音楽を“聴く”というより“浴びる”感覚。そんな表現がぴったりなのが、ソニーのワイヤレスヘッドホン「WH-ULT900N」。今回は、このモデルを実際に使って感じた重低音の迫力や装着感、そして日常使いでの実力をじっくりレビューしていく。
WH-ULT900Nとは?「ULT WEAR」シリーズの位置づけ
WH-ULT900Nは、ソニーが2024年に発売した新シリーズ「ULT WEAR」の上位モデル。名前にある“ULT”は「Ultimate Bass」の略で、文字通り重低音に特化したサウンド設計が最大の特徴だ。
Bluetooth 5.2対応で、LDACによるハイレゾ音源のワイヤレス再生も可能。さらにノイズキャンセリング(ANC)や外音取り込み、マルチポイント接続など、最新機能をしっかり押さえている。
一見すると、ソニーの定番「WH-1000XM5」シリーズの弟分のように見えるが、方向性はまったく違う。1000XMシリーズが“繊細で高解像度なリスニング体験”を目指しているのに対し、WH-ULT900Nは“体で感じる重低音”をテーマにしている。
専用「ULTボタン」で切り替わる低音の世界
WH-ULT900Nの象徴ともいえるのが、左ハウジングに備えられた「ULTボタン」。
このボタンを押すことで、3つのモードを瞬時に切り替えられる。
- OFF:フラット寄りで、バランス重視のサウンド。
- ULT1:低音が深く沈み込み、クラブ系サウンドが映える。
- ULT2:空間そのものが震えるような超ド迫力の重低音。
実際に聴いてみると、ULT1でもかなりの迫力があり、EDMやロックを流すと、まるでライブハウスにいるような臨場感。ULT2ではさらに音圧が増し、ベースやキックが身体の芯まで響くようだ。
ただし、低音が強すぎて長時間聴くと少し疲れる人もいるかもしれない。ジャンルや気分に合わせてモードを変えるのが、このヘッドホンを楽しむコツだ。
音質の印象:ソニーらしい温かみと包容力
低音が主役のモデルではあるものの、ただ“ドンシャリ”なだけではない。
WH-ULT900Nの音作りは、全体的にウォームで厚みのある中低域を中心に、ボーカルやメロディもきちんと前に出るバランスを保っている。
ソニー独自の「統合プロセッサーV1」が搭載されており、ノイズキャンセリング処理や音質最適化の精度も高い。
ロックやヒップホップのようなリズム重視の曲では圧倒的な臨場感を発揮し、ポップスやアコースティックでも心地よい厚みがある。
ただし、繊細な弦のニュアンスや高域の伸びを重視するリスナーには、少し“丸い”音に感じるかもしれない。
ノイズキャンセリング性能と外音取り込み
WH-ULT900Nにはアクティブノイズキャンセリング機能が搭載されている。
通勤中の電車内やカフェで試してみたところ、低音域の騒音をしっかりカットしてくれる印象。エンジン音や車輪のゴロゴロ音がスッと消え、音楽だけに集中できる。
ただし、ソニーのフラッグシップ「WH-1000XM5」と比べると、ノイズ除去の精度はやや控えめ。環境音を完全に遮断するというよりは、「生活ノイズを適度に減らして聴きやすくする」イメージだ。
一方で、外音取り込み機能は自然で、コンビニや駅でのアナウンスも聞き取りやすい。タッチ操作で素早く切り替えられるため、日常シーンでの使い勝手は非常に良い。
装着感とデザイン:長時間でも疲れにくい仕上がり
WH-ULT900Nは、見た目以上に軽く、約255gと持ち運びも苦にならない。
イヤーパッドは柔らかく、適度なホールド感があり、長時間のリスニングでも耳が痛くなりにくい。側圧も絶妙で、締め付けすぎず、ずれにくい。
実際に3時間ほど装着しても蒸れにくく、頭頂部のクッションもしっかりしているため、装着時のストレスが少ない。
デザイン面では、ソニーらしいシンプルなミニマルスタイル。マットな質感で指紋が付きにくく、ブラック・ホワイト・ベージュの3色展開。ファッションとの相性も良く、外で使っても主張しすぎない。
接続・操作性:ストレスフリーなBluetooth体験
Bluetooth 5.2対応で、接続の安定感は抜群。
動画視聴やゲームでも遅延をほとんど感じないレベルだ。
さらに、マルチポイント接続に対応しているため、スマホとPCを同時接続してシームレスに切り替え可能。リモート会議や音楽鑑賞を並行する人にはありがたい機能だ。
操作はハウジングのタッチセンサーで直感的に行える。
音量調整、曲送り、再生・一時停止、外音モードの切り替えなど、慣れるとスマートフォンを触らなくても操作が完結する。
アプリ「Headphones Connect」では、サウンドモードやEQのカスタマイズも可能。自分好みの低音チューニングを追い込むことができる。
バッテリー性能と使い勝手
WH-ULT900Nのバッテリーは、ノイズキャンセリングONで最大30時間、OFFで最大50時間と非常に優秀。
通勤や通学、リモートワークなど、1週間ほど充電なしで使える感覚だ。
また、10分の充電で約5時間再生できる急速充電にも対応している。
USB-Cケーブルでスマホと同じ充電器が使えるのも便利なポイント。
実際の使用感:音楽体験が変わる“振動する重低音”
初めてWH-ULT900Nで音を鳴らしたとき、低音の「存在感」に驚かされた。
ベースラインやキックドラムがまるで体に触れるように響き、普段聴き慣れた曲がまるで別物のように感じられる。特にライブ音源やクラブトラックでは、空気を押し出すような音圧が耳を包み込む。
一方で、ボーカルやメロディも埋もれず、音の分離感があるのがソニーらしい。
全体のバランスが崩れず、どんなジャンルでも“聴いていて気持ちいい”音に仕上がっている。
まさに「聴く快感」と「感じる重低音」を両立したモデルだ。
どんな人におすすめか
WH-ULT900Nは、以下のようなリスナーにおすすめできる。
- 迫力ある重低音を求める人
- ロック・ヒップホップ・EDMをよく聴く人
- ソニー製ヘッドホンの装着感やデザインが好きな人
- 長時間リスニングでも疲れにくいモデルを探している人
- コスパ重視で高機能ヘッドホンを選びたい人
逆に、バランス型・高解像度志向のサウンドを好む人や、ノイズキャンセリング性能を最重視する場合は、上位のWH-1000XM5などを検討しても良い。
WH-ULT900Nの重低音サウンドを改めて総括
WH-ULT900Nは、ただの“重低音ヘッドホン”ではない。
低音の迫力だけでなく、装着感・機能性・操作性のバランスが取れた完成度の高い一台だ。
特にULTボタンによるサウンド切り替えは、シーンや気分に合わせた音作りを可能にし、日常の音楽体験をワンランク上に引き上げてくれる。
「音を聴く」から「音を感じる」へ。
WH-ULT900Nは、その境界を軽やかに越えてくる存在だ。
重低音を愛する人なら、一度はこの“振動する音楽体験”を味わってほしい。
