風邪をひいたとき、胸やのどに塗るだけでスーッと楽になる「ヴイックス ヴェポラッブ」。子どもの頃から家に常備していたという人も多いのではないでしょうか。そんな“ぬるタイプの風邪薬”が販売終了と聞いて、驚いた人も少なくありません。今回は、ヴイックス ヴェポラッブがなぜ販売終了になったのか、その背景や今後の再販の可能性について詳しく見ていきます。
ヴイックス ヴェポラッブ販売終了の発表内容とは？
ヴイックス ヴェポラッブを販売していたのは、大正製薬です。2025年7月14日付で同社から公式に「ヴイックス ヴェポラッブの販売を9月30日をもって終了する」という発表がありました。対象となるのは以下の3製品です。
この3商品は、2025年9月30日で大正製薬からの出荷が終了します。つまり、メーカーとしての販売が終わるということです。
ただし、ヴイックス ヴェポラッブというブランドそのものが消滅するわけではありません。世界的に「VICKS」ブランドを展開しているP&G（プロクター・アンド・ギャンブル）が、今後新たな販売体制を準備していることが明記されています。そのため、「販売終了＝完全な終売」ではなく、今後の再登場の可能性が残されているのです。
販売終了の背景にある理由
大正製薬から具体的な理由の詳細は公表されていませんが、業界の動向や市場の変化から、いくつかの要因が考えられます。
1. 製造・流通コストの上昇
医薬部外品や日用品業界全体で、原材料費・物流コスト・包装資材などの高騰が続いています。ヴイックス ヴェポラッブのような塗布型薬は、製造工程も特殊で、香料や容器にこだわりがある分コストが高くなりやすい商品です。
チューブタイプなどは容器コストが高く、生産ロットの効率が悪いことから採算性が難しくなっていたのではないかとも言われています。こうしたコスト見直しの流れの中で、国内販売を一度整理する判断に至った可能性があります。
2. 品質管理や製造体制の見直し
ネット上では、過去に一部ロットで品質確認のための出荷調整が行われていたという情報も見られます。成分の安定性や容器材質の違いが影響した可能性もあり、品質管理を徹底するために製造体制を再検討したという見方もあります。
薬機法上の基準を満たすためには成分含有量や保存安定性などの管理が厳格に求められるため、長期的な安定供給を続けるには体制の再構築が必要だったのかもしれません。
3. ブランド戦略の再編
今回の発表で注目されるのは、P&Gが今後の販売体制を整えると明記されている点です。つまり、大正製薬としての販売は終わりますが、ブランドの主導権はグローバル企業であるP&Gに移行します。
世界的には「VICKS VapoRub」として現在も販売が続いており、パッケージや処方が異なる国もあります。日本では薬機法などの関係で仕様を変更する必要があるため、国内再展開のための準備期間を取っている可能性が高いと見られます。
4. 市場ニーズの変化
新型コロナウイルス流行以降、消費者の風邪対策の習慣は変わりました。スプレー型、吸入型、貼付型など、より即効性や携帯性を重視した商品が増え、「塗るタイプ」の需要は以前ほど大きくないとも言われます。
とはいえ、飲み薬が苦手な子どもや高齢者にとって、塗るタイプのケアは今も根強いニーズがあります。そのため、形を変えて再登場する可能性も十分にあります。
SNSでも話題に 「子どもの頃からあったのに…」
販売終了のニュースが発表されると、SNSでは「うそでしょ」「あの香りがなくなるなんて」「子どもの頃、母が胸に塗ってくれた」といった声が多く投稿されました。
ヴイックス ヴェポラッブのあの独特なユーカリやメントールの香りは、多くの人の記憶に残っています。「あの匂いを嗅ぐと安心する」「眠る前に塗ってもらうとすぐ寝られた」など、単なる薬以上に“家庭の記憶”として愛されていた製品でした。
一方で、「チューブタイプは数年前から見かけなくなった」「瓶タイプもドラッグストアで在庫が減っている」という声もあり、実質的には段階的に流通が減っていたようです。すでにネット通販では価格が高騰しており、「在庫限り」「終売」などの表示が目立つようになっています。
販売終了後も再販の可能性はある？
ここで気になるのが「再販されるのかどうか」という点です。結論から言うと、再販の可能性は十分にあります。
大正製薬は「今後はP&Gが新たな販売元とのパートナーシップを進めている」と明言しており、ブランド自体を終了するつもりはないことがわかります。つまり、一時的な国内供給停止であって、体制が整い次第、再び市場に戻ってくる可能性があります。
再販される場合には、次のような変化が考えられます。
- 容器やパッケージの刷新（チューブ・ジェルタイプなど）
- 成分や配合比の見直し
- P&G主導の輸入・販売体制への移行
- 医薬部外品から化粧品扱いへの変更の可能性
海外ではスティック型やジェル型など、より現代的なフォーマットで販売されている例もあります。日本版ヴイックス ヴェポラッブも、新しい形で再登場するかもしれません。
現在入手できるヴイックス ヴェポラッブと代替品
2025年11月現在、チューブタイプはほぼ在庫が尽きており、通販サイトでも「販売終了」「在庫なし」が多く見られます。ヴイックス ヴェポラッブ 瓶50g・ヴイックス ヴェポラッブ 瓶100gは店舗によってはまだ入手できるケースがありますが、こちらも在庫限りのようです。
どうしても今のうちに確保したい人は、正規販売店や信頼できる通販サイトで早めに探しておくのがよいでしょう。ただし、転売品や使用期限切れには注意が必要です。
また、代替として検討できる製品もいくつかあります。
- タイガーバーム ホワイト：メントール系の香りで、鼻づまりや肩こりケアにも使われます。
- ヴィックス メディケイテッド ドロップ：同ブランドののど飴タイプで、のどの乾燥や咳を和らげます。
- 鼻スッキリ系ジェル・スプレー製品：塗るタイプの代替として使用感が近い製品もあります。
用途や成分が完全に同じではないため、使用目的に合わせて選ぶことが大切です。
「販売終了＝終わり」ではない
ヴイックス ヴェポラッブの販売終了は、多くの人にとって“昭和の家庭薬の終焉”のように感じられるかもしれません。しかし実際には、ブランドが消えるわけではなく、グローバル展開の一環として体制を整えるための一時的な停止です。
家庭でのケアのあり方が変わりつつある中で、ヴイックス ヴェポラッブも時代に合わせた形で再び私たちの前に戻ってくるかもしれません。
今後の動きを知りたい方は、P&Gや大正製薬の公式発表、ドラッグストア各社の入荷情報をこまめにチェックしておくと良いでしょう。
ヴイックス ヴェポラッブ販売終了まとめと今後の展望
ヴイックス ヴェポラッブ販売終了の背景には、コスト・品質・ブランド戦略など複数の要因が重なっています。しかし、これはあくまで大正製薬としての販売終了であり、ブランド自体の終わりではありません。
再販の可能性は高く、今後はP&Gが主導して新たな体制で再登場する可能性があります。長年親しまれてきたあの香りと安心感が、再び私たちの暮らしに戻ってくる日を期待して待ちたいですね。
ヴイックス ヴェポラッブが販売終了となる今、家庭薬の変化とともに、自分に合った風邪ケアの形を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
