ヘッドホン選びで迷ったとき、必ず名前が挙がるのが「ATH-M50x」。
発売から年数が経ってもなお支持され続けているこのモデル、なぜここまで人気が衰えないのでしょうか。この記事では、音質・装着感・耐久性といったポイントを中心に、実際の使用感や評価をもとに総まとめしていきます。
プロ仕様なのに親しみやすい——ATH-M50xが愛される理由
ATH-M50xは、オーディオテクニカが誇るモニターヘッドホンの定番。
本来はスタジオモニター用として開発されたプロ向けモデルですが、リスニング用としても圧倒的な人気を誇ります。理由はシンプルで、「音が良くて壊れにくいのに、価格が手頃」だからです。
一度試すと分かるのですが、最初の印象は“まっすぐな音”。派手さはなくても、ひとつひとつの音が丁寧に再現される感覚があります。まるで録音現場でミュージシャンの生音を聞いているようなリアリティがある。
それでいて、一般のリスナーが聴いても物足りなさを感じない絶妙なバランスが取れています。
音質レビュー：低音・中音・高音の全域で安定した完成度
低音：引き締まった迫力
ATH-M50xの低音は、よくある“ドンシャリ”とは一線を画します。
量感はしっかりありつつも、輪郭が明瞭。ベースラインがもたつかず、タイトに響きます。EDMやヒップホップでも重低音が潰れず、ライブ音源でもベースの動きが追いやすいのが特徴です。
これはオーディオテクニカ独自の45mm大口径ドライバーが、低音を丁寧に制御しているからこそ生まれるサウンドです。
中音：クリアで自然なボーカル
ボーカル帯域が曇らず、ギターやピアノとの分離も優秀。
男性ボーカルは芯があり、女性ボーカルは透明感がしっかりと残ります。音源のミックスの粗まで見えるほど解像度が高く、作曲やミキシングなど制作現場で愛用されるのも納得です。
“音を聴く”というより、“音を観察する”という感覚に近い印象を受けます。
高音：伸びやかで疲れにくい
高域はシャープすぎず、自然な伸び。シンバルやハイハットの音が刺さらないのに、細部まできちんと聴こえます。
長時間リスニングでも耳が痛くならないのは、この高域チューニングの絶妙さによるもの。
派手さは控えめでも、音楽全体を通して聴いたときの心地よさは格別です。
装着感：しっかりフィットして長時間でも快適
ATH-M50xの装着感は、「ガッチリ」「密閉感がある」という表現がよく使われます。
イヤーカップが大きく耳を包み込み、外の音をしっかり遮断。クッションは柔らかく、装着した瞬間に“吸い付くような密閉感”を感じます。
ただし、側圧（耳を押さえる力）はやや強め。そのぶん遮音性が高く、音漏れしにくい設計になっています。
数時間の使用でも痛みはほとんどなく、仕事やゲームで長く使う人にもおすすめできます。
夏場などは多少の蒸れを感じることもありますが、イヤーパッドは交換可能なので衛生面でも安心です。
この「プロ機材なのにユーザー想いの快適設計」こそ、ロングセラーの理由の一つでしょう。
耐久性：8年以上使える“相棒”級のタフさ
M50xの人気を支えるもう一つの理由が、圧倒的な耐久性です。
本体は樹脂と金属をバランスよく使った堅牢構造で、折りたたみ部分やケーブルの付け根も頑丈。
「毎日使って8年経っても壊れない」というレビューも珍しくありません。
さらに嬉しいのは、ケーブルが着脱式な点。
標準で3本（カールコード・ストレート長短）が付属し、用途に合わせて使い分けできます。断線してもケーブル交換だけで済むため、買い替える必要がありません。
また、イヤーパッドやヘッドバンドも交換部品が豊富に出回っており、長く使い続けることができます。
“買って終わり”ではなく、“育てるように付き合う”ヘッドホン。
そう感じさせてくれるのがATH-M50xの魅力です。
利用シーン別レビュー：音楽制作から日常リスニングまで
音楽制作・DTM用途
もともとモニターヘッドホンとして生まれただけあって、ミックスや録音の現場での信頼度は抜群。
定位感がしっかりしており、パンの振りやリバーブの深さまで判断しやすいです。
また、再生周波数帯域が広く、音の抜けや粒立ちを確認しやすいのも利点です。
日常のリスニング
一方で、フラット志向ながら“聴いていて楽しい音”に仕上がっているため、リスニング用途でも高評価。
特にロック、ポップス、ジャズ、クラシックなどジャンルを問わず自然に鳴らしてくれます。
ゲームや映画視聴にも向いており、効果音の定位が明瞭。迫力と臨場感のバランスが取れています。
外出やポータブル利用
折りたたみできて持ち運びもしやすく、バッグにもスッと収まります。
密閉型なので外での使用でも音漏れが少なく、カフェや移動中でも快適。
ケーブルが着脱式なので、持ち運び時に絡まりにくいのも好印象です。
他モデルとの比較で見える“万能さ”
同価格帯にはソニーのMDRシリーズやゼンハイザーのHDシリーズなどもありますが、
ATH-M50xはその中でも“バランスの良さ”が際立ちます。
音質・装着感・耐久性のどれか一つが突出しているというより、
どの項目も「上の中」レベルで揃っているオールラウンダー。
だからこそ、初めて本格的なヘッドホンを買う人にも、長年使ってきた音好きにも勧められるのです。
また、Bluetooth版のATH-M50xBT2もラインナップされており、
有線のクオリティをそのままにワイヤレスの利便性を加えたモデルとして注目されています。
ただし音の純度やレスポンスの速さでは、やはり有線版が一歩上という印象です。
購入前に知っておきたいポイント
・密閉型のため、オープン型のような開放感は少ない
・長時間使用で少し蒸れることがある
・ケーブル端子が専用設計なので、市販ケーブルの互換性には注意
とはいえ、これらは使い方や好みによって解消できる範囲。
むしろ、音質や耐久性の恩恵を考えれば、デメリットというほどではありません。
ATH-M50xのレビューまとめ：定番の理由は“完成度の高さ”
ATH-M50xは、派手さこそないものの、**「正確さ」「心地よさ」「信頼性」**を兼ね備えた万能ヘッドホンです。
音楽制作にもリスニングにも、そして何年も使い続ける相棒としてもふさわしい存在。
この価格帯でここまで完成度の高いモデルは、そう多くありません。
結局のところ、人気の理由はシンプルです。
どんな音源でも、どんな環境でも、安定して“良い音”を届けてくれる。
そして、長く使っても壊れない安心感がある。
ATH-M50xは、初めての本格ヘッドホンとしても、長年の愛用機としても後悔しない一台です。
音を本気で楽しみたいなら、このモデルを一度手に取ってみてください。
