最近、「スーパーであさりを見かけない」「売り場に並んでいない」という声が増えています。味噌汁やボンゴレなど、家庭料理に欠かせない食材だけに、突然見かけなくなると不安になりますよね。実際、ネット上でも「あさりが売ってない」との投稿が目立ちます。では、なぜ今、あさりが手に入りにくくなっているのでしょうか。今回はその理由と、入手できる場所、今後の見通しをわかりやすく整理してお伝えします。
あさりが売ってないという声が全国で増えている
ここ1〜2年ほど、「あさりが売ってない」と感じている人が急増しています。SNSやQ&Aサイトでは、こんな声が多く見られます。
- 「スーパーに行ってもあさりが全然売ってない」
- 「最近は小粒の砂抜きパックしか見かけない」
- 「ネットでは売ってるけど店頭には無い」
- 「冬場は一切入荷していないみたい」
つまり、完全に「終売」したわけではなく、販売の機会が減ったり、入荷が不安定になっているのが実情です。地域や店舗によっては、仕入れが途絶える期間もあるようです。
国内の漁獲量が激減している
最大の要因は、国内でのあさり漁獲量の減少です。かつて全国で年間3〜4万トンあった漁獲量は、近年では5,000〜6,000トンほどにまで減少しています。ピーク時のわずか1〜2割しか取れていない計算です。
特に愛知県や熊本県など、主要な産地での減少が顕著です。愛知県ではかつて全国の半数近くを占めていましたが、近年はその1/8程度に落ち込んでいます。熊本県でもほとんど採れず、名産地としての面影が薄れています。
こうした状況は、あさりが育つ環境の変化によるものです。海水温の上昇や河川からの淡水流入、干潟の減少などが重なり、あさりの生息環境が悪化。加えて、プランクトンなどの餌が減少し、稚貝の育成が難しくなっています。漁師がいくら努力しても資源そのものが減っているのです。
輸入あさりも減少と信頼低下で苦境に
国内産が減った分を補うため、これまで日本では中国産や韓国産のあさりが多く輸入されてきました。実際、流通量の約9割を外国産が占めていた時期もあります。しかし、ここにも問題が起きています。
2022年、熊本県産として販売されていたあさりの多くが、実際には中国など外国産だったことが発覚しました。いわゆる「産地偽装」問題です。DNA検査の結果、熊本県産と表示された製品のほとんどが他国由来だったという調査報告も出ました。
この事件以降、消費者の信頼が大きく揺らぎ、販売店も仕入れを控えるようになりました。輸入あさり自体も数量が減り、以前のように全国のスーパーで見かけることが少なくなったのです。
店頭にあさりが並びにくくなった背景
あさりが「売ってない」と感じる背景には、いくつかの構造的な要因があります。
1. 漁獲量の減少による供給不足
国内漁業の縮小により、流通量がそもそも少ない状態です。出荷量が限られるため、全国に均等に供給されず、地域差が生まれています。
2. 輸入商品の敬遠
中国産や韓国産あさりへの不安感が残り、「外国産は買わない」と考える消費者が増えました。その結果、販売店も需要が読めず、仕入れを控えるケースが多いようです。
3. 価格高騰
仕入れコストの上昇により、あさりの価格が高止まりしています。以前のように100gあたり100円前後では買えず、割高感が出てしまったことで購買意欲が下がっています。
4. 季節・入荷のムラ
冬場や春先など、潮干狩り前後の時期は出荷量が不安定です。漁期によっては店頭から一時的に姿を消すこともあり、「売っていない」と感じる人が増えます。
5. 販売リスクの上昇
表示トラブルや品質問題を恐れて、小売店が「扱わない」「限定的に販売する」方針を取ることもあります。これも店頭で見かけなくなった一因です。
消費者の心理と食卓の変化
以前は「味噌汁といえばあさり」という定番の存在でしたが、近年は食卓の変化も影響しています。調理に手間がかかることや、砂抜きが面倒という理由で敬遠されがちになりました。さらに、むき身のシーフードミックスや冷凍ボンゴレソースなど、代替商品が増えたことも大きいです。
加えて、国産志向が高まる中で「輸入あさりは不安」「できれば国産を使いたい」という意識が強くなり、結果的に選択肢が狭まってしまったのです。
店舗で買える場所と探し方のコツ
「あさりが売ってない」と感じても、まったく手に入らないわけではありません。以下のような工夫で見つけやすくなります。
- 大型スーパーの鮮魚売り場をチェック
イオン、イトーヨーカドー、西友などの大手では、不定期ながら入荷することがあります。砂抜き済みの小粒タイプが多めです。 - 地域密着型の魚屋・市場
地方の鮮魚店では、地元漁港から直送される国産あさりを扱うことがあります。価格はやや高めですが、鮮度は抜群です。 - 朝市・道の駅
漁港近くの朝市や道の駅では、旬の時期に地元産が並ぶことがあります。販売期間は短いですが、希少な国産を入手できるチャンスです。 - 通販・お取り寄せ
店頭に無い場合は、通販が便利です。産地直送や冷凍あさりの販売もあり、砂抜き不要で調理も簡単です。ただし、送料込みで価格が高くなる点は注意しましょう。
通販で買えるあさりの種類と選び方
通販では以下のようなタイプが主流です。
- 国産冷凍あさり(むき身)
味噌汁やパスタに使いやすく、砂抜き不要。冷凍保存が効き、必要な分だけ使える。 - 産地直送の殻付き生あさり
熊本、愛知、北海道などのブランド産地から直送されるもの。季節限定で販売されることが多い。 - 外国産(中国・韓国)の冷凍あさり
比較的安価ですが、信頼できる販売元を選ぶのがポイント。レビューや産地情報を確認しましょう。
購入時は、産地表示・サイズ感・砂抜き処理の有無を必ずチェックすることをおすすめします。
今後のあさり供給はどうなる?
今後もあさりの供給は厳しい状況が続くと見られています。環境の変化はすぐに改善できず、天然資源の回復には時間がかかるためです。ただ、各地で養殖や資源回復の取り組みも始まっています。
愛知県や北海道では、人工稚貝を放流して資源を再生させるプロジェクトが進行中。将来的には国産あさりの回復が期待されています。また、輸入品についても表示の厳格化が進み、品質と信頼性の向上が図られています。
すぐに元通りとはいかないものの、「完全に買えなくなる」ということではありません。季節や販売先を見極めながら、上手に探せばまだ入手できます。
あさりが売ってない今、どうすればいい?
手に入りにくい今こそ、調理方法や代替品を工夫してみましょう。
- 冷凍むきあさりを常備
手軽に使えるうえ、味噌汁・パスタ・炊き込みご飯などに応用できます。 - しじみ・はまぐりで代用
味やだしの出方は異なりますが、貝の旨味を楽しめます。特にしじみは栄養価も高く、味噌汁におすすめ。 - 缶詰やレトルト製品の活用
保存が効くうえ、手軽に調理可能。味付け済みのあさり缶やボンゴレソースも選択肢です。
まとめ:あさりが売ってないのは一時的な現象ではない
あさりが売っていないのは、単なる一時的な品切れではなく、資源の減少や流通の変化、信頼問題などが複雑に絡み合った結果です。
国産は希少化し、輸入品も敬遠される中で、私たちの身近な食材が“特別な存在”になりつつあります。
とはいえ、通販や地域市場などを活用すれば、まだ手に入れることはできます。
また、養殖や環境改善の取り組みも進んでおり、将来的には再び店頭に戻る日も期待できそうです。
あさりが売ってない理由を知り、正しい情報で選ぶことが、これからの食生活を守る第一歩になるでしょう。

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