「最近ポリフルが薬局で手に入らない」「処方できないと言われた」──そんな声が増えています。過敏性腸症候群（IBS）などでポリフルを服用してきた人にとって、これはかなり切実な問題ですよね。今回は、ポリフルがなぜ販売終了・出荷停止となっているのか、そして今使える代替薬や後発品、さらにはこれからの対応方法について詳しく解説します。
ポリフルとは？どんな働きをする薬なのか
ポリフルは「ポリカルボフィルカルシウム」という成分を主成分とした薬です。
この成分の特徴は、水分を吸収・保持する性質にあります。腸内でゲル状に膨らむことで、便の水分量をちょうど良く保つ――つまり、便秘にも下痢にも対応できる“便通安定剤”として知られています。
過敏性腸症候群（IBS）では、「便秘型」「下痢型」「混合型」といったタイプがありますが、ポリフルはどのタイプにも使いやすい薬でした。
体内に吸収されず腸内でのみ作用するため、副作用が比較的少なく、長期服用にも向いているとされてきました。腹部の張りや膨満感をやわらげ、自然な排便を促してくれる点で、非常に多くの患者に支持されていた薬です。
ポリフルが販売終了・出荷停止になった理由
ここ数年、ポリフルが「出荷停止」あるいは「供給停止」となっていることが医療機関や薬局から正式に発表されています。その背景には、いくつかの複合的な要因がありました。
1. 同成分薬「コロネル」の製造中止
かつて同じ成分（ポリカルボフィルカルシウム）を含む薬に「コロネル」がありました。
しかし、2024年初頭にコロネルが製造中止となり、同成分薬が事実上ポリフルのみになったのです。その結果、全国から需要が一気に集中。供給が追いつかなくなったことが最初の引き金になりました。
2. 製造拠点のトラブルと供給体制の脆弱さ
ポリフルは国内の限られた工場で生産されています。その製造ラインで不具合が発生し、2025年に入ってから出荷停止措置が取られました。
医薬品は安全基準が非常に厳しく、わずかな不備でも再出荷には時間がかかります。製造設備の修復と品質確認が終わるまでは、供給が完全に止まってしまうのです。
3. 薬価と採算の問題
ポリフルの薬価は比較的安く、製造コストに対して利益が少ない薬でした。そのため製薬会社としても生産を維持するのが難しく、採算面から見ても長期的な供給継続が困難になっていたと考えられています。
こうした背景が重なり、ポリフルは「販売終了ではなく、供給停止」という形で市場から姿を消すことになりました。製薬会社からは「供給再開の目途は未定」とされており、安定供給の見込みはまだ立っていません。
現在ポリフルを使用している人が直面している問題
ポリフルは長年使っていた患者が多く、特に「便通の安定」を求めるIBS患者には欠かせない薬でした。突然入手できなくなると、次のような困りごとが生じます。
- 薬局で在庫がないと言われ、処方ができない
- 他の薬に切り替えたが、効き方が違う
- 便通リズムが乱れて生活の質が下がった
ポリフルは「便秘型」「下痢型」どちらにもバランスよく作用する珍しい薬です。そのため、代わりになる薬を見つけるのが難しいのが現状です。
ポリフルの代替薬や後発品はある？
ここが一番気になるところでしょう。結論から言うと、ポリフルと同じ成分（ポリカルボフィルカルシウム）を含む薬は、現在日本国内に存在しません。
つまり、「同成分・同効果」の後発品やジェネリック医薬品はなしです。
ただし、症状や目的に応じて「代替できる薬」はあります。症状のタイプ別に、医師が選ぶことの多い代表的な選択肢を紹介します。
便秘型IBS・慢性便秘の場合
- アミティーザ（ルビプロストン）
腸の水分分泌を促して便をやわらかくし、排便をスムーズにします。 - リンゼス（リナクロチド）
便秘型IBSに対して効果的で、腹痛の軽減にも期待できます。 - マグネシウム系下剤（酸化マグネシウムなど）
古くから使われる定番薬で、穏やかに便を軟化させます。
下痢型IBSの場合
混合型IBS・便通不安定型の場合
このタイプでは、便秘薬や下痢止めを症状に応じて使い分けるか、腸の動きを調整する薬を組み合わせる方法が取られます。
また、漢方薬（桂枝加芍薬湯、半夏瀉心湯など）を併用して、腸の働きを整えるケースもあります。
代替治療を考えるときの注意点
ポリフルは“水分バランス調整型”というユニークな作用を持っていたため、完全に同じ効果を再現できる薬はありません。
代替薬に切り替える際は、次のポイントを押さえておきましょう。
- 症状タイプを明確にすること
便秘寄りなのか、下痢寄りなのか、あるいは混在しているのか。
自分のタイプを把握しないと、薬の方向性を誤ってしまいます。 - 医師と相談して段階的に変更する
一気に薬を切り替えると、腸のリズムが乱れることがあります。
医師の指導のもとで徐々に調整していくのが安全です。 - 自己判断で市販薬に頼らない
便通異常は原因が複雑です。市販の便秘薬や整腸剤だけでは根本的な改善にならないケースも多いです。 - 食事・生活習慣の見直しも併行して行う
発酵食品や食物繊維、水分補給、睡眠リズム、ストレス対策――こうした日常の工夫も便通の安定に欠かせません。
ポリフル再開の可能性はあるのか？
製薬会社（ヴィアトリス製薬）からの発表によると、製造ラインの改善は進んでおり「一部の出荷再開」を模索している段階とされています。
しかし、供給量は非常に限定的で、安定供給に戻る見込みは立っていません。
全国の医療機関には「新規処方は控えるように」と通達が出されているため、少なくとも2025年内は従来のような入手は難しいと考えられます。
ポリフルを使っていた人が今できること
突然の供給停止は不安ですが、できることはあります。
- 医師に相談し、自分の症状に合った治療プランを立てる
- 複数の薬を組み合わせて、ポリフルの代わりに便通を安定させる
- 日々の排便状況を記録し、薬の効果や食事の影響を把握する
- 腸にやさしい生活習慣を整える（発酵食品、運動、十分な睡眠など）
IBSはストレスや自律神経の影響も大きいため、薬だけに頼らず、ライフスタイル全体で腸を整える意識が大切です。
まとめ：ポリフル代替薬の選び方とこれからの対応
ポリフルは販売終了ではなく、供給停止中という状態です。
同成分の後発品やジェネリックは存在せず、現時点では代替薬を組み合わせながら治療を続けるしかありません。
重要なのは、「ポリフルがないからもうダメだ」と思わないこと。
症状に応じた薬の使い分けや、漢方・生活改善によって、ポリフルが果たしていた役割を補うことは可能です。
今後、製造再開のニュースが届くことを期待しつつ、いま自分にできる最善の治療を一緒に模索していきましょう。
ポリフル 代替 品──この問題は、単なる一つの薬の話ではなく、慢性的な腸トラブルとどう付き合っていくかというテーマでもあります。焦らず、医師や薬剤師と相談しながら、自分に合った新しい選択肢を見つけていきましょう。
