フォルクスワーゲンの高級SUV「トゥアレグ」。かつては堂々たる存在感と上質な走りで人気を集めたモデルですが、最近では「日本ではもう販売していない」「新型が入ってこない」といった声を多く見かけるようになりました。
実際のところ、トゥアレグは日本市場でどうなっているのでしょうか。今回は、その販売終了の背景や撤退の理由、そして今後の展開について徹底的に掘り下げます。
トゥアレグとはどんなクルマだったのか
トゥアレグは、フォルクスワーゲンが2002年に初代を発表した大型SUVです。アウディQ7やポルシェ・カイエンと兄弟関係にあるモデルとして開発され、フォルクスワーゲンの技術力と高級感を融合したフラッグシップSUVとして人気を博しました。
日本でも2003年に販売が始まり、力強い走行性能と高級感のある内装で一定のファンを獲得しました。ディーゼルエンジン仕様も導入され、アウトドア志向のユーザーからも支持を集めていましたが、販売台数としては決して多い部類ではありませんでした。
その後、2010年に2代目が登場し、さらに進化した3代目は2018年に欧州でデビュー。しかし、日本ではこの3代目が導入されていません。ここが今回の“販売終了”問題の核心です。
日本での販売が終了した背景
日本市場では3代目が未導入
トゥアレグの最新世代となる3代目モデルは、欧州では高い評価を受けています。デザインはよりシャープに、内装には最新のインフォテインメントシステムを搭載し、V6ディーゼルやプラグインハイブリッド(PHEV)も設定されました。
しかし、日本ではこの3代目が正式に導入されていません。つまり、実質的に2代目をもって日本での販売が終了したという状況になっています。
フォルクスワーゲンの販売戦略の転換
フォルクスワーゲンは、グローバル戦略の中でSUVラインナップの整理を進めています。北米市場ではトゥアレグを販売終了し、「アトラス」や「ティグアン」といった中型SUVにシフトしました。日本でも同様に、よりコンパクトで手頃な価格帯のSUVを主力に据える方針が取られたとみられます。
この背景には、日本での販売実績が芳しくなかったことも影響しています。高価格帯の大型SUV市場は、レクサスやメルセデス・ベンツ、BMWといったプレミアムブランドが強く、フォルクスワーゲンが同じ土俵で勝負するのは難しかったという側面があります。
撤退の理由をさらに掘り下げる
1. 販売台数の低迷
トゥアレグは日本でも根強いファンを持っていた一方、販売台数は限られていました。SUV人気が高まっても、フォルクスワーゲン全体で見ると「ティグアン」などの中型モデルの方が圧倒的に売れていたため、メーカーとしては販売効率の悪いモデルになっていたのです。
2. 環境規制への対応
近年、日本でも排ガス規制や燃費基準が強化されています。トゥアレグのような大型SUVは、どうしてもCO₂排出量が多く、規制適合のためのコストが膨らみます。
また、欧州でのディーゼル問題(ディーゼルゲート)以降、フォルクスワーゲンはディーゼル車の扱いに慎重になり、日本ではその影響が特に大きかったとされています。
3. 為替や輸入コストの問題
トゥアレグはドイツ生産の高級SUVであり、円安が進むと輸入コストが上がります。販売台数が少ない中で採算を取るのが難しくなり、輸入を継続する合理性が低下したことも撤退の一因とみられます。
4. ブランド内でのポジション整理
フォルクスワーゲンは、「高級SUV=トゥアレグ」というブランドポジションを持っていましたが、近年は「ID.」シリーズを中心とした電動化戦略に舵を切っています。
今後は「ID.4」や「ID. Buzz」など、電気自動車SUVを新たな主力に据える方針が示されており、トゥアレグはその流れの中で役割を終えた形です。
世界ではまだ販売中、しかし終焉が近い?
実はトゥアレグ自体は、欧州では今も販売されています。ただし、2026年をもって生産終了となる見通しが公式に報じられています。すでに「ファイナルエディション」も設定されており、現行モデルが最後のトゥアレグになる可能性が高いのです。
フォルクスワーゲンは今後、トゥアレグの直接的な後継車を用意しない方針とも言われています。これは、ブランド全体が電動化中心に再構築されることを意味しています。
つまり、「トゥアレグ」という名前自体が、自動車史の中で一区切りを迎えるというわけです。
日本市場での今後の展開
再導入の可能性は低い
3代目が導入されないまま、グローバルでも生産終了が見えていることから、日本市場でのトゥアレグ再導入の可能性は極めて低いと考えられます。メーカー公式サイトにも、トゥアレグの名前はすでに掲載されていません。
代替モデルの登場
現在、日本市場におけるフォルクスワーゲンのSUVラインナップは「T-Cross」「T-Roc」「ティグアン」などが中心です。これらのモデルがトゥアレグの後継的な役割を担っていると言えるでしょう。
特に「ティグアン」はモデルチェンジを重ね、サイズ・装備・価格のバランスが取れた人気モデルとなっており、日本では現実的な選択肢になっています。
中古市場でのトゥアレグ人気
一方で、中古車市場ではトゥアレグの人気が再燃しています。販売終了によって希少性が高まったことや、頑丈なつくり、落ち着いたデザインが評価され、状態の良い中古車には一定の需要があります。
ただし、大型SUVゆえの燃費や維持費、部品コストなどには注意が必要です。長く乗るつもりなら、整備履歴が明確な個体を選ぶのが安心です。
電動化時代におけるフォルクスワーゲンの方向性
フォルクスワーゲンは「ID.」シリーズを軸に、電動化への移行を急速に進めています。
トゥアレグのような大型SUVは、次世代では電動SUVという形に置き換えられる見通しです。たとえば、欧州では「ID.4」「ID.5」「ID.7 Tourer」といった電気SUVが続々と登場しており、これらがフォルクスワーゲンの新たなフラッグシップになると考えられます。
つまり、トゥアレグは“終わり”ではなく、“進化の通過点”。フォルクスワーゲンが高級SUVのノウハウを電動時代に活かすための転換期にあるといえます。
トゥアレグ日本販売終了のまとめと今後の期待
トゥアレグが日本で販売終了となった背景には、複数の要因が絡み合っています。販売実績の低迷、環境規制の強化、ブランド戦略の転換、電動化への移行。どれも時代の流れと無関係ではありません。
そして世界的にも、トゥアレグは2026年で生産を終える見込み。
長年フォルクスワーゲンの技術力を象徴してきたこのモデルは、静かにその役割を終えようとしています。
ただし、フォルクスワーゲンというブランドは常に次の一手を考えています。今後は「ID.」シリーズなどの電動SUVが、トゥアレグの精神を引き継ぐ存在になるでしょう。
日本でも、電動化SUV時代の幕開けとともに、新たな“フォルクスワーゲン”らしさを楽しむことができそうです。
トゥアレグが日本で販売終了?撤退理由と今後の展開を徹底調査(まとめ)
トゥアレグの日本販売終了は、単なる撤退ではなく、フォルクスワーゲン全体の転換点を象徴する出来事でした。
環境対応や電動化の流れの中で、ブランドは次のステージへ。
そしてトゥアレグという名前は、これからもフォルクスワーゲンの歴史の中で“伝説のSUV”として語り継がれていくでしょう。
