「ビソルボン吸入液が薬局にない」「処方が変わった」と感じた人も多いのではないでしょうか。実は、長年親しまれてきた去痰薬・ビソルボン吸入液が販売終了になっています。ここでは、販売終了の理由や時期、そして現在入手できる後継品・代替薬について、医療現場の情報をもとに詳しく紹介します。
ビソルボン吸入液とはどんな薬?
ビソルボン吸入液は、有効成分として「ブロムヘキシン塩酸塩」を含む去痰薬です。痰をやわらかくして出しやすくする作用があり、気管支炎や肺炎、気管支拡張症などで粘り気のある痰が出にくいときに使われます。
吸入液タイプなので、ネブライザー(吸入器)を用いて薬を霧状にして吸い込み、直接気道に作用させるのが特徴です。内服薬よりも局所に届きやすく、呼吸器疾患の治療で重宝されてきました。
もともとはサノフィ株式会社が製造販売しており、医療用医薬品として長年処方されてきた定番薬の一つです。
ビソルボン吸入液が販売終了した時期と理由
サノフィは2024年6月17日、「ビソルボン吸入液0.2%/注4mgの販売を中止する」と公式に発表しました。販売終了日は2024年12月1日。経過措置期間は2025年3月末までとされています。
つまり、すでに流通在庫はほぼ尽きており、2025年現在では医療機関や薬局でも入手が難しい状況です。
販売終了の理由について、メーカーは「諸般の事情による」としています。品質上の問題や安全性の懸念があったわけではなく、主に製造・流通体制や採算面などの要因が考えられます。薬価改定による採算悪化や、後発品(ジェネリック)の普及によりブランド整理が進んだ可能性が高いでしょう。
成分自体は残っている ― ブロムヘキシン塩酸塩吸入液0.2%「タイヨー」
ここで誤解してはいけないのは、「ビソルボン吸入液」というブランドが終了しただけで、主成分のブロムヘキシン塩酸塩そのものがなくなったわけではないという点です。
現在も同成分を使った吸入液が複数の製薬会社から販売されています。代表的なのが「ブロムヘキシン塩酸塩吸入液0.2%「タイヨー」」。多くの医療機関では、この製品をビソルボン吸入液の代替薬として採用しています。
規格や濃度はほぼ同じであり、臨床的にも同等の効果が期待できるとされています。そのため、ビソルボン吸入液を処方されていた人も、医師の判断で同成分の後発品に切り替えることで、これまでと同じ治療を継続できます。
医療機関での切り替え対応
ビソルボン吸入液の販売終了は、全国の医療機関にも影響を与えました。多くの病院や薬局では、販売終了の通知を受けて、採用薬のリストを見直し、代替薬の導入を進めています。
たとえば、ある総合病院では「ビソルボン吸入液0.2%(サノフィ)」を廃止し、「ブロムヘキシン塩酸塩吸入液0.2%「タイヨー」」への切り替えを正式決定。患者に対しても順次、処方変更を案内しています。
また、別の医療機関では「同成分品が確保できない場合には、アセチルシステイン吸入液20%(ムコフィリン吸入液など)で対応する」といった運用も行われています。いずれにしても、医師や薬剤師の判断のもと、症状や設備環境に応じた代替策が取られています。
ビソルボン吸入液の代替薬一覧(代表的な例)
ビソルボン吸入液の販売終了後に、医療現場で主に使用されている代替薬には次のようなものがあります。
- ブロムヘキシン塩酸塩吸入液0.2%「タイヨー」
有効成分が同じジェネリック医薬品。ビソルボン吸入液と同等の用法・効果が期待でき、最も直接的な後継品。 - アセチルシステイン吸入液20%(ムコフィリン吸入液など)
異なる成分だが、気道粘液を分解し痰を出しやすくする作用をもつ。ブロムヘキシン塩酸塩吸入液0.2%「タイヨー」が使えない場合の代替選択肢。 - カルボシステイン内服液
同様に去痰を目的とした薬。吸入ではなく内服での代替となる場合もある。
ただし、これらの薬は「同等の目的」であっても、成分や作用機序、効果の出方が異なります。自己判断での切り替えは避け、必ず医師または薬剤師に相談しましょう。
販売終了の背景にある医薬品業界の動き
近年、医療用医薬品の世界では、長年使われてきた製品が相次いで販売終了になるケースが増えています。その背景には、薬価制度の改定による採算性の低下や、製造コストの上昇、そして後発医薬品の普及によるブランド整理があります。
ビソルボン吸入液も、まさにその流れの中にあります。もともと錠剤タイプのビソルボン錠4mgも2021年ごろに販売終了しており、ブランド全体の段階的な整理が進められていたことがうかがえます。
一方で、成分のブロムヘキシン塩酸塩は現在も多くの後発メーカーが供給しており、薬としての需要自体は継続しています。つまり「薬がなくなる」のではなく、「ブランド名が変わるだけ」というのが実態です。
患者への影響と注意点
ビソルボン吸入液を長年使用していた人にとって、突然の販売終了は戸惑いも大きいでしょう。しかし、代替薬の選択肢がしっかり確保されているため、治療が継続できなくなる心配はありません。
もし処方変更の案内を受けた場合は、
「成分が同じか」「吸入方法が変わるか」「使用量に違いがあるか」
を確認することが大切です。吸入機器との相性や希釈方法が異なる場合もあるため、医療従事者の指導を受けながら使用するようにしましょう。
また、自己判断で旧製品を探して使うのは避けてください。既に製造・流通が止まっており、保管状態や品質が保証されていない製品を使うのは安全とはいえません。
ビソルボン吸入液販売終了のまとめ
・ビソルボン吸入液は2024年12月をもって販売終了。経過措置期間は2025年3月末まで。
・販売終了の理由は「諸般の事情による」とされ、主に流通・採算上の要因とみられる。
・同成分のブロムヘキシン塩酸塩吸入液0.2%「タイヨー」(タイヨーなど)が代替薬として流通している。
・医療機関ではすでに切り替えが進行中。患者は医師・薬剤師に相談のうえで対応を。
・ブランド名はなくなっても、去痰治療自体は継続可能。
ビソルボン吸入液の代替品を正しく選ぶために
販売終了のニュースを聞くと不安になりますが、今回のケースは「薬そのものがなくなったわけではない」という点が大切です。成分や作用はそのままに、別メーカーから供給が続いています。
もし以前ビソルボン吸入液を処方されていた場合は、医療機関で「ブロムヘキシン塩酸塩吸入液0.2%「タイヨー」」に切り替えができるかを相談しましょう。必要に応じて、アセチルシステイン吸入液20%など別の去痰薬を提案されることもあります。
長年使ってきた薬がなくなるのは少し寂しいですが、医療現場ではしっかりとした後継薬が準備されています。安心して治療を続けるためにも、正確な情報と専門家のサポートを活用していきましょう。
ビソルボン吸入液が販売終了した理由と代替薬のまとめ
ビソルボン吸入液の販売終了は、医薬品ブランドの整理や供給体制の見直しという時代の流れの中で起こったものです。とはいえ、同じ成分の吸入液が存在するため、患者にとっては治療の継続が可能です。
「ビソルボン吸入液が販売終了したのはなぜ?」という疑問に対しては、こうした背景を理解しておくことが大切です。そして「ブロムヘキシン塩酸塩吸入液0.2%「タイヨー」」など、同等の効果を持つ代替薬を知っておくことで、安心して今後の治療に臨むことができるでしょう。
