「ヒシチューブってもう売ってないの？」――最近そんな声を耳にする方も多いのではないでしょうか。長年にわたって電子工作や配線保護の定番として親しまれてきたヒシチューブ。しかし、実はこのヒシチューブ、すでにメーカーからの販売が終了しています。ここでは、販売終了の経緯や理由、そして今後どんな代替品・後継モデルを選べばいいのかを詳しく紹介します。
ヒシチューブとは？その特徴と用途
ヒシチューブ（Hishi Tube）は、熱収縮性チューブの一種です。電線や電子部品の絶縁・保護・防水などに使われる定番アイテムで、熱を加えると収縮して対象物にぴったり密着します。
素材は主にポリ塩化ビニル（PVC）で、耐熱性や絶縁性、柔軟性に優れています。電子機器の修理やケーブル整理はもちろん、オーディオ・DIY・工業用途まで幅広く使われてきました。
特にヒシチューブシリーズには以下のような種類がありました。
- VW(CE)：難燃性タイプでUL規格対応
- IE（一般管）：標準的な柔軟タイプ
- GA／GEBF：太径・特殊用途タイプ
豊富なサイズとカラーバリエーション、そして扱いやすさから、長年にわたって信頼を集めてきたブランドでした。
ヒシチューブの販売終了時期と理由
三菱ケミカルグループの公式発表によると、ヒシチューブは2024年9月末をもって全品種の販売を終了しています。受注は2023年9月に締め切られ、2024年3月には生産も完全に終了しました。つまり、現在流通している在庫をもって正式に終売という状況です。
販売終了の理由については公式には明記されていませんが、業界関係者の間では以下のような背景が推測されています。
- 材料コストやエネルギー価格の高騰
- 環境規制（RoHS・REACH）への対応負担
- 需要減少と生産ライン維持コストの増大
- 同等機能を持つ代替品の増加による競争激化
PVC素材を使う製品は環境対応が厳しくなる傾向にあり、製造コストと規制対応の両立が難しくなったことが大きな要因とみられます。
販売終了後の現状と在庫状況
ヒシチューブはすでにメーカー出荷が終了しており、現在は一部の販売店やネットショップで在庫限りの取り扱いとなっています。
例えば電子部品専門店や秋葉原の老舗ショップなどでは、在庫整理セールとして販売されているケースもありますが、サイズや色の欠品が目立ち、継続的な入手はほぼ不可能な状態です。
Amazonやモノタロウなどでも検索できますが、「在庫限り」「販売終了」「残りわずか」といった表記が増えており、今後は代替品への移行が避けられないでしょう。
ヒシチューブの代替品・後継モデル候補
では、ヒシチューブの代わりにどんな熱収縮チューブを使えばよいのでしょうか。ここでは、同等の性能や使い勝手を持つ代替製品を紹介します。
1. YLPVC 熱収縮チューブ（推奨代替品）
ヒシチューブ VW(CE) の後継候補として多くの業者が挙げているのが「YLPVC 熱収縮チューブ」です。
- 難燃性（UL224 VW-1）認証取得
- 材質：ポリ塩化ビニル（PVC）
- 使用温度範囲：−20℃～105℃
- 色展開：黒・赤・青・緑・白・黄・透明
- 収縮率：約2:1
柔軟性が高く、ヒシチューブに最も近い質感を持つとされています。特に電線絶縁や配線保護など、一般的な用途なら十分代替可能です。
2. ポリオレフィン系 熱収縮チューブ（例：G5チューブ）
ポリオレフィン素材を使用した熱収縮チューブは、現在の主流です。
- 難燃性・絶縁性・耐溶剤性に優れる
- 使用温度範囲：−55℃～125℃
- UL224／RoHS対応
- 高柔軟性タイプで加工しやすい
PVCよりも環境負荷が低く、耐久性も高いため、今後はこちらの素材が中心になると考えられます。
3. スミチューブ（住友電工）
住友電工が製造するスミチューブシリーズは、業界での信頼が非常に高い定番ブランドです。
- 電機メーカーや自動車業界でも使用実績あり
- サイズ・色バリエーションが豊富
- 難燃・絶縁性能が高く、業務用にも対応
価格はやや高めですが、品質重視の方には安心の選択肢といえるでしょう。
4. 接着剤付き熱収縮チューブ（防水タイプ）
屋外配線や水濡れ環境では、防水性能のある「接着剤付きタイプ」もおすすめです。内部に熱融着剤が仕込まれており、加熱するとチューブ内側から接着して防水・防湿性を確保します。
代替品を選ぶときのチェックポイント
ヒシチューブから他社製品へ乗り換える際は、以下の点を確認しておくと失敗を防げます。
- 材質の違いを理解する
PVCとポリオレフィンでは硬さや収縮特性が異なります。柔軟性・仕上がりの見た目も変わるため、事前に小ロットで試すのがおすすめです。 - 収縮率と収縮後の径を確認
チューブ径は「収縮前・収縮後」で大きく異なります。被覆したいケーブルの太さに対して、収縮後のサイズが適正かを必ずチェックしましょう。 - 難燃性・認証の有無
UL224やVW-1などの認証が必要な用途（業務機器、電源回路など）では、必ず認証付き製品を選ぶことが安全です。 - 使用環境を考慮する
屋外・高温・振動など、環境条件が厳しい場合は、耐候性や耐熱性を重視。ポリオレフィン系や防水タイプが向いています。
ヒシチューブ販売終了で困るケースとは？
「ただのチューブだから他でいいでしょ？」と思う方もいるかもしれませんが、実際には意外と影響が大きいのがヒシチューブの終了です。
- 旧機器や自作オーディオ機器の補修が難しくなる
見た目や硬さを合わせたい場合、他社チューブでは仕上がりが変わることがあります。 - 業務用の統一仕様が崩れる
製造ラインや修理現場でヒシチューブを前提にしていた場合、互換性の再確認が必要。 - 在庫が市場から急速に消える
人気サイズ（Φ1.5〜Φ10mm前後）はすでに入手困難な店舗も多く、今後プレミア化する可能性も。
つまり、「必要なときに買えない」というリスクを避けるためにも、早めの移行・代替品の選定が重要です。
代替品への移行をスムーズにするコツ
- 今使っているチューブのサイズと材質をメモしておく
収縮率や折径を把握しておくと、代替選定がスムーズになります。 - 複数メーカーを比較してみる
住友電工、ニチフ、JST、アズワン、ヘラマンタイトンなど、多くのメーカーが熱収縮チューブを製造しています。 - 小分けセットで試す
Amazonなどで販売されている小ロットのサンプルセットを使って、収縮性や見た目を比較しておくと安心です。 - 在庫を少し多めに確保しておく
今後の市場変化を考えると、頻繁に使うサイズ・色はまとめ買いがおすすめです。
今後の展望とヒシチューブの位置づけ
ヒシチューブは、日本の電子部品文化を支えてきた“名脇役”ともいえる存在でした。特に、昭和から平成にかけてのオーディオ・電子工作ブームを支えた製品として、多くの技術者や愛好家に親しまれてきました。
しかし、時代はポリオレフィン系素材や環境対応製品へとシフトしており、ヒシチューブのようなPVC系チューブは徐々に姿を消していくでしょう。
それでも「ヒシチューブのような質感・使い心地を再現したい」という声は根強く、今後も代替品や互換シリーズの開発が期待されています。
まとめ｜ヒシチューブが販売終了？代替品を早めにチェックしよう
ヒシチューブは2024年9月末で正式に販売終了しました。
長年の信頼性と使いやすさで人気でしたが、今後は在庫限りとなります。
代替品としては、
- YLPVC 熱収縮チューブ
- G5チューブ
- スミチューブ
が有力候補です。
DIYや修理用途で愛用してきた方は、早めに代替品を確保し、収縮感や質感をテストしておくと安心です。
「ヒシチューブがなくなって困った！」とならないよう、今のうちに自分の用途に合った後継モデルを見つけておきましょう。
