砂漠の小さなキツネ、フェネック。大きな耳とクリッとした瞳が魅力で、一度は「飼ってみたい」と思ったことがある人も多いのではないでしょうか。でも実際のところ、フェネックは日本で買えるのでしょうか?どんな場所で、どんな方法で入手できるのか。そして、飼育にはどんな注意点があるのか——今回はそのすべてを徹底的に解説します。
フェネックとは?日本でも飼える砂漠の小型キツネ
フェネックはイヌ科キツネ属の動物で、北アフリカやアラビア半島の砂漠地帯に生息しています。体長は30〜40cmほど、体重は1kg前後と非常に小型。夜行性で、昼間は涼しい場所で休み、夜になると活動的になるのが特徴です。
一見すると犬のようにも見えますが、フェネックはれっきとした野生動物です。それでも、日本では法的に飼育が認められている珍しい種のひとつ。輸入や販売に関して特別な免許が必要な「特定動物」ではなく、一般家庭でも条件を満たせば飼うことが可能です。
ただし、フェネックを日本に輸入する場合は、動物検疫所での検査や係留手続きが必要になります。特に海外から直接輸入する場合は、原産国や輸入ルートによって検疫期間が変わるため、個人輸入ではなく正規ルートで迎えることが安心です。
フェネックはどこで買える?主な入手ルート3選
フェネックは希少な動物なので、一般的なペットショップで見かけることはほとんどありません。購入できる可能性があるのは、以下の3つのルートです。
1. フェネック専門ブリーダーから購入する
もっとも確実で安心なのが、専門ブリーダーから直接購入する方法です。
大阪府岸和田市にある「フェネックス(Fenex)」は、フェネック専門のブリーダーとして知られています。ここでは人工哺育で丁寧に育てられたフェネックを販売しており、人に慣れやすい個体が多いのが特徴。販売は予約制で、出産情報があるときのみ案内されるスタイルです。
ブリーダーから迎える利点は、健康状態や性格、育成環境が明確であること。反対に、出産時期や予約状況によっては、入手まで時間がかかる場合があります。
2. エキゾチックアニマル専門のペットショップ
東京や大阪などの都市部には、フェレットやハリネズミ、モモンガなど、珍しい動物を扱うエキゾチックアニマル専門店があります。こうした店舗では、フェネックの入荷が稀にあることも。
過去には、正規輸入のフェネックを扱った「ワールド・トレード・イン・キュウシュウ」や「アミーゴ」などのショップが話題になりました。ただし、入荷数はごく少なく、タイミングを逃すとすぐに売約済みになるケースがほとんど。販売価格はおよそ100万円前後から、高い場合で200万円を超えることもあります。
3. 里親募集・譲渡を通じて迎える
非常にまれですが、フェネックを手放す飼い主から里親として譲り受けるケースもあります。ただし、これはごく一部の事例であり、基本的には「適切な環境で長く飼育できる人」に限られます。譲渡条件として飼育環境の写真提出や面談が求められることもあり、簡単ではありません。
フェネックの価格相場と費用感
フェネックの価格は年々上昇傾向にあり、希少性の高さから高額です。
一般的な相場は以下の通りです。
- 国内ブリーダー産:70〜150万円前後
- 輸入個体(検疫済):100〜200万円前後
- メスの方が高値になる傾向あり
生体価格のほかにも、飼育にかかる初期費用が必要です。フェネックは温度・湿度の管理が重要で、ケージや保温器具、床材、砂、巣箱などを揃えると最低でも10〜20万円程度はかかります。さらに、フェネックを診療できる動物病院が限られているため、医療費や移動費も考慮が必要です。
フェネックを飼う前に知っておくべき5つのポイント
フェネックは飼えるとはいえ、犬や猫のように気軽に飼える動物ではありません。迎える前に、必ず次の5つを理解しておきましょう。
- 夜行性でよく鳴く
夜になると活動的になり、鳴き声が響くことも。マンションや集合住宅では防音対策が必須です。 - トイレのしつけが難しい
フェネックは砂漠で生活するため、決まった場所で排泄する習慣があまりありません。臭い対策と掃除の手間を覚悟しましょう。 - 掘る・噛む・逃げる習性がある
ケージの中でも床を掘る行動を見せることがあります。家具や配線をかじることもあるため、環境づくりが重要です。 - 温度・湿度管理が難しい
フェネックは砂漠出身なので、湿度が高い日本では体調を崩しやすい傾向があります。エアコンや除湿機で環境を一定に保つ必要があります。 - 診てもらえる動物病院が少ない
フェネックを診察できる獣医は限られています。事前に「エキゾチックアニマル対応」の病院を確認しておくことが大切です。
日本でフェネックが希少な理由
フェネックは人気がある一方で、流通量が極端に少ないのが現実です。その理由は以下の通りです。
- 繁殖が難しく、1回の出産頭数が少ない
- 国内ブリーダーが限られている
- 輸入には厳しい検疫があり、コストが高い
- 正規輸入証明付き個体しか販売できない
つまり、需要に対して供給が圧倒的に少なく、「買いたいと思っても手に入りにくい」状況が続いています。そのため、予約制で数年待ちというケースもあるのです。
飼育に向いている人・向かない人
フェネックの飼育は難易度が高く、誰でも向いているわけではありません。
向いているのは、
- 動物の生態や習性を調べ、長期的に世話できる人
- 飼育環境を自分で整えられる人
- 鳴き声や臭いに寛容で、周囲に配慮できる人
反対に、以下のような人にはあまりおすすめできません。
- 騒音や臭いが気になる集合住宅に住んでいる
- 出張や旅行が多く、毎日世話ができない
- 見た目の可愛さだけで飼いたいと思っている
フェネックは長くて10年以上生きることもあり、最後まで責任を持って飼う覚悟が必要です。
フェネックを飼うために準備すべき環境
フェネックを快適に飼うためには、以下のような環境づくりが欠かせません。
- 広めのケージ(高さ・奥行きのあるもの)
活動的な動物なので、狭すぎるケージはストレスの原因になります。 - 保温・除湿設備
室温は25〜28℃、湿度は50%前後を維持するのが理想です。 - 床材と巣箱
砂やウッドチップなど、掘れる素材を使うと安心します。 - 給水ボトル・餌皿
清潔な水を常に与えられるように。餌皿は固定できるタイプが便利です。
餌はフェレット用フードや高タンパクのドッグフードが代用可能ですが、専用フードがあれば理想的です。コオロギ(コオロギやミルワーム)を補助食として与える飼い主もいます。
フェネックを迎える際の注意点と心構え
フェネックを飼うことは、単なるペットを迎えるというよりも“共に暮らす覚悟”が必要です。希少で高額な動物であることを理解し、命ある存在として責任を持つことが大前提です。
また、無許可の個人輸入や出所不明の販売は避け、必ず正規輸入・検疫済みの個体を扱う信頼できるブリーダーやショップを選ぶこと。安さや希少性だけで判断すると、健康面に問題を抱える個体を迎えるリスクがあります。
フェネックはどこで買える?まとめとこれから飼いたい人へ
フェネックは、日本でも法的に飼育できる珍しい動物ですが、実際に購入できる場所は非常に限られています。現実的な入手先は、専門ブリーダーか、エキゾチックアニマル専門のショップ。価格は100万円を超えることが多く、予約制や長期待ちが一般的です。
フェネックは見た目の可愛さだけでなく、飼育の難しさや生活への影響も大きい動物。だからこそ、飼う前に「本当に一緒に暮らせるのか」をしっかり考えることが大切です。
きちんとした準備と覚悟があれば、フェネックとの生活は唯一無二の喜びを与えてくれるはずです。
興味を持った人は、まず信頼できるブリーダーや専門店に相談してみてください。
