「カワウソって、ペットショップで買えるの？」
そんな疑問を持つ人、意外と多いんです。SNSで見る小さな手や愛らしい表情に惹かれて、「飼ってみたい」と思う方も少なくありません。
ですが――実際に調べてみると、「カワウソを買う」という行為には、想像以上に多くの壁があることがわかります。ここでは、カワウソの販売実態や法的な制限、そして飼育の現実をわかりやすくまとめました。
カワウソが人気な理由と種類
カワウソといえば、丸い目に小さな耳、器用な前足で貝や魚をつかむ姿がとても愛らしいですよね。
ペットとして話題になるのは主に「コツメカワウソ」という種類で、体長は約50センチ前後。人懐っこい性格で、鳴き声や仕草も魅力的です。
SNSや動画サイトでは、カワウソを飼っている人の投稿が数多く見られ、そのかわいさが大きな注目を集めています。
しかし、その人気の裏側には、深刻な問題が隠れているのです。
今の日本では「簡単には買えない」カワウソ
「ペットショップでカワウソを売っている」という情報を見かけることもありますが、現在はごく限られた例にすぎません。
その最大の理由は、法律による取引の制限です。
国際的な保護対象になっている
2019年、コツメカワウソは「ワシントン条約（CITES）」の附属書Iに掲載されました。
この登録により、商業目的での国際取引（輸出・輸入）は原則禁止になっています。
つまり、海外からカワウソを輸入して販売することは基本的にできません。
日本国内でも厳しい規制がある
日本では「種の保存法」という法律によって、ワシントン条約で保護されている動物の取引が制限されています。
販売だけでなく、譲渡や繁殖にも許可が必要で、違反すれば罰則の対象になります。
そのため、今現在「ペットショップで合法的に販売されているカワウソ」は、
・以前に正規ルートで国内に入ってきた個体
・国内で繁殖され、登録された個体
など、ごく限られたケースにとどまります。
それでも販売されている例はある？
過去には、動物専門店やエキゾチックアニマルを扱うショップで、コツメカワウソが販売されていたことがあります。
価格は60万円～100万円以上と高額で、「問い合わせのみ」「入荷待ち」といった表記が多く見られます。
ただし、これらの個体がどのような経路で入手されたものかは、一般消費者には判断しにくいのが現状です。
中には、登録証のない違法個体が混ざっていたり、過去に密輸された個体が国内で繁殖したケースも指摘されています。
つまり、「売っているから合法」とは限らないのです。
カワウソを通販で買うことはできる？
インターネット上で「カワウソ 販売」「カワウソ 通販」と検索すると、販売情報が見つかることがあります。
ですが、通販サイトでカワウソを購入することは非常に危険です。
・出所不明の個体が多い
・法的登録や許可が確認できない
・輸送中のストレスで体調を崩すリスクが高い
動物福祉や法律の観点からも、通販での生体購入は推奨されていません。
どうしても興味がある場合は、まず「正規の登録を受けた個体か」「販売業者が動物取扱業の登録をしているか」を必ず確認することが必要です。
飼育は想像以上に大変
「もし手に入ったとしても、飼えるの？」という疑問もありますよね。
ここが多くの人が見落としがちなポイントです。
広いスペースと水場が必要
カワウソはとても活発で、毎日泳いだり、動き回ったりする動物です。
健康に暮らすためには、大きな水槽やプール付きの飼育スペースが必要になります。
一般的な家庭環境では、十分な広さや水の管理を維持するのは難しいでしょう。
餌と温度管理も大仕事
カワウソの主食は魚や甲殻類。
毎日新鮮な餌を与える必要があり、冷凍保存や調理などの手間もかかります。
また、東南アジア原産のため寒さに弱く、冬場の温度管理には暖房や加湿が欠かせません。
鳴き声・噛みつき・においの問題
見た目は愛らしくても、カワウソは野生動物の性質を強く残しています。
大きな鳴き声で夜中に騒いだり、気分によって噛んだりすることもあります。
また、独特の体臭や排泄臭も強く、日々の掃除やケアが必要です。
これらを考えると、「ペットとして手軽に飼える動物」ではないことがわかります。
カワウソを取り巻く倫理と環境問題
カワウソの人気が高まったことで、東南アジアの一部地域では密猟が増加しました。
密輸ルートで日本などに持ち込まれた個体が、ペットとして販売されるケースも報告されています。
実際、京都大学の研究によれば、国内で飼育されているカワウソの中にはタイ南部など密猟多発地域由来のDNAを持つ個体も確認されています。
つまり、私たちが「かわいい」と思って見ているその一匹の裏には、野生から奪われた命があるかもしれないのです。
動物保護団体や専門家の多くは、「個人で飼育するよりも、動物園や水族館で見守ることが望ましい」と呼びかけています。
どうしてもカワウソに会いたいなら
「それでもカワウソに会いたい」「近くで見てみたい」という人には、次のような方法があります。
・水族館（例：アクアパーク品川、海遊館など）
・動物園（例：東山動植物園、旭山動物園など）
・カワウソカフェ（動物取扱業登録済みの店舗のみ）
これらの施設では、法的に許可を受けた環境で飼育されており、カワウソの自然な行動を安全に観察できます。
また、カワウソ保護活動に参加する団体や寄付プロジェクトもあるため、「飼う」以外の形で関わることも可能です。
カワウソを飼う前に知っておくべきこと
・販売や譲渡は厳しく制限されている
・違法取引が社会問題になっている
・飼育には大きなコストと知識が必要
・動物福祉と環境保全の観点から推奨されない
これらを理解せずに「かわいいから欲しい」と安易に手を出すと、結果的に動物を苦しめることになります。
本当にカワウソが好きなら、まずは「保護される側の生き物」であることを意識しましょう。
カワウソはどこで買える？―まとめとこれから
ここまで見てきた通り、現在の日本では**カワウソを合法的に買うのはほぼ不可能**です。
ごくまれに販売例があっても、出所の確認や登録の有無など、個人で安全に判断することは難しい状況です。
また、カワウソをペットとして迎えるには、広大なスペース、専門的な知識、そして何より強い責任が求められます。
かわいさの裏にある現実を理解し、「買う」よりも「守る」方向に目を向けることが、今の時代に求められている姿勢ではないでしょうか。
動物を大切にする社会の一員として、私たち一人ひとりが冷静に考えることが大切です。
