一時期、話題をさらった「透明なミルクティー」。見た目はまるで水のようなのに、口に含むと確かにミルクティーの味がする——そんな不思議な飲み物に驚いた人も多いのではないでしょうか。
しかし、気づけば店頭から姿を消し、「販売終了したの？」と話題になりました。今回は、透明なミルクティーがなぜ販売終了となったのか、その背景と復活の可能性について掘り下げていきます。
透明なミルクティーとは？不思議な“見た目と味”のギャップ
透明なミルクティーは、サントリーの「プレミアムモーニングティー」シリーズとして発売された商品が代表的です。
見た目は無色透明の水なのに、味はしっかりミルクティー。初めて飲んだ人の多くが「脳が混乱する！」とSNSで話題になりました。
この透明感の秘密は、独自の“アロマ抽出技術”にあります。紅茶葉を直接煮出すのではなく、水蒸気で香り成分を取り込み、それを凝縮することで、色をほとんど持たない紅茶の香り成分を抽出。
さらにミルク成分も、白濁の原因となる脂肪分やタンパク質を除き、乳清ミネラルなどの“透明なミルク由来素材”を加えることで、味の再現に成功したのです。
つまり、味覚と視覚をあえて裏切る「ギミック飲料」として誕生したのが透明なミルクティーでした。
話題性抜群だった発売当初
発売当初はSNSでも大きな反響を呼び、「透明なのにミルクティーの味がする！」「不思議すぎる」と多くの投稿が拡散。
海外メディアでも「日本の透明飲料が未来的だ」と紹介され、透明なコーヒーや透明なビールなど、次々と“透明シリーズ”が登場しました。
職場や学校でも「見た目が水っぽいから飲みやすい」「オフィスでも違和感がない」といった声もあり、一定の支持を得ていたようです。
特に健康志向が高まる中、「軽やか」「カロリー控えめ」といった印象が、女性を中心に受け入れられました。
それでも販売終了となった理由
ところが、そんな透明なミルクティーも、長くは続きませんでした。なぜ人気商品になりきれなかったのでしょうか。理由はいくつかあります。
① 話題先行でリピートが伸びなかった
最初は「一度飲んでみたい」と手に取る人が多かったものの、リピーターが定着しませんでした。
実際に飲んだ人の感想には、「味は悪くないけど一度で満足」「次は普通のミルクティーでいいや」という声が多く、継続購入につながらなかったのです。
“話題性”で売れるのは一瞬。日常的に選ばれる飲料になるには、リピートしたくなる味や満足感が欠かせませんでした。
② 味と見た目のギャップが大きすぎた
透明なのにミルクティーの味がする、というインパクトは強烈でしたが、それが逆に違和感にもなりました。
「水を飲んでいるのに甘い」「視覚と味覚が一致しない」と感じる人も多く、長期的に飲み続けるには“落ち着かない”感覚を覚えた人も少なくありません。
飲料は五感で楽しむもの。見た目が味と合っていないと、心理的な満足感が得にくいという声もありました。
③ “透明”という価値が短命だった
透明飲料ブームは当時、ミルクティーだけでなく、コーヒーやラテ、ビールにまで広がりました。
しかし、どれも一時的な話題にとどまり、最終的には市場から消えていきました。
「透明＝新しい」という驚きは最初こそ強烈ですが、消費者が慣れてしまうと、それ自体が購買動機にならなくなるのです。
④ 店舗側の在庫負担と売上不振
小売店では、「話題になったのに思ったほど売れない」「値下げしても動かない」といった声もありました。
棚を占有するスペースや賞味期限の管理を考えると、売れ行きの悪い商品は扱いづらく、結果的に仕入れ停止になる店舗も増加。
メーカーとしても生産ラインを維持するコストに見合わず、販売終了の判断に至ったと考えられます。
消費者が求めたのは“透明さ”ではなく“満足感”
透明なミルクティーが失敗した最大の要因は、“新しさ”と“満足感”のバランスの難しさでした。
透明であること自体は話題性がありましたが、「また飲みたい」と思わせる強い味や満足感が欠けていた。
多くの人にとっては、“一度試したら満足する話題商品”でしかなかったのです。
また、「透明＝ヘルシー」というイメージは魅力的でしたが、実際には甘さもしっかりあり、“健康志向層”が継続的に選ぶ理由にもなりませんでした。
つまり、「水っぽいのに甘い」「見た目は軽いのに意外とカロリーがある」というギャップが、ターゲット層を絞り切れなかったとも言えます。
技術的ハードルとコストの問題
透明飲料の製造には、通常の紅茶やミルクティーよりも複雑な工程と高いコストがかかります。
香りだけを抽出し、色を取り除くには特殊な設備と工程が必要で、量産すればするほどコストが増えるという矛盾もありました。
また、乳成分を透明にするために脂肪やタンパク質を除去するため、味の厚みが失われがち。
これを補うために香料や甘味料を工夫しますが、それが「人工的な味」「香りが強すぎる」と感じられることもありました。
つまり、“透明にする”ことが目的化し、本来の「おいしさ」という飲料の本質が置き去りになってしまったのです。
透明ミルクティーはもう復活しない？
2025年現在、透明なミルクティーは主要メーカーの製造終了リストに掲載されています。
再販や復活の公式発表はなく、店頭でもほぼ見かけることはありません。
では、再び復活する可能性はあるのでしょうか。
結論から言えば、再販の可能性はかなり低いと考えられます。
その理由は、技術面と市場面の両方にあります。
まず、透明化技術はすでに出尽くしており、新たな驚きを与えるには難しい段階にあること。
そして市場的にも、消費者は「話題性」よりも「味」「健康」「コスパ」を重視する傾向が強まっており、再び“透明”というギミックだけでヒットする見込みは薄いのです。
ただし、限定復刻やコラボ商品など、話題喚起目的で一時的に復活する可能性はゼロではありません。
たとえばSNSキャンペーンや記念コラボなど、“ネタ性”を活かす形なら、再登場する可能性はあります。
透明なミルクティーが残したもの
透明なミルクティーは、飲料業界にとって“挑戦の象徴”でした。
見た目の常識を覆し、話題を生み出す——その企画力や発想力は高く評価されるべきでしょう。
実際、透明飲料の技術はその後のフレーバーウォーターや香り付き天然水などに応用され、現在の多様な飲料ラインナップにつながっています。
一方で、「話題性だけでは生き残れない」という教訓も残しました。
消費者はもう、“驚き”だけでは動かない。美味しさや満足感、安心感といった“本質的な価値”が求められているのです。
透明なミルクティー販売終了のまとめ
透明なミルクティーが販売終了した背景には、
・話題先行でリピーターが定着しなかったこと
・味と見た目のギャップによる違和感
・高コスト構造と販売不振
といった複合的な要因がありました。
とはいえ、その存在は飲料業界の実験精神を象徴するものでもあり、短命ながらも強い印象を残しました。
今後、もし再び“透明な飲み物”が登場することがあれば、それは単なるギミックではなく、味や満足感を両立させた進化版として登場してほしいものです。
かつての透明なミルクティーが生み出した驚きと話題は、今も多くの人の記憶に残っています。
“透明なのにミルクティーの味”というあの不思議な体験は、間違いなく一時代の飲料トレンドを象徴する存在だったと言えるでしょう。
