術が融合した結果、ただのリファインではなく“完成形に近づいた進化”を感じます。
派手な味付けよりも原音忠実、でも心に響く音が欲しい――そんな方にはHD660S2がぴったりでしょう。長く聴くほどに、その静かな魅力に引き込まれていくはずです。
