最近、「リピーターハブがどこにも売っていない」「ネットでも見つからない」という声をよく耳にします。
確かに、家電量販店のネットワーク機器コーナーを見ても、置かれているのは「スイッチングハブ」ばかり。
では、なぜリピーターハブは姿を消したのでしょうか？
この記事では、その理由や販売終了の背景、そして代わりに使える機種について分かりやすく解説します。
リピーターハブとは？まずは基本をおさらい
リピーターハブは、LAN（ローカルエリアネットワーク）で複数の機器を接続するための装置の一種です。
特徴は、受け取った信号をそのまま全ポートに再送信するというシンプルな仕組み。
別名「共有ハブ」「バカハブ」とも呼ばれ、ネットワークの初期段階で広く使われていました。
この「リピーター」という名前は、信号を“増幅・再生（repeat）”して延長する機能に由来しています。
つまり、物理的なケーブル長を超えて通信できるようにする役割を持っていたのです。
しかし、リピーターハブは通信の効率が悪く、衝突（コリジョン）が起きやすいという弱点を抱えていました。
通信量が増えるとネットワーク全体が遅くなるため、現在ではほとんどの環境で使われなくなっています。
リピーターハブが売ってない理由①：技術進化による置き換え
最大の理由は、ネットワーク技術の進化です。
かつては10BASE-T（10Mbps）や100BASE-TX（100Mbps）といった速度が主流でしたが、いまや家庭でも1Gbps以上が当たり前。
この高速通信環境では、リピーターハブの仕組みが適合しません。
ギガビット以降の通信規格では、スイッチング機能（宛先制御）が必須となっています。
つまり、リピーターハブは技術的に時代遅れになってしまったのです。
さらに、スイッチングハブの価格が下がったことで、わざわざリピーターハブを選ぶメリットもなくなりました。
今では「安い・速い・安定している」という三拍子がそろったスイッチングハブが完全に主流です。
リピーターハブが売ってない理由②：市場ニーズの低下
技術的な理由に加え、需要の激減も大きな要因です。
昔は、企業や学校などでネットワーク構築の入門用としてリピーターハブが使われていました。
しかし、現在では管理者やエンジニアでさえ、スイッチングハブしか使わないのが一般的。
家庭用途においても、リピーターハブのメリットはほぼ存在しません。
衝突ドメインが広がるため、複数端末が同時通信すると速度低下が顕著になります。
Wi-Fiルーターの普及もあり、有線ハブの需要自体が減少していることも影響しています。
その結果、家電量販店やネット通販でも取り扱いがなくなり、メーカーが生産を終了する流れとなりました。
リピーターハブが売ってない理由③：メーカー側の製造終了
アライドテレシスやバッファローなど、かつてリピーターハブを扱っていた主要メーカーも、すでに生産を打ち切っています。
多くは10BASE-Tや100BASE-TX対応の旧式モデルで、現行ラインナップからは姿を消しました。
メーカー側も、販売台数が減れば生産ラインを維持するコストが割に合わなくなります。
そのため、「在庫限り」や「生産完了」として静かに販売を終了するケースがほとんど。
ネットショップで検索しても、「在庫なし」「取扱終了」の表示が多いのはこのためです。
ただし、完全にゼロになったわけではありません。
ごく一部では、**特殊用途向けのリピーターハブ**が継続して販売されています。
例えば、ネットワーク監視やパケットキャプチャなど、特定の実験・検証向けに限定されたモデルです。
一部では“復活”も？ニッチ市場向けリピーターハブの存在
近年では、あえてリピーターハブの特性を活かした製品が再登場しています。
たとえば、ネットワーク解析を行うエンジニア向けに開発された「FXG-05RPT2」などがその一例です。
この製品は、パケットキャプチャ用に信号をすべてのポートへ再送信する仕様を採用。
スイッチングハブではミラーポート設定が必要な作業を、簡単に実現できる点が特徴です。
ただし、一般家庭向けではなく、あくまで業務・実験用途に特化した製品となっています。
つまり、「リピーターハブは完全に消滅したわけではないが、一般流通はほぼ終了」というのが現実です。
リピーターハブの代替としておすすめの機器
では、今からLAN構築をする人がリピーターハブの代わりに何を選べばよいのでしょうか？
結論から言うと、以下の2つが現実的な代替策です。
1. スイッチングハブを使う
もっとも一般的なのがスイッチングハブ。
通信を宛先ごとに仕分けることで、無駄なデータ送信を減らし、通信速度を維持できます。
価格も数千円程度と手頃で、5ポートや8ポートの小型モデルなら家庭用にも最適です。
特に、ギガビット対応モデル（1000BASE-T）は今後のネットワーク環境にも安心。
静音設計や金属筐体モデルなど、用途に合わせた豊富なラインナップがあります。
2. ミラーポート付きスイッチ or ネットワークTAPを使う
もしリピーターハブを探している理由が「通信の全ログを見たい」「パケットをキャプチャしたい」など解析目的なら、
ミラーポート（SPAN）機能付きのスイッチングハブが適しています。
また、より本格的な監視を行う場合は、ネットワークTAP（専用の分岐装置）を導入するのが確実です。
中古市場での入手は可能？
中古品を探せば、リピーターハブが見つかる可能性もあります。
特にオークションサイトやハードオフなどのリユースショップでは、旧型ハブが出回ることがあります。
ただし、注意点もあります。
- 通信速度が遅く、現代のネットワークに適さない
- 半二重通信のみ対応のものが多い
- 長年の保管でコンデンサ劣化などのリスクあり
用途が限定されることを理解した上で、購入を検討するのが安全です。
「とりあえず繋がればいい」という目的なら、むしろ中古のスイッチングハブを選ぶ方が安心でしょう。
まとめ：リピーターハブは実質的に終売、今はスイッチングハブの時代
リピーターハブが売ってない理由は、技術の進化と需要の変化にあります。
10BASE-T時代の名残として一部ではまだ語られますが、
今やスイッチングハブが標準であり、価格面でも完全に置き換えられました。
とはいえ、特殊なネットワーク検証やパケット解析といったニッチな用途では、
あえてリピーターハブ構造を採用した製品が再び注目されているのも事実です。
一般利用者にとっては、「リピーターハブを探すよりもスイッチングハブを選ぶ」方が確実で快適。
時代の流れに合わせて、ネットワーク環境をアップデートしていくのが賢い選択といえるでしょう。
