高級ヘッドホンの世界では、音質だけでなく、デザインや使い勝手も評価の大きなポイントになります。その中で注目を集めているのが、Bowers & Wilkins(バウワース&ウィルキンス)の最新モデル「Px8 S2」です。前モデルのPx8からどのように進化したのか、実際の使用感を含めてじっくりとレビューしていきます。
フラッグシップらしい存在感と上質なデザイン
Px8 S2を手に取った瞬間に感じるのは、その高級感です。ナッパレザーとアルミニウムを組み合わせたデザインは、手触りからして上質。ヘッドバンドやイヤーパッドの柔らかさはまるで高級車の内装のようで、長時間装着しても頭や耳にストレスを感じにくい作りです。
カラー展開も落ち着いたトーンで統一されており、ビジネスシーンからカジュアルまで違和感なく馴染みます。素材の質感と仕上げの丁寧さが、まさに「モノとしての美しさ」を語っています。
音質:B&Wらしさが際立つバランスと深み
Bowers & Wilkinsといえば、スピーカー開発で培った音響技術の高さで知られています。Px8 S2にもそのDNAがしっかりと受け継がれています。
搭載されているのは40mm径のカーボンコーン・ドライバー。これが非常に優秀で、音の歪みを最小限に抑えつつ、楽器やボーカルの細やかなニュアンスまで鮮やかに再現します。低音はタイトで量感がありながらも、決して膨らみすぎない。中音域は温かみがあり、ボーカルが前に出てくるようなナチュラルさが心地よい。高音域は透明感が高く、繊細なシンバルの余韻までしっかりと感じ取れます。
音の定位や空間表現も見事で、閉塞感がなく、音場が自然に広がる印象です。クラシックやジャズでは楽器の距離感やホールの響きがリアルに再現され、ポップスやロックではエネルギー感をしっかり伝えてくれます。音楽を「分析」するというより、「楽しむ」ことを大切にしているサウンドチューニングと言えるでしょう。
Bluetooth 5.3とaptX Adaptive対応で快適なワイヤレス再生
接続面も大きく進化しています。Px8 S2は最新のBluetooth 5.3に対応し、aptX AdaptiveやaptX Losslessといった高音質コーデックをサポート。これにより、ワイヤレスでもCDクオリティ以上の再生が可能です。
実際にスマートフォンやPCと接続しても、音の途切れや遅延はほとんど感じません。動画視聴やゲームでも違和感がないレベルです。また、USB-Cでの有線接続にも対応しており、最大96kHz/24bitのハイレゾ再生ができるのもポイント。外ではBluetooth、自宅ではUSB接続というように、シーンに応じた使い分けができます。
ノイズキャンセリングは自然で上品な効き方
ノイズキャンセリング機能も搭載されていますが、Px8 S2の特徴は「静寂の中でも音楽が自然に聴こえる」こと。ソニーやボーズのように強力に遮断するタイプではなく、あくまで音楽のダイナミクスを損なわない範囲でノイズを抑える方向性です。
そのため、ANCをオンにしても音の厚みや空気感が失われず、自然な聴き心地を維持できます。地下鉄や飛行機内でも十分な効果がありながら、周囲の環境音が必要以上に圧迫されないバランス。これはB&Wの哲学が感じられる部分です。
通話品質と操作性も確実に改善
Px8 S2はマイク性能も進化しています。8つのマイクがノイズリダクションと音声検知を組み合わせて、クリアな通話品質を実現。オンライン会議や通話でも相手の声がはっきり聞こえ、自分の声も自然に伝わります。
操作系は物理ボタン式で、誤動作しにくいのが魅力。電源・Bluetooth・音量・再生ボタンなどが程よい配置にあり、装着したままでも迷うことはありません。スマホアプリ「Bowers & Wilkins Music」との連携で、ファームウェア更新やEQ調整も簡単に行えます。
装着感と長時間リスニングの快適さ
音質の良さを長時間楽しむためには、装着感の快適さも欠かせません。Px8 S2のイヤーパッドはメモリーフォームを採用しており、耳をしっかり包み込むフィット感があります。圧迫感は少なく、側圧のバランスも絶妙。長時間リスニングでも疲れにくく、通勤や作業中にも快適に使えます。
重量は約320gと、見た目よりも軽く感じます。ヘッドバンドのクッション性も高く、頭頂部への負担がほとんどありません。使えば使うほど、素材の柔らかさが馴染んでいくのも魅力です。
バッテリー性能と充電スピード
バッテリーの持ちも優秀です。ノイズキャンセリングをオンにしても最大30時間の再生が可能。さらに、15分の急速充電で7時間の再生ができるため、うっかり充電を忘れても安心です。出張や旅行でも電池切れを心配する必要はほとんどありません。
実際の使用では、毎日2〜3時間の使用で1週間近く充電せずに使える印象。バッテリー残量はアプリ上で確認でき、消費ペースが緩やかなのも安心です。
Px8 S2と他社フラッグシップとの比較
競合製品としては、WH-1000XM6やQuietComfort Ultraなどが挙げられます。これらと比べると、Px8 S2はノイズキャンセリングの強度ではやや控えめですが、音質と素材の質感では明らかに一段上の仕上がりです。
WH-1000XM6が「機能の多さとANCの強さ」、Boseが「軽さと装着感」を武器にしているのに対し、Px8 S2は「音そのものの豊かさ」と「所有する喜び」で勝負している印象です。価格は約13万円と高額ですが、音質・デザイン・耐久性を考えれば納得できる内容です。
気になる点と今後の期待
もちろん完璧というわけではありません。アプリの操作性やマルチポイント接続の挙動が少し不安定な場面もあります。また、ノイズキャンセリングを最大限に求める人には物足りなく感じるかもしれません。
それでも、こうした課題はファームウェアアップデートで改善される可能性があり、B&Wのサポート体制も信頼性が高いので安心感があります。
px8 s2の魅力と使い勝手を詳しくまとめたレビュー
「Px8 S2」は、単なる高級ワイヤレスヘッドホンではありません。音楽を丁寧に聴くこと、音の余韻を感じること、そしてモノを大切に使う楽しさを思い出させてくれる製品です。
重厚で自然なサウンド、上質な素材、快適な装着感、そして美しいデザイン。これらが絶妙に調和し、使うたびに満足感を得られる仕上がりになっています。通勤や在宅ワーク、夜のリラックスタイムなど、どんな場面でも心地よい音に包まれる体験を提供してくれるでしょう。
もし「音楽を本気で楽しめるワイヤレスヘッドホン」を探しているなら、Px8 S2は間違いなくその候補に入る一台です。高級機ならではの所有感と、日々のリスニング体験を格上げする上品なサウンド。その魅力を一度味わえば、他のヘッドホンには戻れなくなるかもしれません。
