「システマティックレビュー」という言葉、聞いたことはあるけれど実際にはよくわからない…。そんな人は多いのではないでしょうか。
研究や論文の世界ではよく使われる言葉ですが、実は医療や教育、政策など、幅広い分野で「信頼できる根拠を集める方法」として重要な役割を果たしています。
この記事では、専門用語をかみ砕きながら、初心者にもわかりやすくシステマティックレビューの意味と進め方を紹介していきます。
システマティックレビューとは?わかりやすく説明すると
システマティックレビュー(Systematic Review)は、一言でいえば「あるテーマに関する研究を体系的に集めて、分析し、全体の傾向をまとめる方法」です。
たとえば、「運動はストレス軽減に効果があるか?」という疑問があるとします。
その答えを出すために、これまで行われた多数の研究を探し出し、信頼できるものを精査してまとめる。
その一連の過程こそがシステマティックレビューです。
似た言葉に「メタアナリシス」がありますが、これはシステマティックレビューの中で、複数の研究結果を統計的にまとめて数値化する段階を指します。
つまり、メタアナリシスは「数でまとめる部分」、システマティックレビューは「全体の整理と評価を含む広い手法」という関係です。
なぜシステマティックレビューが重要なのか
現代の研究では、同じテーマで異なる結果が報告されることがよくあります。
例えば、ある研究では「Aという薬が効く」と言い、別の研究では「効果がなかった」と言う。
そのままでは、どれが本当に正しいのか分かりません。
システマティックレビューは、そうしたバラバラの結果を整理し、全体として何が言えるのかを導き出すための方法です。
- バイアス(偏り)を減らせる
明確なルールのもとで文献を集め、客観的に分析するため、個人の主観に左右されにくい。 - 再現性が高い
どのように検索・選定・評価したかを明示するため、他の研究者が同じ手順を再現できる。 - 信頼性のある根拠を提供できる
医療ガイドラインや政策立案など、エビデンスに基づく判断に役立つ。
このように、システマティックレビューは「最も信頼性の高い情報源」として、多くの分野で重視されています。
システマティックレビューと一般的な文献レビューの違い
一見すると、どちらも「文献をまとめる作業」に思えるかもしれません。
しかし、両者には決定的な違いがあります。
- 一般的なレビュー(ナラティブレビュー)
研究者が自分の経験や関心に基づいて文献を選び、解釈する。
読みやすく理解しやすいが、主観的になりやすい。 - システマティックレビュー
明確な手順と基準を定め、網羅的に文献を検索・評価する。
客観性が高く、誰が行っても同じ結果が得られるように設計されている。
つまり、システマティックレビューは「方法が体系化されたレビュー」。
研究の世界では、こちらの方がより信頼性の高いエビデンスとされています。
システマティックレビューの進め方をステップごとに解説
初心者でも理解できるように、システマティックレビューの基本的な流れをわかりやすく紹介します。
ステップ1:研究テーマと質問を明確にする
最初にやるべきことは、「何を知りたいのか」を具体的に決めること。
漠然と「効果があるかどうか」を調べるのではなく、PICOという枠組みを使うと整理しやすいです。
- P(Population):対象となる人や集団
- I(Intervention):介入や取り組み
- C(Comparison):比較対象
- O(Outcome):結果・効果の指標
たとえば「高齢者(P)に対して、ヨガ(I)は有酸素運動(C)と比べてストレス軽減(O)に効果があるか?」という形です。
ステップ2:プロトコルを作成する
システマティックレビューでは、あらかじめ「どう進めるか」を計画書としてまとめます。
これを「プロトコル」と呼びます。
- 使うデータベース(PubMed、Cochrane Libraryなど)
- 検索キーワードや条件
- 採用・除外の基準
- 評価の方法
- 結果をどうまとめるか
プロトコルを公開しておくと、他の研究者が内容を確認でき、透明性が高まります。
ステップ3:文献検索を行う
次に、決めた検索条件に基づいて文献を探します。
主要なデータベースとしては以下のようなものがあります。
- PubMed(医学・生命科学系)
- Embase(薬学・臨床試験系)
- Web of Science(総合研究)
- CiNii(日本語文献)
検索は一度で終わりではなく、キーワードを変えながら何度か試行するのが一般的です。
また、学会発表や報告書など、正式に出版されていない「グレー文献」も含めると、より偏りが減ります。
ステップ4:文献をスクリーニングする
集めた文献の中から、対象となるものだけを残す作業が「スクリーニング」です。
- タイトルと要約でざっくり絞り込み
- フルテキストを読んで最終的に採用するか判断
この作業は2人以上で行い、意見が分かれた場合は話し合って決めるのが理想です。
人の判断を複数入れることで、選択の偏りを防げます。
ステップ5:データを抽出して整理する
採用した論文から、必要な情報を抜き出してまとめます。
具体的には以下のような項目です。
- 研究の目的や対象
- 使用された手法
- 結果や効果の数値
- 著者や発行年
この段階では、エクセルや専用ソフトを使って情報を整理することが多いです。
間違いがないようにダブルチェックを行うことも重要です。
ステップ6:質の評価を行う
集めた研究がすべて同じ質とは限りません。
中にはサンプル数が少なかったり、手法が不十分なものもあります。
そのため、研究ごとに「信頼できるかどうか」を評価します。
よく使われるツールとして「Cochrane Risk of Bias Tool」などがあります。
評価の結果を踏まえて、どの研究をどのように扱うかを判断します。
ステップ7:結果を統合し、結論を導く
ここまで集めた情報をもとに、全体の傾向を分析します。
- 定性的にまとめる(研究結果を言葉で整理)
- 定量的に統合する(メタアナリシスを実施)
メタアナリシスでは、複数研究の数値を統計的にまとめて、全体としての効果を数値で示すことが可能です。
この結果から、「どの程度の効果があるのか」「結果にばらつきがあるか」を判断します。
ステップ8:結果をわかりやすく報告する
最後に、全体の流れと結果を一つの論文や報告書としてまとめます。
国際的には「PRISMA」というガイドラインに沿って書くことが推奨されています。
重要なのは、検索条件や選定基準、評価方法をできるだけ詳しく記載すること。
そうすることで、他の人が同じ方法で再現できるようになります。
初心者がつまずきやすいポイント
システマティックレビューの流れは明確ですが、実際にやってみると意外と大変です。
特に次のような点でつまずきやすいでしょう。
- 検索語の設定が難しい
英語・日本語両方でキーワードを考える必要があり、関連語を漏らさない工夫が求められます。 - 文献数が膨大になる
何百本もヒットすることがあり、管理ソフトの活用が必須。 - 評価に主観が入りやすい
判断の基準を明確にして、複数人で確認するのが安心です。
これらを乗り越えるためには、経験者や図書館員など専門家のサポートを受けるのも有効です。
システマティックレビューが活用される分野
この手法はもともと医療・疫学分野で発展しましたが、今では多くの領域で活用されています。
- 医療・看護:治療法や薬の効果を検証
- 教育:授業方法や教材の有効性を評価
- 社会科学:政策や福祉の効果測定
- 環境・経済:持続可能な取り組みや経済政策の検証
いずれの分野でも、「根拠に基づいた判断」を支えるための基盤として重要な位置づけにあります。
システマティックレビューをわかりやすく理解して活用しよう
システマティックレビューは、一見すると難しそうに感じますが、要するに「情報を集め、整理し、客観的に判断するための道具」です。
しっかり手順を踏めば、初心者でも再現性の高いレビューを行うことができます。
研究やビジネスの世界では、膨大な情報の中から信頼できる根拠を見つける力がますます求められています。
その第一歩として、システマティックレビューの考え方を理解することは大きな武器になるはずです。
これを機に、自分の興味あるテーマで「システマティックレビュー」に挑戦してみてはいかがでしょうか。
