「レ・ミゼラブルの映画っていっぱいあるけど、どれを観ればいいの？」
そんな疑問を持った人は多いと思います。フランス文学の金字塔『レ・ミゼラブル』は、何度も映画化・舞台化されていて、それぞれに魅力が違います。
この記事では、「原作への忠実度」と「感動度」という２つの視点から、主要な映画版を比較しつつ、自分に合った一本を選ぶためのヒントを紹介します。
レ・ミゼラブルとは？原作の壮大さと映画化の難しさ
まずは少しだけおさらいを。
『レ・ミゼラブル』はヴィクトル・ユゴーが1862年に発表した長編小説。元囚人ジャン・ヴァルジャンの贖罪と救いの物語を軸に、19世紀フランスの貧困・革命・信仰・愛など、社会全体を描き出す壮大な作品です。
登場人物の数も多く、背景も複雑。ユゴーは物語の途中でパリの下水道や革命思想の説明を長々と挟むなど、文学的・思想的な深さが特徴です。
だからこそ、映画化するときには必ず「どこを削るか」「何を残すか」という取捨選択が必要になります。これが、どの映画版も一長一短になる理由です。
原作に最も忠実：レ・ミゼラブル（1934年版）（監督：レイモン・ベルナール）
まず紹介したいのが、1934年に公開されたフランス映画版。
この作品は「最も原作に忠実な映像化」として知られています。全３部構成で合計４時間半を超える長編。白黒映画でありながら、ユゴーの原作にある登場人物や社会背景を丁寧に描き切っています。
ジャン・ヴァルジャンの苦悩、ジャヴェール警部の執念、フォンティーヌの悲劇、コゼットとマリウスの恋、六月暴動の混乱…。
すべてのエピソードが、原作を深く理解したうえで構成されています。
演出も重厚で、文学的な「静けさ」と「緊張感」が見事に共存しています。
ただし、古い映画特有のテンポの遅さは否めません。映像もモノクロで、音質も現代映画ほどクリアではありません。
でも、「レ・ミゼラブルを文学として味わいたい」「原作にできるだけ近い映画を見たい」という人には、間違いなくこの1934年版が最適です。
バランス型で観やすい：レ・ミゼラブル（1998年版）（監督：ビル・オーガスト）
次におすすめなのが、1998年の英語版映画。
ジャン・ヴァルジャンをリーアム・ニーソン、ジャヴェールをジェフリー・ラッシュが演じています。
このキャスティングだけでも重厚感がありますよね。
この作品は、２時間強という上映時間の中で原作の主要エピソードをコンパクトにまとめています。
ヴァルジャンの改心、コゼットとの出会い、ジャヴェールとの因縁、革命の若者たちとの交流——物語の骨格はすべて残っています。
「原作忠実度」は中程度ですが、ドラマとしての完成度は高い。演出もシンプルで、感情表現が丁寧なので、初めて『レ・ミゼラブル』に触れる人にもわかりやすいです。
「重すぎず、でも感動したい」という人にぴったり。
ただし、省略されたエピソードも多く、原作の思想的な部分は弱め。
文学的深みよりも、人物の感情に焦点を当てた構成です。
それでも、ストーリーの流れが美しく、ラストの余韻も見事。観やすさと感動のバランスが取れた一本です。
圧倒的な感動を味わうなら：レ・ミゼラブル（2012年版）（監督：トム・フーパー）
そして、多くの人が「レ・ミゼラブル」と聞いて真っ先に思い浮かべるのが、2012年のミュージカル映画版です。
ヒュー・ジャックマン、アン・ハサウェイ、ラッセル・クロウなど、豪華キャストによる名演が話題となり、世界的に大ヒットしました。
この作品は原作というより、「舞台ミュージカル版の映画化」です。
そのため、細かな設定やエピソードは省略されていますが、音楽と演技で感情を爆発させるような作りになっています。
アン・ハサウェイ演じるフォンティーヌの「夢やぶれて」は、映画史に残る名シーン。
涙なしでは観られません。
全編がほぼ“生歌収録”というスタイルで撮影され、リアルな息遣いがそのまま画面から伝わります。
演出の迫力、カメラワークのダイナミズム、群衆シーンのスケール感。
どれを取っても圧倒的です。
ただし、ミュージカル形式が苦手な人には合わないかもしれません。
セリフのほとんどが歌で構成されているため、物語より音楽に引っ張られる印象もあります。
それでも、「心が動く映画が観たい」「映像と音楽で涙を流したい」という人には、間違いなく2012年版がベストチョイスです。
映画版の選び方：自分の「観たいポイント」で決めよう
ここまで紹介した３作品は、それぞれ違った魅力があります。
どれが“正解”というわけではなく、「自分が何を求めて観たいか」で選ぶのがコツです。
- 原作を味わいたい人 → レ・ミゼラブル（1934年版）
- ストーリーを分かりやすく楽しみたい人 → レ・ミゼラブル（1998年版）
- 感動と音楽を重視したい人 → レ・ミゼラブル（2012年版）
もし『レ・ミゼラブル』を初めて観るなら、まずは1998年版か2012年版が良いでしょう。
1934年版は、物語の全体像を知ってから観ると、より深く理解できます。
また、複数の作品を観比べてみると、「同じ物語なのに、監督によってこうも違うのか」と驚くはずです。
映画を通して感じる“人間の救い”と“希望”
どの映画版にも共通しているのは、「人は変われる」「赦しは存在する」というメッセージです。
ジャン・ヴァルジャンは過去の罪を背負いながらも、他者のために生きようとします。
そして、それを執念深く追うジャヴェールすら、最後には法と良心の間で苦悩する。
この人間ドラマこそ、『レ・ミゼラブル』が150年以上にわたって愛され続けている理由。
映画版では、そのテーマが演技・音楽・映像という形で目に見える感情として表現されます。
観終わったあとに、自分の中の“何か”が少しやさしくなる。
そんな体験をさせてくれる作品です。
まとめ：レ・ミゼラブルの映画はどれがいい？
「レ・ミゼラブルの映画はどれがいい？」という問いへの答えは、一つではありません。
原作に忠実な1934年版、感情に寄り添う1998年版、音楽で心を震わせる2012年版。
それぞれが違う形で、ユゴーの物語を現代に伝えています。
重厚な文学として味わいたいなら1934年版。
観やすくてストーリーに没入したいなら1998年版。
涙が出るほど感動したいなら2012年版。
どの映画も、“人が人を想う”という普遍的なテーマを、時代を超えて描いています。
どれを選んでも、きっとあなたの心に残るシーンがあるはずです。
