「iMac Proが販売終了した」というニュースを耳にして、驚いた人も多いのではないでしょうか。
2017年に登場したiMac Proは、“最強のオールインワンMac”としてクリエイターやエンジニアに愛された存在でした。
しかし、2021年に突然販売が終了。なぜ、あれほどハイスペックなモデルが姿を消したのか——。
この記事では、その理由と背景、そして現在のMacラインナップの中で「iMac Proの後継」と言えるモデルについて、わかりやすく整理していきます。
iMac Proはどんなモデルだったのか
まず、iMac Proの特徴を振り返りましょう。
2017年12月に登場したiMac Proは、27インチ5Kディスプレイを搭載した一体型デスクトップ。
最大18コアのIntel Xeon Wプロセッサ、AMD Radeon Pro Vegaグラフィックス、10Gbイーサネットなど、当時としては群を抜く性能を誇りました。
外観は従来のiMacに似ていますが、カラーは専用のスペースグレイ。
内部の冷却設計も強化され、長時間の高負荷処理にも耐えられる仕様でした。
Appleが“プロフェッショナル向け”として発売した初のオールインワンMacであり、動画編集や3Dレンダリング、音楽制作など、重い作業を日常的にこなすユーザーに支持されていました。
短命だったiMac Proが販売終了した理由
1. アップデートがほとんどなかった
iMac Proは登場から3年以上の間、大きなモデルチェンジが行われませんでした。
2019年にメモリ構成の変更、2020年に8コアモデル廃止など、細かな調整はあったものの、ハードウェア全体の刷新はなし。
結果的に、性能的にも価格的にも中途半端な位置づけとなり、ユーザーから見ても“買う理由”が弱まっていったのです。
2. Apple Siliconへの移行が始まった
2020年、AppleはIntelプロセッサから自社開発のApple Silicon（M1チップ）への移行を発表しました。
これにより、IntelベースのMacは“過渡期モデル”となり、今後のアップデート対象から外れる流れに。
iMac Proも例外ではなく、Apple Silicon時代の到来によってその存在意義が薄れていきました。
M1 MaxやM1 Ultraシリーズは省電力かつ高性能で、発熱も少ない。
つまり、iMac Proが担っていた「ハイパフォーマンスデスクトップ」という役割を、新世代のMacが自然と引き継いでしまったのです。
3. 他モデルとの棲み分けが難しくなった
iMac Pro登場当時は、通常のiMacより明確に性能が高く、Mac Proよりもコンパクトという“ちょうどいい立ち位置”でした。
しかし、その後の27インチiMacが進化し、CPUやGPU性能でiMac Proに迫るようになります。
同時にMac Proも新世代に刷新され、プロ向けワークステーションとして再び注目を集めました。
結果、iMac Proは「上位iMacと下位Mac Proの間」に埋もれ、明確な存在理由を失っていったのです。
4. Appleの製品戦略の変化
Appleは2021年以降、「ラインナップの整理」を進めています。
ノートはMacBook AirとMacBook Proに集約。
デスクトップは、2022年に登場したMac Studioが“プロ向けデスクトップ”の新しい柱に。
このMac Studioの存在こそが、iMac Pro販売終了の最大の理由の一つです。
Mac Studioは、M1 MaxやM1 Ultraを搭載し、静音性・性能・拡張性のバランスに優れたモデル。
Apple Siliconの圧倒的な性能により、iMac Proのような高価なIntel機を維持する必要がなくなったと考えられます。
5. 高価格ゆえの販売規模の限界
iMac Proの販売価格は日本でも約60万円〜と非常に高額でした。
カスタマイズを加えると軽く100万円を超える構成もあり、個人ユーザーには手が届きにくいモデル。
法人やプロスタジオなど限られた市場にしか需要がなく、Appleのメインストリーム戦略とは噛み合いにくかったといえます。
このように「アップデート不足」「製品の重複」「Apple Silicon移行」「高価格帯によるニッチ化」が重なり、販売終了という判断に至ったとみられます。
iMac Proの後継はどのモデル？
では、「iMac Proの後継」は存在するのでしょうか？
Appleは明確に“後継機”を名乗る製品を出していませんが、実質的にその役割を担うのが「Mac Studio」です。
Mac Studio
2022年に登場したMac Studioは、Apple Silicon（M1 Max／M1 Ultra）を搭載する新しいプロ向けデスクトップ。
見た目はコンパクトですが、性能はiMac Proを大きく上回ります。
GPUやメモリをSoCに統合することで、処理効率と省電力性を両立。
外部ディスプレイを自由に組み合わせることで、用途に応じた柔軟な環境を構築できます。
AppleはiMac Proのような一体型デザインを捨て、性能を最大化する“分離構造”へと舵を切りました。
この方向転換が、Apple Silicon時代の象徴とも言えるでしょう。
Apple Silicon版iMac
もうひとつの流れは、M1チップを搭載した24インチiMacです。
こちらは一般ユーザー向けですが、M1の性能が高いため、従来のIntel iMac Proと同等かそれ以上のパフォーマンスを発揮します。
将来的には、より大型の27インチやM3チップ搭載モデルが登場すれば、“iMac Pro後継”に近い存在になる可能性もあります。
現行Macとの違いを整理
iMac Proが活躍した時代と、現在のMacラインナップには大きな違いがあります。
主なポイントを挙げると以下の通りです。
- チップ構造の違い：iMac ProはIntel Xeon Wベース、現行MacはApple Silicon（M1／M2／M3）ベース。
これにより、性能あたりの電力効率が大幅に改善されました。 - 拡張性の方向性：iMac Proは内部拡張がほぼ不可能でしたが、Mac StudioやMac Proは外部拡張が容易です。
- 設計思想：iMac Proは「美しい一体型ハイエンド」、現行Macは「モジュール化・最適化・効率重視」。
- 価格帯：iMac Proは最低60万円〜。
一方でMac Studioは本体40万円前後から構成可能で、より幅広い層に手が届くようになりました。
こうした変化を見ても、Appleが「デザイン性よりも性能と柔軟性」を重視する方向にシフトしたことが分かります。
iMac Proは美しいがゆえにアップグレードが難しく、結果的に短命な存在になったのです。
iMac Proが残したものと今後の展望
iMac Proはわずか3年ほどの短命モデルでしたが、その存在が示した意味は大きいと言えます。
それまでのiMacは“家庭用・ビジネス用”という印象が強く、プロフェッショナルには物足りない部分がありました。
iMac Proは「オールインワンでも本気の仕事ができる」という新しい価値観を提示し、その思想は現在のMac StudioやMシリーズに受け継がれています。
Appleは今後、Apple Siliconを軸にした統一的なラインナップをさらに進化させていくでしょう。
もし今後“iMac Pro”の名前が復活するとしたら、それはM3 UltraやM4シリーズといった次世代チップを搭載した、完全に新しい形のオールインワンMacになるかもしれません。
iMac Pro販売終了まとめ：時代の転換点に消えたプロ機
iMac Proが販売終了となった理由は、技術革新と戦略転換が重なったから。
Apple Siliconの登場により、Intel時代のハイエンド機は役割を終えました。
アップデートの遅れや価格の高さもあり、ユーザー層が限定的になったことも背景にあります。
しかし、そのDNAは今も生きています。
Mac StudioやMシリーズ搭載iMacが、その精神を受け継ぎながら進化しているのです。
“最強のオールインワンMac”としての栄光を残しつつ、iMac ProはAppleの進化の過程に刻まれた象徴的な存在でした。
そして今、私たちはその後継者たちの新しい時代を目の当たりにしているのです。
