最近、「ツムラ五苓散が薬局で見つからない」「いつも処方してもらっていたけど在庫切れ」といった声を耳にします。むくみや頭痛、二日酔いなどに頼りにしていた方にとって、急に手に入らなくなるのは不安ですよね。
この記事では、ツムラ五苓散が手に入らないときに考えられる代替漢方薬や、選ぶ際のポイントをわかりやすく解説します。
五苓散とは?基本のはたらきをおさらい
まず、ツムラ五苓散(ごれいさん)は「水の巡り」を整えることを目的にした漢方薬です。
体の中に余分な水分がたまり、だるさやむくみ、頭痛、めまい、下痢、吐き気といった症状が出ているときに用いられます。
ツムラ五苓散には以下の5種類の生薬が配合されています。
- 沢瀉(たくしゃ)
- 猪苓(ちょれい)
- 茯苓(ぶくりょう)
- 蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)
- 桂皮(けいひ)
これらの組み合わせで、体の余分な水を排出しながら、必要な水分を保持するバランスを整えます。
そのため、むくみや頭重感、気圧の変化による頭痛、二日酔いなど“水の滞り”が関係する症状に幅広く使われてきました。
なぜ「ツムラ五苓散」が手に入りにくいの?
五苓散の入手が難しくなる理由は、主に以下のようなものが考えられます。
- 生薬の供給や製造上の問題
天然由来の原料を使うため、収穫量の変動や輸入事情に左右されることがあります。 - 需要の増加による一時的な品薄
近年、気象病やむくみ改善目的での使用が増え、需要が供給を上回るケースもあります。 - 体質に合わないケースが判明したための中止
ツムラ五苓散は利水作用が中心の処方のため、冷えや体力低下のある人には合わないこともあります。
いずれの場合も、代替漢方薬を検討する際は「なぜツムラ五苓散を使っていたのか(どんな症状に対してだったのか)」を明確にすることが大切です。
五苓散の代わりになる漢方薬とは?
ツムラ五苓散の代替候補には、似たような作用をもつ処方や、症状に合わせて調整された漢方薬があります。ここでは代表的なものを紹介します。
茵ちん五苓散(インチンゴレイサン)
ツムラ五苓散をベースに、肝機能や湿熱(体の中にこもった熱と湿気)を整える作用を加えた処方です。
むくみだけでなく、体のだるさ、のぼせ、口の渇き、尿の濃さなど「熱っぽい水毒」に適しています。
夏場のだるさやお酒の飲みすぎによる不調にも使われることがあります。
柴苓湯(サイレイトウ)
ツムラ五苓散に加え、胃腸の働きを整える「小柴胡湯」の要素を組み合わせた処方です。
胃腸の水分バランスを整える作用があり、むくみだけでなく下痢・吐き気・胃もたれを伴うときに選ばれます。
また、ストレスや自律神経の乱れによる体調不良にも向いています。
猪苓湯(チョレイトウ)
利尿作用がやや強く、排尿トラブルや膀胱炎など「泌尿器系の水分代謝異常」に用いられます。
むくみよりも、排尿がうまくいかず体内に水がたまっているタイプに合います。
冷えが強い人よりも、体が温かいタイプの方に向くとされています。
補中益気湯など補気系の漢方
体力が落ちていて、むくみやだるさが続く場合には、利水だけでなく「気(エネルギー)」を補う漢方が検討されます。
水分代謝の根本に“脾(胃腸機能)”の弱りがある場合、補中益気湯などが用いられることもあります。
単なる利水ではなく、体の基礎力を高める方向性の処方です。
代替漢方を選ぶときの考え方
ツムラ五苓散の代替を探すときに最も重要なのは、「どんな不調を改善したいのか」を明確にすることです。
同じ「むくみ」でも、その背景にある原因が異なれば、選ぶ薬も違ってきます。
また、漢方では「証(しょう)」と呼ばれる体質判断が大切です。
ツムラ五苓散は、比較的体力がある人で、冷えすぎず、余分な水分が体にたまっているタイプに向きます。
逆に、虚弱体質・冷え性・疲れやすい人には、他の処方を検討したほうが合いやすいことがあります。
自己判断での代替は避けよう
「ツムラ五苓散がないなら似たものを」と、ネットや口コミで見かけた漢方を自己判断で選ぶのは注意が必要です。
漢方薬は一見似た名前でも、体に与える作用が大きく異なります。
特に次のような場合は、専門家への相談をおすすめします。
- むくみだけでなく、冷え・便秘・だるさなど複数の症状がある
- 服用中の薬(特に利尿薬や降圧薬)がある
- 妊娠・授乳中、または高齢で体力が落ちている
- 持病があり、腎臓・肝臓に不安がある
漢方医や薬剤師は、舌の色・脈・お腹の状態などを見て「証」を判断し、あなたに合う処方を提案してくれます。
一見同じように見えても、体質に合わない処方を選ぶと、かえって疲れやすくなることもあるので注意しましょう。
「ツムラ五苓散を代える」ではなく「体の状態を見直す」
実は、ツムラ五苓散が合っていた人の中には、体質が変化して“合わなくなった”ケースもあります。
季節の変化や生活習慣、年齢、ストレスなどで「水毒」以外の要因が体調に影響していることもあります。
たとえば、以前はむくみが主だったのに、最近は冷えや疲労が強く出るようになった人。
この場合、利水よりも“気を補う”処方のほうが効果的なこともあります。
つまり、「ツムラ五苓散が手に入らない」ことをきっかけに、自分の体質を見直すチャンスでもあるのです。
代替漢方を使う際の注意点
ツムラ五苓散やその代替処方はいずれも“利水(体の余分な水分を整える)”を目的にしています。
そのため、服用時には以下の点に注意が必要です。
- 水分を極端に控えすぎない(脱水を防ぐため)
- 長期服用は、医師や薬剤師の指導のもとで行う
- 他の薬との併用は必ず確認する
- 効果が見られない場合は、無理に続けず一度相談する
また、体調の変化や季節によっても効き方が変わるため、症状が安定してきたら一度中止し、再評価することも大切です。
まとめ|ツムラ五苓散が手に入らないときの選び方
ツムラ五苓散は、水分代謝の乱れを整える代表的な漢方薬ですが、在庫不足や体質の変化で使えない場合もあります。
その際は、「どのような症状に使いたいのか」「自分の体質がどう変化しているか」を整理し、茵ちん五苓散・柴苓湯・猪苓湯などを検討してみましょう。
ただし、どれを選ぶかは人によって異なります。
むくみ・頭痛・めまい・胃腸の不調など、同じ症状でも体の状態が違えば合う処方も違います。
もし迷ったときは、漢方医や薬剤師に相談して、自分に合った「水のめぐりを整える処方」を選ぶのがいちばんの近道です。
ツムラ五苓散が手に入らない今だからこそ、代替漢方薬を上手に活用して、自分の体と向き合ってみてください。
