「最近リパクレオンカプセルが手に入りにくい」と感じている方はいませんか？
膵臓の働きが弱くなったときに使われるこの薬ですが、供給状況の影響や病院の在庫事情などから、代わりになる薬を探している方も多いようです。この記事では、薬剤師の視点からリパクレオンカプセルの特徴と、代替として検討できる選択肢をわかりやすく解説します。
リパクレオンカプセルとは？膵酵素を補う薬
リパクレオンカプセルは、膵臓から分泌される「消化酵素」を補うための処方薬です。
有効成分は「パンクレリパーゼ」というブタの膵臓由来の酵素で、主に以下の3つの働きをサポートします。
- 脂肪の分解を助ける（リパーゼ）
- たんぱく質を分解する（プロテアーゼ）
- でんぷんなど糖質の分解を助ける（アミラーゼ）
これらの酵素が不足すると、食べたものをうまく消化吸収できず、栄養を取り込みにくくなります。
慢性膵炎や膵切除後、膵嚢胞性線維症などの「膵外分泌機能不全」に使われるのがリパクレオンカプセルです。
服用のタイミングは食直後。食事中に酵素を補うことで、消化を自然な形でサポートします。
つまり、リパクレオンカプセルは単なる「胃薬」ではなく、消化に必要な酵素そのものを補充する薬です。
リパクレオンカプセルが入手しづらい背景とは？
ここ数年、リパクレオンカプセルを含む一部の膵酵素製剤が「出荷調整」や「安定供給の遅れ」といった理由で品薄になることがあります。
製造に使われる原料が動物由来であることや、製造工程の厳格な管理が求められることから、代替の確保が難しいのが現状です。
そのため、薬局や医療機関によっては「入荷待ち」や「数量制限」が発生し、患者さんが別の薬を検討するケースもあります。
代替を考える前に知っておきたいポイント
まず理解しておきたいのは、「リパクレオンカプセルの代替品」は単純に他の胃腸薬で置き換えられるものではない、という点です。
- リパクレオンカプセルは酵素そのものを補う薬。
- 一方で、一般的な市販の整腸薬や消化薬は「消化を助ける補助的な作用」が中心。
- 胃酸の調整や腸内環境の改善などを目的としており、膵酵素の不足を直接補うことはできません。
つまり、「胃もたれ」や「食べすぎ」などの軽い不調であれば市販薬でも良いですが、
膵臓の機能低下による消化不良には、原則としてリパクレオンカプセルのような膵酵素製剤が必要になります。
リパクレオンカプセルの代替候補となる医療用薬
医師の処方が必要な薬の中で、リパクレオンカプセルと同じように膵酵素を補う薬はいくつか存在します。
それぞれの特徴を理解しておくと、医師と相談する際にスムーズです。
1. パンクレアチン製剤（例：パンクレアチン錠）
リパクレオンカプセルと同じく、動物由来の膵酵素を含む薬です。
ただし、酵素活性（リパーゼやプロテアーゼの量）は製品によって異なり、リパクレオンカプセルに比べると効き目がやや穏やかなこともあります。
食後に服用する点は共通しています。
2. パンクレリパーゼを含む他製剤
リパクレオンカプセルの有効成分と同じ「パンクレリパーゼ」を使った医療用医薬品も一部存在します。
処方の切り替えが可能かどうかは、含有量や剤形（カプセル・顆粒など）によって異なるため、主治医の判断が必要です。
3. 消化酵素＋整腸薬の併用
一部の医療現場では、膵酵素補充の効果を高めるために、整腸剤や胆汁酸製剤を併用することがあります。
腸内環境や胆汁の流れを整えることで、酵素の働きをサポートする目的です。
市販薬で代替できる？似た働きを持つ消化剤
医療用の膵酵素製剤が手に入らないとき、「市販薬で代わりにならないか？」と考える方も多いでしょう。
市販薬の中にも、軽い消化不良や胃もたれに対して消化酵素を含むものがあります。
ただし、これらは**“補助的な消化サポート”**にとどまる点を理解しておくことが大切です。
1. パンクレアチン配合の整腸薬
たとえば「ザ・ガードコーワ整腸錠α3＋」などには、消化酵素（パンクレアチン）や乳酸菌などが含まれています。
胃腸の働きを助けることで食後の不快感をやわらげる効果が期待できます。
2. 消化酵素入り胃腸薬
市販の「第一三共胃腸薬」や「新ビオフェルミン健胃消化薬」なども、でんぷん・たんぱく質・脂肪を分解する酵素を含んでいます。
一時的な食べすぎや飲みすぎによる胃もたれには有効ですが、膵機能不全に対する根本的な効果はありません。
3. 漢方系の消化サポート薬
「安中散」「六君子湯」などの漢方薬は、胃の働きを整え、消化を促す目的で使われます。
体質や症状に合えば、膵酵素補充療法の補助として取り入れられることもあります。
代替薬を選ぶときの注意点
「代替」と聞くとつい簡単に置き換えられるように思ってしまいますが、膵酵素補充療法はとても繊細です。
選ぶときには次のポイントを押さえましょう。
- 自己判断で中止・変更しないこと
膵酵素が不足すると、脂肪便や栄養失調などのリスクが高まります。
リパクレオンカプセルが手に入らない場合でも、主治医に必ず相談を。 - 含まれる酵素の量を確認する
同じパンクレアチンでも、製品によってリパーゼ活性が大きく異なります。
酵素量が少ないと、十分な消化補助効果が得られないことがあります。 - 食後に服用することを守る
酵素は食事と混ざることで初めて働くため、タイミングを誤ると効果が下がります。 - 市販薬はあくまで一時的な補助と考える
医療用と同等の効果は期待できないため、症状が続く場合は早めの受診を。
薬以外でできる消化サポートの工夫
膵酵素補充に加え、日常生活でできる工夫もあります。
薬剤師として、以下の点を意識してほしいと思います。
- 脂っこい料理を控える：揚げ物やバターなど脂質の多い食事は控えめに。
- 少量を回数分けて食べる：一度に食べすぎないことで消化の負担を軽減。
- よく噛む習慣をつける：唾液中のアミラーゼも消化を助ける重要な酵素です。
- アルコールを控える：膵臓への負担を減らすために、飲酒は節度を守る。
- ビタミン補給も意識：膵酵素不足では脂溶性ビタミン（A・D・E・K）が欠乏しやすいため、栄養バランスを整える。
こうした生活面の改善は、薬の効果をより安定させる上でも重要です。
医師・薬剤師に相談すべきタイミング
次のような症状が続く場合は、自己判断せず医療機関を受診しましょう。
- 食後に強い腹部膨満感がある
- 油っぽい便が出る（脂肪便）
- 体重減少や栄養不良が進んでいる
- 長期間下痢や軟便が続く
- サプリメントや市販薬でも改善しない
これらは膵臓の機能低下が進んでいるサインのことがあります。
放置すると、消化吸収不良による栄養障害や免疫力の低下につながるおそれもあります。
まとめ：リパクレオンカプセルの代替品を選ぶ前にできること
リパクレオンカプセルは、膵臓の酵素を直接補う医療用薬です。
代替品を考えるときは、まず「何の目的で使っているのか」を整理しましょう。
膵外分泌不全などの明確な診断がある場合は、同系統の膵酵素製剤への切り替えを主治医と相談するのが基本です。
一方、軽い消化不良や胃もたれ程度であれば、市販の整腸薬や消化酵素入り胃腸薬を一時的に使うのも選択肢の一つです。
ただし、効果には限界があり、根本治療にはならないことを理解しておく必要があります。
リパクレオンカプセルの代替を探すときこそ、自己判断せず、医療者に相談しながら自分に合った方法を見つけていくことが大切です。
薬と生活習慣の両面からサポートすることで、消化のトラブルを少しずつ改善していきましょう。
