「いつものミオコールスプレーが薬局にない」「処方が止まったと言われた」——そんな声が2025年に入ってから増えています。
心臓の発作時に使う緊急薬として長年親しまれてきたミオコールスプレーですが、いま市場では深刻な供給停止状態となっています。この記事では、販売中止の背景や代替品の種類、そして効果や使い勝手の違いについて、わかりやすく解説します。
ミオコールスプレーとは?効果と特徴をおさらい
ミオコールスプレーは、「狭心症発作」を和らげるために使われる舌下スプレーです。
主成分はニトログリセリンで、冠動脈を広げて心臓への血流を改善し、胸の痛みを素早く鎮める作用があります。
発作を感じたときに舌の下へシュッと1回噴霧するだけで、数十秒〜1分ほどで症状が楽になるという速効性が特徴です。
携帯しやすく、外出中でもすぐ使えることから、心臓疾患のある人にとって「命を守る常備薬」として欠かせない存在でした。
ただし使用時には注意が必要です。血圧が下がりすぎると立ちくらみやめまいが起こることがあり、ED治療薬などとの併用は禁忌とされています。医師の指導のもとで適切に使うことが大切です。
販売中止・供給停止の背景
ミオコールスプレーは、製造販売元のトーアエイヨー株式会社から供給されてきました。
ところが2025年3月、同社から「一部製品で噴霧不良を起こす部品破損が確認されたため、出荷を停止する」との発表がありました。
この不具合は容器やノズルなどスプレー構造に関わる部品の問題で、品質と安全性の観点から出荷が見合わされています。
その後も調査・改善が進められているものの、2025年11月時点で出荷再開の目処は立っていません。
医療用医薬品データベースでも「販売中止または限定出荷」とされており、全国の病院や薬局で在庫不足が続いています。
このような背景から、実質的に「販売終了」と同様の状況となっており、医療現場では代替薬への切り替えが進んでいます。
代替品として使われている薬
ミオコールスプレーのように狭心症発作を抑える薬はいくつか存在します。
その中でも、代替としてよく使用されているのが次のような薬です。
ニトロペン舌下錠0.3mg
最も代表的な代替薬です。こちらも主成分はニトログリセリンで、舌の下に置いて溶かして使います。
発作時の即効性はスプレーに比べやや遅れる場合がありますが、品質が安定しており全国の薬局で入手しやすいのがメリットです。
ニトロールスプレー(硝酸イソソルビド系)
同じ「スプレータイプ」の硝酸薬として一部の医療機関で採用されています。
成分が異なるため、作用の強さや持続時間がミオコールスプレーとは少し違います。
ただし使用感が近く、スプレーを希望する患者に向けて処方されるケースがあります。
その他の硝酸薬製剤
ニトログリセリンの貼り薬(テープ剤)や持続性の内服薬なども、狭心症のコントロール薬として用いられます。
ただしこれらは「発作予防」が主目的で、ミオコールスプレーのように「発作時にすぐ効く」タイプとは異なります。
ミオコールスプレーと代替薬の違い
ここで、ミオコールスプレーと代替薬の主な違いを整理しておきましょう。
1. 効果発現までのスピード
ミオコールスプレーは舌下の粘膜から瞬時に吸収されるため、発作時の即効性が抜群です。
一方、舌下錠は溶けるまで少し時間がかかり、効果が出るまでに30秒〜2分ほどの差が生じることがあります。
発作の重さや体質によっては、このわずかな差が体感的に大きい場合もあります。
2. 使いやすさ・携帯性
スプレーは片手で操作できるうえ、飲み込みが難しい高齢者にも使いやすいのが特徴。
一方で舌下錠は容器を開けて取り出す手間があり、緊急時に慌てる人も少なくありません。
3. 保管と品質
スプレー剤は構造上、部品の劣化や噴霧不良が起きやすいという弱点があります。
今回の出荷停止もまさにこの問題が原因です。
錠剤タイプは比較的安定しており、長期保存にも向いています。
4. 医師の指導と注意点
代替薬を使用する場合でも、医師の指示に従って使うことが重要です。
同じ硝酸薬でも、剤形や成分の違いによって効き目・副作用・併用禁忌が変わります。
特に血圧降下作用が強いため、めまいやふらつきには注意が必要です。
医療現場の対応と患者への影響
出荷停止後、全国の病院や薬局ではミオコールスプレーの処方を中止し、在庫がある場合でも「既存患者のみ対応」としている施設が多くなりました。
新規処方は原則として代替薬に切り替えられています。
医療現場からは「即効性を求める患者が多く、舌下錠では不安を感じる人もいる」「スプレー再開の見通しが立たないのが課題」といった声も聞かれます。
一方で、「舌下錠でも十分発作を抑えられる」「副作用が少ない」という意見もあり、現場では患者の症状や生活状況に合わせた柔軟な対応が進められています。
使用時の注意点と安全な代替方法
代替薬を使う際は、次のポイントを意識しておきましょう。
- 発作を感じたら、落ち着いて舌の下に錠剤を置くかスプレーを噴霧する。
- 使用後はすぐに立ち上がらず、安静にして血圧低下を防ぐ。
- 1回で効果がない場合でも、短時間に何度も使用せず医師の指示に従う。
- 他の降圧薬やED治療薬を使用している場合は、必ず医師に相談する。
- スプレーの容器は直射日光を避け、常温で保管する。噴霧不良があれば使用を中止する。
心疾患の薬は「いつも通り使える」ことが命を守るうえで非常に重要です。
万が一在庫がない場合は、自己判断せず医療機関や薬局に相談してください。
今後の見通しと再販の可能性
ミオコールスプレーの再出荷については、メーカーが原因部品の改良や安全性確認を進めている段階ですが、再開時期は未定です。
医療業界全体では、同様のスプレー製剤でも品質管理を強化する動きが見られます。
一方で、今後もスプレー剤全般における供給不安が続く可能性も指摘されています。
したがって、患者側としては「ミオコールスプレーにこだわらず、確実に使える代替薬を確保しておく」ことが現実的な対策になります。
主治医に相談すれば、症状やライフスタイルに合った薬を提案してもらえるはずです。
まとめ|ミオコールスプレーの販売中止と代替品の選び方
ミオコールスプレーは、長年にわたって狭心症患者を支えてきた即効性の高い薬です。
しかし2025年現在、噴霧不良による部品破損を理由に出荷が停止され、実質的に販売中止の状態となっています。
代替薬としては、ニトロペン舌下錠0.3mgやニトロールスプレーが代表的で、それぞれに特徴があります。
スプレーほどの即効性はないものの、効果や安全性は十分に評価されており、適切に使えば発作をしっかりコントロールできます。
ミオコールスプレーの再販が待たれる一方で、いまは「代替品を知り、正しく使う」ことが何より大切です。
もし手元の薬がなくなった、または入手できない場合は、早めに医師や薬剤師へ相談しましょう。
発作時の安心を取り戻すために、あなたに合った治療方法を見つけてください。
