「ツムラ五苓散(ごれいさん)が販売終了したらしい」と耳にして、ドラッグストアを探し回ったけど見つからなかった――そんな声が近年増えています。
実際のところ「販売終了」は本当なのか、それとも一部の製品だけなのか。この記事では、ツムラ五苓散の最新情報をもとに、医療用と市販薬の違い、そして代替薬の選び方まで分かりやすく解説します。
ツムラ五苓散が「販売終了」と言われる理由
まず結論から言うと、「ツムラ漢方五苓散料エキス顆粒(市販薬)」はすでに製造終了しています。ツムラ公式サイトの製造終了一覧には、10包・48包の一般用医薬品として2022年2月に生産終了と明記されています。
つまり、店頭で見かけなくなっているのは事実です。ドラッグストアに残っている在庫はあるかもしれませんが、それがなくなれば市場から姿を消すことになります。
ただし、「販売終了=五苓散そのものが消えた」というわけではありません。
医療機関で処方される「ツムラ五苓散エキス顆粒(医療用)」は現在も販売が続いています。ただし、原料確保や生産拠点の移行などの影響で、2024年以降は「限定出荷」となっている時期があり、供給が不安定になっているのが実情です。
つまり、
- 市販薬はすでに製造終了(在庫限り)
- 医療用は供給制限あり(販売自体は継続中)
というのが現時点での正確な状況です。
医療用と市販用のツムラ五苓散はどう違うの?
名前は同じ「五苓散」でも、実は医療用と市販用では中身が少し違います。
ここを理解しておくと、なぜ「市販用だけが終了」となったのかも納得しやすいでしょう。
ツムラ五苓散は、次の5種類の生薬で構成されています。
- 沢瀉(たくしゃ)
- 猪苓(ちょれい)
- 茯苓(ぶくりょう)
- 蒼朮(そうじゅつ)
- 桂皮(けいひ)
これらの組み合わせは共通ですが、医療用は生薬の配合量が多く、効果の現れ方も市販薬より強めに設計されています。
一方、市販薬は一般の方が安全に使えるよう、やや穏やかな配合に調整されています。これは薬機法上の区分によるもので、「市販薬=効かない」という意味ではありません。体調や症状の軽さに応じて使い分けることが前提です。
もう一つ大きな違いは、購入方法。
医療用は医師の処方が必要で、保険適用の対象になります。
市販薬はドラッグストアや通販で購入できましたが、製造終了により入手が難しくなっています。
結果として、今後五苓散を使いたい場合は、医療機関での処方が主な手段となります。
五苓散が必要とされる代表的な症状
五苓散は、体内の「水の巡り」を整える処方として古くから使われてきました。
主な適応症は次の通りです。
- めまい、頭痛、むくみ
- 水様性の下痢、二日酔い
- 暑気あたり、急性胃腸炎(しぶり腹のものを除く)
いわば「体に余分な水がたまっている状態」に合う漢方です。
気圧の変化で頭が重い、飲み過ぎで体がむくむ、そんなときに処方されることもあります。
また、近年では「天気痛」や「気象病」にも五苓散が使われることが増えています。
気圧の変化で体調を崩すタイプの人に、医師がこの処方を選ぶケースが多いようです。
ただし、あくまで症状の原因や体質に合わせて選ぶものであり、「なんとなく合いそう」と自己判断で長期使用するのは避けたほうが安心です。
なぜ市販薬だけが製造終了になったのか
ツムラは医療用漢方を中心に展開しており、市販薬はその一部を家庭向けに販売してきました。
しかし、昨今は原料となる生薬の調達が難しく、特に海外生産拠点の再編や品質基準の見直しによって生産コストが上昇しています。
その結果、採算の厳しい一般用製品を整理し、医療用に生産リソースを集中する方向へ舵を切ったと考えられます。
また、医療用と市販用の両方を同時に維持するには、製造ラインや承認手続きも二重に必要です。
その負担を減らす意味でも、市販版の終了は合理的な判断だったのでしょう。
ツムラ以外のメーカー(クラシエ、小太郎漢方製薬など)も同様に、市販の漢方薬ラインナップを絞り込む傾向が見られます。業界全体で「医療用中心」への再編が進んでいるといえます。
現在手に入る代替品・選択肢はある?
「じゃあ、もう五苓散は買えないの?」と思うかもしれませんが、いくつか選択肢はあります。
1. 他メーカーの市販漢方薬
ツムラ以外にも「クラシエ漢方五苓散料エキス顆粒」「小太郎漢方製薬」「松浦薬業」など、五苓散処方を含む市販薬を販売しているメーカーがあります。
製造終了となったのはツムラの旧パッケージだけで、他社の五苓散が引き続き販売されている場合もあります。
ただし、同じ「五苓散」でもメーカーによって生薬量や抽出方法が異なるため、使用前に薬剤師に確認するのが安心です。
2. 医療機関での処方
最も確実なのは、医師に相談して医療用の「ツムラ五苓散エキス顆粒(医療用)」を処方してもらう方法です。
保険診療の対象となるため、自己負担は3割程度で済みます。
最近ではオンライン診療を行うクリニックも増えており、スマホ診察で五苓散を処方してもらうことも可能です。
3. 症状に合わせた代替処方を検討
もし五苓散が入手困難な場合、体質や症状に応じて別の処方を検討することもあります。
例えば「むくみが中心」の場合は防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)、「めまいが強い」なら苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)など、似た働きを持つ漢方も存在します。
どの処方が合うかは体質によって異なるため、専門家の判断が必要です。
五苓散を使うときの注意点
どんな漢方薬でも、自己判断での長期使用は避けるべきです。
特に五苓散は体の「水分バランス」を調整する薬のため、体質が合わないと逆効果になることもあります。
注意したいポイントは以下の通りです。
- 「しぶり腹(強い腹痛を伴う下痢)」のある人には使わない
- 利尿作用があるため、脱水症状があるときは控える
- 他の利尿薬や漢方薬との併用は医師・薬剤師に相談
- 妊娠中・授乳中の使用は必ず専門家に確認する
五苓散は「体にやさしい漢方」という印象がありますが、薬であることに変わりはありません。
体調や併用薬によっては、使用を控えるほうが安全な場合もあります。
今後の再販や供給状況の見通し
ツムラは新たな生産拠点の整備や、原料供給ルートの見直しを進めています。
そのため、医療用の供給制限は今後徐々に改善される見込みがあります。
ただし、市販版の再販については現在のところ公式な発表はありません。
もし今後、改良された新パッケージや別ブランドとして再登場する可能性があるとしても、早くても数年単位の話になるでしょう。
当面は、医療用を通じての利用が現実的な選択です。
まとめ:ツムラ五苓散が販売終了って本当?今後どう使えばいい?
改めて整理すると――
- 市販用ツムラ五苓散は2022年に製造終了
- 医療用ツムラ五苓散は販売継続中(限定出荷あり)
- 他社のクラシエ漢方五苓散料エキス顆粒や代替漢方で対応可能
- 使用時は体質・症状に合わせて医師や薬剤師に相談するのが安全
「もう買えない」と慌てる前に、まずはどの製品が終了したのかを確認しましょう。
五苓散という処方自体は生き続けており、正しいルートを通せば今後も使うことができます。
体調に合わせて上手に付き合うことが、漢方を長く安心して使う第一歩です。
