最近、「Officeのボリュームライセンスが販売終了したらしい」という話題を耳にした方も多いのではないでしょうか。
企業や団体で使っていた“買い切り型”のOfficeが急に買えなくなった——そんな声も増えています。
この記事では、なぜボリュームライセンス販売が終了したのか、その背景と今後の購入方法をわかりやすくまとめます。
そもそもOfficeのボリュームライセンスとは?
まず「ボリュームライセンス」とは、企業や団体が複数台にOfficeなどのマイクロソフト製品を導入するための契約方式のこと。
パッケージ版を1台ずつ購入するのではなく、まとめてライセンスを契約し、シリアルや管理ポータルからインストール・認証を行う仕組みです。
主なメリットは以下のとおりです。
- 一括管理できるので、導入や更新の手間が少ない
- 永続ライセンスであるため、契約後は追加費用なしで使い続けられる
- サポート期間中は安定した更新とセキュリティ対策を受けられる
一方で、契約数や更新の仕組みがやや複雑で、特に少数ライセンスの導入には制約が多いという課題もありました。
この仕組みを利用してきたのが「Microsoft Open License(オープンライセンス)」というプログラムです。
販売終了の背景にある“時代の転換点”
Officeのボリュームライセンス販売終了は、単なる制度変更ではなく、マイクロソフト全体の戦略転換が背景にあります。
大きく4つの理由があります。
1. サブスクリプション型サービスへの移行
ここ数年、マイクロソフトは「Microsoft 365(旧Office 365)」など、クラウドをベースとしたサブスクリプション型の提供へシフトしています。
この方式では、常に最新バージョンのOfficeを利用でき、セキュリティ更新も自動。
一度購入して終わりの“買い切り型”よりも、継続的にサービスを改善できる点が大きな特徴です。
そのため、従来の「買い切り型ライセンス」は徐々にフェードアウト。
マイクロソフトとしても、クラウド環境に統一して管理コストを減らす方向に舵を切ったと言えます。
2. Microsoft Open Licenseプログラムの終了
法人や教育機関などが利用していた「Microsoft Open License」は、2021年12月31日で新規・更新ともに販売終了となりました。
この終了によって、従来のボリュームライセンス契約では新規購入ができなくなり、永続ライセンスを希望する場合は新しい契約形態「Perpetual Software in CSP」に移行する必要があります。
このCSP(クラウドソリューションプロバイダー)方式では、クラウド経由でライセンスを発行・管理する仕組みに一本化されました。
マイクロソフトは販売経路を整理し、より柔軟で管理しやすい体制を整えた形です。
3. サポート期間の短縮と製品サイクルの高速化
Officeの買い切り型製品は、以前は「延長サポート」を含めて10年以上使えることもありました。
しかし、Office 2021では延長サポートがなく、2026年10月13日にサポート終了となる予定です。
つまり、今後は「長く使うより、最新環境に順応してアップデートしていく」方向に方針が変わったわけです。
OSやクラウド連携機能の進化に合わせて短期間で更新を繰り返すスタイルが主流になっています。
4. 契約体系の整理と管理の簡素化
マイクロソフトは長年、複数の契約プログラム(Open、Open Value、Select、Enterprise Agreementなど)を併用していました。
しかし、顧客・販売パートナーの双方にとって分かりづらく、管理も煩雑だったため、CSPに一本化してシンプルにまとめたという流れです。
この統合により、1ライセンス単位でも購入できるようになり、中小企業でも導入しやすくなりました。
買い切り型Officeはもう買えないの?
「Officeのボリュームライセンスが終わった=もう買い切り版は買えない」と思う方もいますが、完全に消滅したわけではありません。
現時点でも、Office 2021の永続ライセンス版はCSP経由で購入可能です。
ただし、従来のようにMicrosoft Open License経由での販売は終了し、販売パートナーやクラウド経由の購入に切り替わっています。
また、将来的に新しい永続版(たとえば“Office 2024”のようなもの)が発売される可能性はありますが、基本的には「Microsoft 365」への移行を前提とした設計が進められています。
今後の購入方法と選択肢
販売終了後、法人や団体がOfficeを導入する方法は主に3つに分かれます。
1. Microsoft 365(サブスクリプション型)を利用する
もっとも推奨されるのが、サブスクリプション型の「Microsoft 365」です。
月額または年額で契約し、常に最新のOfficeアプリを利用できます。
クラウド上でデータを共有できるOneDriveやTeamsも標準で使えるため、リモートワークとの相性も抜群です。
メリットは以下の通り。
- 常に最新バージョンを利用できる
- セキュリティ更新が自動で安心
- 契約人数を柔軟に増減できる
デメリットとしては、永続ライセンスのように“買い切りではない”ため、使い続ける限り料金が発生する点です。
2. 永続ライセンス(Perpetual Software in CSP)を購入する
どうしてもサブスクリプションを避けたい場合は、CSP経由で永続ライセンスを購入できます。
一度購入すれば、そのバージョンをサポート期間内は使い続けられます。
ただし、次のような制約があります。
- サポート終了日が短い(Office 2021は2026年10月まで)
- 機能追加やクラウド連携は限定的
- セキュリティ更新が終了すればリスクが残る
“ずっと使える”とはいえ、サポート切れのOfficeを業務で使い続けるのはセキュリティ的におすすめできません。
長期的に見ると、サブスク型への移行を前提に計画を立てたほうが安全です。
3. 既存ライセンスの継続利用
すでにMicrosoft Open Licenseで永続版Officeを購入している場合、そのライセンスは引き続き使用可能です。
販売終了は「新規購入・更新ができない」という意味であり、購入済みライセンスが無効になるわけではありません。
ただし、新しいバージョンを追加で購入したり、更新サポート(Software Assurance)を継続したりはできないため、早めに次のステップを検討しておくことが大切です。
中小企業や教育機関が取るべき対応
中小企業や教育機関など、少数ライセンスで導入している団体にとって、今回の変更は少し大きなインパクトです。
しかし、焦る必要はありません。次のステップで対応を整理すれば問題ありません。
- 現在の契約内容を確認する
どのプログラムで、いつ契約したのかをまず整理しましょう。Microsoft Open Licenseか、Open Valueかで対応が異なります。 - サポート期限を確認する
利用中のOfficeバージョンのサポート終了日を確認し、更新スケジュールを立てましょう。 - 今後の運用方針を決める
買い切り型を希望するのか、クラウド型に移行するのかを検討します。
社員数が変動する企業や、テレワークを導入している環境ならMicrosoft 365の方が柔軟です。 - CSPパートナーに相談する
マイクロソフト認定パートナーを通じて、見積もりや契約のサポートを受けられます。
法人契約の管理方法やライセンス移行の流れも詳しく説明してもらえます。
よくある誤解と注意点
販売終了をめぐって、ネット上ではいくつかの誤解も見られます。
ここでよくある勘違いを整理しておきましょう。
- 「永続ライセンスならずっと安心」→ サポート終了後は更新が止まり、セキュリティリスクが高まります。
- 「今持っているボリュームライセンスは使えなくなる」→ 既存ライセンスは有効。ただし追加購入は不可。
- 「小規模事業者は対象外」→ 新制度(CSP)は1ライセンス単位でも契約可能。むしろ導入しやすくなっています。
- 「クラウド契約は高い」→ 長期的に見ると、更新費用やサポート対応を含めてコストメリットが出るケースもあります。
Officeボリュームライセンス販売終了の理由と今後の購入方法まとめ
ここまで見てきたように、Officeのボリュームライセンス販売終了は時代の流れによるもので、
クラウド化・サブスクリプション化という大きな潮流の中で進められた制度変更です。
重要なのは「終了=使えなくなる」ではなく、「契約や購入の形が変わった」という点です。
今後はクラウドを中心とした契約方式に移行し、より柔軟で安全な運用を目指す時代に入っています。
もし今後Officeを導入・更新する予定があるなら、
- 現在の契約を確認する
- サポート期限を把握する
- 自社に合った購入方法を選ぶ
この3点を意識しておくと安心です。
Officeボリュームライセンス販売終了は、少し寂しいニュースでもありますが、
視点を変えれば「よりシンプルで柔軟なライセンス管理への移行」でもあります。
新しい環境に合わせて、最適な形でOfficeを活用していきましょう。
