2025年の大阪・関西万博で話題になっている「null2（ヌルヌル）」。名前を聞いた瞬間、「これって一体何？」と思った人も多いのではないでしょうか。実際に訪れて体験してみると、これまでの展示の概念を完全に覆す“異次元のパビリオン”でした。この記事では、実際の体験を踏まえつつ、null2の性能や使い勝手、そして感じたことをリアルにお伝えしていきます。
null2とは？「無」から始まる知覚の実験空間
null2（正式表記：null²）は、大阪・関西万博のシグネチャーパビリオンのひとつ。メディアアーティスト・落合陽一氏がプロデュースし、「いのちを磨く（Polishing Lives）」というテーマのもとに作られました。
まず特筆すべきはその名前。「null」とはプログラミング用語で“値がない”という意味ですが、ここでは“何もないからこそ、あらゆる可能性が生まれる”という哲学的なメッセージを込めています。つまり、無＝ゼロではなく、「何かが生まれる余白」なのです。
この考え方が、建築デザインや体験内容のすべてに反映されています。
建築デザインの衝撃──鏡面が生きているように動く
会場に着いてまず圧倒されるのが、外観の存在感。null2の建物は、巨大な鏡面素材で覆われています。風が吹くたびにゆらゆらと波打ち、まるで生きているように姿を変えるんです。
この構造は単なるデザインではなく、実際にロボットアームや柔軟な膜構造を組み合わせた動的なシステムによって成立しています。建築とテクノロジーの融合というよりも、「建築そのものが生命のように呼吸している」感覚。昼と夜でも印象がまったく変わり、特に夕方の光が反射する時間帯は圧巻です。
内部体験：自分の“分身”が現れる不思議な世界
内部に入ると、まず感じるのは空間の静けさと光の美しさ。LEDスクリーンとミラーが一体化し、現実とデジタルの境界が完全に曖昧になります。自分の姿が映り込み、同時にそれがデジタルのノイズに溶けていく──その瞬間、観客と作品の境界が消えます。
体験モードは大きく2種類。
1つ目は「ダイアログモード」。事前にアプリ「Mirrored Body」で自分のアバターを作成しておくと、そのデジタル分身が展示内で登場します。AIとの対話が進む中で、自分の内面や記憶が反射されるような体験が得られます。
2つ目は「インスタレーションモード」。こちらはアバターなしで、純粋に映像や音、光の変化を感じ取る展示スタイルです。
どちらのモードも、言葉では表しづらい“没入感”があります。まるで自分が作品の一部になったような、そんな不思議な錯覚を覚えるでしょう。
Mirrored Bodyアプリの使い勝手
null2をより深く楽しむための鍵になるのが、専用アプリ「Mirrored Body」。顔写真や声を登録すると、自分のアバターを生成できます。
操作は直感的で、数分で作成可能。ただし、アプリを使わなくても展示自体は体験できます。体験者の声を聞く限り、「アプリを使うと没入感が格段に上がるが、使わなくても十分楽しめる」という意見が多い印象です。
AIアバターとの対話は、単なるチャットではなく、自分の“デジタルな鏡像”と向き合うような感覚。質問に対してAIが予想外の返答をすることもあり、まるで自分の思考を外から観察しているようでした。
テクノロジーとアートの融合点
null2では、建築・ロボティクス・映像・AIが高度に統合されています。特に注目すべきは、ロボットアームによる鏡面の物理変形。空間全体がゆらぎ続け、映り込む人や風景が絶えず変化します。
さらに内部の映像はリアルタイム処理されており、来場者の動きや視線に反応。これにより「参加型アート」としての要素も強くなっています。技術的な完成度は非常に高く、まさに“未来の展示体験”という言葉がふさわしい内容です。
このようなデジタルと物理の融合は、落合陽一氏の代表的なコンセプト「デジタルネイチャー（Digital Nature）」の集大成とも言えます。人間とテクノロジーの境界を自然に溶かす──そんなビジョンが、null2全体を貫いています。
来場者の声：理解不能なのに、忘れられない
SNSやレビューを見ていると、体験者の感想は大きく二つに分かれます。
「美しい、感動した」「これまでの展示とは全く違う」という絶賛の声がある一方で、「難しい」「何を見せられているのか分からなかった」という戸惑いの感想も目立ちます。
ただし、どちらの意見にも共通しているのは「強烈な印象が残る」という点。理解できたかどうかよりも、“心に残ったかどうか”が重要なのかもしれません。体験後もしばらく余韻が続くタイプの展示で、単なるアトラクションではなく「思索のきっかけ」として評価されています。
体験の流れと注意点
体験時間はおよそ30分ほど。事前予約制の場合もあり、混雑時は待ち時間が発生します。アプリを使う場合は事前に設定を済ませておくとスムーズです。
内部は暗く静かで、写真撮影は制限されています。空間そのものが作品なので、撮るより“感じる”ことに集中したほうが楽しめます。また、展示の内容上、光や映像の刺激に敏感な人は事前に注意しておくと安心です。
服装に関しては、床や壁が反射素材になっているため、落ち着いた色味の服の方が映り込みが自然で、より体験に集中できます。
null2が問いかける「未来の知覚」
null2は、ただの未来的アートではありません。
ここで問われているのは、「人間とは何か」「デジタルと生命はどう共存するのか」という根源的なテーマです。
AIやメタバース、アバター技術が進化する今、null2が提示する“デジタルと自己の融合”は非常に示唆的です。人とテクノロジーの境界を曖昧にしながら、私たちが「自分」という存在をどう定義していくのか。その問いを体験として投げかけてくる展示です。
実際に体験して分かった「性能」と「使い勝手」
パフォーマンス面では、映像・音響・構造のすべてが高水準。技術的なトラブルもほとんど見られず、滑らかに動くミラーや反応するAIが印象的でした。
使い勝手に関しては、アプリ連携がスムーズで、体験導線も明確。スタッフの案内も丁寧で、デジタルに不慣れな人でも迷わず進行できる設計になっています。難解なテーマながら、ユーザーエクスペリエンスの完成度は高いです。
ただし、哲学的なメッセージが多いため、「意味を理解したい」という姿勢で臨むと少し難しく感じるかもしれません。逆に、素直に“感じる”つもりで参加すると、より深く楽しめるはずです。
null2の性能や使い勝手を徹底レビューで検証してみた（まとめ）
null2は、建築・テクノロジー・アートが融合した、まさに“次世代の体験装置”でした。外観から内部演出、AI対話まで、どの要素を取っても「未来」を感じさせます。
単なる展示ではなく、「自分とは何か」を体験を通して考えさせる場。
性能面は申し分なく、使い勝手も高水準。
一方で、理解よりも感覚が先に来る構造は、賛否両論を呼ぶでしょう。
それでも、null2が放つメッセージには確かな力があります。
「無」から何かが生まれる瞬間を、自分自身の目で確かめてみてください。
きっと、あなたの中にも新しい何かが芽生えるはずです。
