バーボン好きの間で長く愛されてきた「クレメンタインバーボン」。
50.5度というしっかりした度数に、バニラの甘い香りが印象的な一本です。
しかし、そんなクレメンタインバーボンが「終売になった」との情報が広まり、ファンの間では惜しむ声が絶えません。
この記事では、クレメンタインバーボンがなぜ終売になったのか、その背景と幻と呼ばれる味わいの魅力、さらに今手に入る代わりの銘柄を紹介します。
クレメンタインバーボンとは?熟成8年の“甘く重厚な”ケンタッキーストレート
まずはクレメンタインバーボンの特徴からおさらいしましょう。
正式名称は「Clementine 8 Years Old Kentucky Straight Bourbon Whiskey」。
熟成8年、アルコール度数50.5%、容量750mlという本格仕様のバーボンです。
甘口でありながらもボディがしっかりしており、重厚な飲みごたえを持ちながらも香りは華やか。
特に「サワーマッシュ製法」によるバニラ香と、熟成樽由来のキャラメルやオークの風味が特徴的です。
口に含むとまず穏やかな甘さが広がり、その後にアルコールの厚みが追いかけてくる。
この“甘くて強い”バランスが、クレメンタインバーボンを他のバーボンとは一線を画す存在にしていました。
なぜクレメンタインバーボンは終売となったのか
「終売」と聞くと突然の印象がありますが、クレメンタインバーボンの場合は、いくつかの要因が重なっていたようです。
1. 日本向け輸出ブランドの整理
もともとクレメンタインバーボンは、アメリカの蒸留所が日本市場向けに展開していた限定ブランドでした。
同じ時期には「レベッカ」や「イエローローズ・オブ・テキサス」なども輸出されていましたが、2010年代以降のバーボン需要の高まりにより、アメリカ国内向けの供給が優先され、日本向けブランドが次々と整理されていったのです。
2. 熟成原酒の確保が難しくなった
8年熟成という長期熟成バーボンは、原酒のストックが命です。
高い度数と豊かな風味を両立させるには、時間と手間がかかります。
結果として、原酒の確保が難しくなり、同品質での継続生産が困難になった可能性が高いと考えられます。
3. コスト増と円安の影響
ここ数年、原材料や物流コストの上昇に加え、円安の影響で輸入酒の価格は軒並み上昇しています。
特に限定ブランドや少量輸入の銘柄は、採算が取りづらく、販売終了を決断するケースが増えています。
クレメンタインバーボンも例外ではなく、採算性の問題が終売の一因とみられます。
幻と呼ばれる味わい ― 終売後も愛され続ける理由
終売が発表された後も、クレメンタインバーボンの人気は衰えていません。
ネットオークションでは「終売」「未開栓」「古酒」といったキーワードが並び、数万円を超える価格で取引されています。
では、なぜここまで愛されているのでしょうか。
一つは、クレメンタインバーボン独自の味わいにあります。
50.5度という度数から想像するよりもマイルドで、重厚な甘みの中に焦がしキャラメルのような香ばしさがあり、余韻が非常に長い。
飲み飽きない奥行きがあるため、愛好家の中では“隠れた名作”として語り継がれてきました。
さらに、希少性がその価値を一層引き立てています。
終売となった今では、バーや個人コレクターが所有するボトルを除けば、新品を見かけることはほとんどありません。
「もう一度あの味を」と願う声が多いのも納得です。
再販や復活の可能性はあるのか?
「終売」とはいえ、ウイスキー業界では復活や限定再販の例も珍しくありません。
実際に、クレメンタインバーボンは過去にも「一時的に流通が止まった後、再び少量入荷した」という記録がありました。
ただし、現時点でメーカーや輸入元からの再販予定は確認されていません。
また、同じスペックでの再登場は難しいとみられています。
そのため、現在市場に残る在庫や中古市場での取引が、事実上の“最後のチャンス”といえるでしょう。
クレメンタインバーボンの代わりにおすすめしたい銘柄
幻の味を求める方にとって気になるのが、「似たテイストのバーボンはあるのか」という点でしょう。
ここでは、クレメンタインバーボンの特徴を踏まえ、スタイルの近い代替銘柄をいくつか紹介します。
1. ワイルドターキー101
アルコール度数50.5%という点で共通する、クラシックなバーボン。
甘さとスパイス感のバランスが絶妙で、しっかりとした余韻が楽しめます。
価格帯も手頃で、入門にも最適。
2. エライジャクレイグ スモールバッチ
熟成の深みとバニラ香が特徴の一本。
口当たりは滑らかで、キャラメルのような甘さが広がります。
クレメンタインバーボンの「厚みのある甘口」を求める人におすすめです。
3. ブラントン
丸みのある味わいと上品な香りが魅力の高級バーボン。
シングルバレル(単一樽)で造られており、個性のある風味が楽しめます。
特別な日や贈り物としても人気です。
これらの銘柄は、いずれもクレメンタインバーボンのように“甘くて強い”スタイルを受け継ぐ存在。
それぞれ個性は異なりますが、代替として十分に満足できる一本になるはずです。
現在の入手状況と価格のリアル
現在、クレメンタインバーボンは一般販売店ではほとんど見かけません。
通販サイトでは「在庫1本限り」「終売品」として数万円台で販売されているケースがあり、オークションでは50,000円前後が相場です。
こうした希少ボトルを購入する際は、保管状態や真偽の確認が欠かせません。
特に古酒扱いの場合、コルク劣化や液面低下が発生していることもあるため、信頼できる販売元を選ぶことが大切です。
クレメンタインバーボンの終売をどう受け止めるか
終売は残念ですが、その背景には“品質を守るための決断”という側面もあります。
無理に生産を続けて品質を落とすより、理想の味を残して幕を下ろす――
そう考えると、クレメンタインバーボンは幸せな終わり方を選んだのかもしれません。
また、希少になったことで再び注目され、愛好家の間で語り継がれる存在になったのも事実です。
この一本が残した印象と味わいは、確かに多くの人の記憶に刻まれています。
クレメンタインバーボン終売に寄せて ― 幻の味を探す楽しみを
クレメンタインバーボンの終売は、ひとつの時代の終わりでもありました。
しかしその“幻の味”を追い求める過程こそが、バーボンを愛する楽しみの一部なのかもしれません。
今は手に入らなくても、同じように情熱を感じる銘柄はきっと見つかるはず。
ワイルドターキー101やエライジャクレイグ スモールバッチ、ブラントンなど、現行品にも素晴らしい選択肢があります。
クレメンタインバーボンの名を知る人なら、その香りと余韻をいつまでも忘れないでしょう。
そして、その記憶が次の一杯を選ぶきっかけになる――そんなロマンを残して、クレメンタインバーボンは静かに幕を閉じたのです。

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