「そういえば、もうiPodって売ってないの?」──そんな声を耳にしたことはありませんか。
Appleが生んだ名機「iPod」は、2000年代の音楽シーンを象徴する存在でした。けれども2022年5月、最後のモデル「iPod touch」の販売終了が正式に発表され、21年にわたる歴史に幕を下ろしました。
この記事では、なぜiPodが販売終了したのか、その背景や理由、そして今後の代替機についてわかりやすく解説します。
iPodとは?音楽を“持ち歩く”文化を作った名機
2001年に登場した初代iPodは、「1000曲をポケットに」というキャッチコピーで世の中を驚かせました。
当時のMP3プレーヤーは操作性が悪く、容量も小さいものが多かった中で、ホイールを回すだけで直感的に操作できるiPodは革命的でした。
iTunesと連携して自分の好きな曲を簡単に転送でき、音楽を自由に持ち歩ける──そんな体験が世界中のユーザーに支持され、一気にスタンダードになっていきます。
「iPod mini」「iPod nano」「iPod shuffle」「iPod classic」など、用途に応じたモデル展開も豊富で、Appleのブランドを世界に広める立役者でもありました。
しかし、時代は少しずつ変わっていきます。
iPodが販売終了になった理由1:スマートフォンの台頭
最大の理由は、スマートフォンの登場による役割の重複です。
2007年に発売されたiPhoneは、音楽プレーヤー・携帯電話・インターネット端末を1台に統合した存在でした。
音楽を聴く機能がiPhoneに組み込まれたことで、iPodの「専用音楽プレーヤー」としての価値は次第に薄れていきました。
多くのユーザーは「スマホで音楽を聴けるなら、iPodはいらない」と考えるようになり、iPodの販売台数は急速に減少。
実際、AppleもiPodの製造・開発リソースをiPhoneやApple Watchなどに集中させるようになります。
音楽を聴く手段が多様化したことで、iPodは“役目を終えた”ともいえるでしょう。
iPodが販売終了になった理由2:音楽の聴き方が変化した
もうひとつ大きな理由は、「音楽の楽しみ方」が変わったことです。
iPod全盛期の2000年代は、CDを買ってパソコンに取り込み、それをiTunes経由でiPodに転送するスタイルが一般的でした。
ところが今は、Apple MusicやSpotifyなどのストリーミングサービスが主流です。数千万曲がワンタップで聴ける時代に、「端末に曲を保存して持ち歩く」必要性は薄れました。
オフライン再生機能があるストリーミングサービスも増え、データ通信量の心配も少なくなっています。
つまり、iPodが得意としていた「大容量ストレージによる楽曲保存」という強みが、時代の変化の中で価値を失っていったのです。
iPodが販売終了になった理由3:部品の調達・コストの問題
ハードウェア面の課題も無視できません。
古いiPodシリーズでは、HDDや独自のドックコネクタなど、現行の製品ラインとは異なる部品を使用していました。
これらを維持・製造するにはコストがかかり、部品の調達自体も年々難しくなっていったとされています。
Appleのティム・クックCEOは過去に「古い部品の供給が難しくなったため、iPod classicを終了した」と説明しています。
つまり、技術的にも経済的にも、iPodを作り続ける合理性が薄れていたのです。
iPodが販売終了になった理由4:Appleの製品戦略の変化
Appleは、製品を常に“進化”させる企業です。
その哲学のもと、同じ機能を持つデバイスを重複させない方向へと舵を切りました。
iPod touchはiPhoneとほぼ同じOSを搭載しており、アプリも使えるなど機能面での差がわずかでした。
結果として、「iPhoneで十分」という結論に至り、iPodラインを整理する流れが生まれたのです。
Apple公式の発表でも「音楽体験はiPodだけのものではなく、iPhone、Apple Watch、iPad、Macなどに受け継がれている」とコメントされています。
つまり、iPodの“魂”は消えたわけではなく、Appleのエコシステム全体に融合したという考え方です。
iPodが残した功績と文化的意義
iPodの登場は、単なるガジェットの発売以上の意味を持っていました。
それは「音楽の楽しみ方そのものを変えた」という点にあります。
CDを持ち歩く時代から、数千曲をポケットに入れる時代へ。
そして“音楽をデジタルデータとして扱う”という考え方を一般化させたのは、間違いなくiPodでした。
また、白いイヤホンとコンパクトなデザインはAppleの象徴となり、音楽だけでなくファッションやライフスタイルにも影響を与えました。
iPodは、単なる製品ではなく「時代を作った文化的アイコン」でもあったのです。
iPodの代わりに使えるデバイスは?
「iPodがなくなって困る」という声もまだ少なくありません。
実際に今でも、スマホを持たない子どもや、運動中に軽い音楽プレーヤーを使いたい層など、一定のニーズがあります。
そこで、iPodの代わりとして考えられる選択肢をいくつか紹介します。
- iPhoneやAndroidスマートフォン
Apple Music、Spotify、Amazon Musicなど、ほとんどの音楽アプリが利用できます。Bluetoothイヤホンとの相性も良く、最も現実的な選択肢です。 - Apple Watch
スマホがなくてもApple Musicをオフライン再生できるため、ランニングやジム利用に向いています。 - ポータブルオーディオプレーヤー(DAP)
ソニーのウォークマンなど、ハイレゾ対応機を選べば高音質で楽しめます。音楽専用機としての満足度を求める人に人気です。 - 子ども向け・入門用デバイス
通信機能を制限したスマホや音楽専用デバイスも登場しています。iPod touchの代替として教育・家庭用途に使われるケースもあります。
iPodの販売終了は“終わり”ではなく“バトン”
2022年の販売終了発表の際、Appleは「音楽はこれからも生き続ける。iPodが作った音楽体験は、他の製品に受け継がれている」とコメントしました。
つまり、iPodの終焉は「役目を終えた」というより、「次の時代へバトンを渡した」出来事です。
iPodが生まれたことで、Appleは音楽配信サービス、スマートデバイス、ワイヤレスイヤホンといった現在の製品群を育てる土台を作りました。
iPodの存在がなければ、今日のApple MusicやAirPodsも存在しなかったかもしれません。
iPod 販売 終了 なぜ──時代の流れが選んだ“自然な結末”
iPodの販売終了は、技術の進化とユーザーの生活変化が交わった結果でした。
「音楽を持ち歩く」という概念はiPodが築き、そのバトンはiPhoneやストリーミングサービスへと引き継がれています。
いまや音楽はデバイスに縛られず、どこでも楽しめる時代。
そう考えると、iPodが作り出した文化は形を変えて、私たちの生活の中で今も息づいているのです。
