「ATH-R70xってどうなんだろう?」
音質の良さで定評のあるオーディオテクニカの中でも、開放型リファレンスヘッドホンとしてプロから愛されているモデル。それが**ATH-R70x**です。今回は、実際の使用感や音質、装着感、長時間使用時の快適さまで、じっくりレビューしていきます。
ATH-R70xとは?プロ仕様のリファレンスモデル
ATH-R70xは、オーディオテクニカが「リファレンス」と名付ける通り、音をありのままに再現することを目的とした開放型ヘッドホンです。45mmドライバーを搭載し、周波数特性は5Hz〜40kHz。インピーダンスは470Ωと高く、ヘッドホンアンプとの組み合わせが前提の設計になっています。
一見マニアックなスペックですが、そのぶん音の正確さ、バランスの良さ、そして軽さが際立つモデル。わずか210gという重量は、開放型ヘッドホンの中でもトップクラスの軽さです。
音質レビュー:フラットで自然、正確なモニターサウンド
まず感じるのは「癖のなさ」。
ATH-R70xの音は非常にフラットで、どの帯域にも誇張がありません。派手さはないものの、音楽の細部が見えるような解像感があります。
高音はきらびやかすぎず、滑らかで刺さりが少ない。
中音はボーカルが自然に浮かび上がり、楽器の定位も安定しています。
低音は開放型としてはしっかりしており、量感こそ控えめですが、深さと締まりを兼ね備えています。
全体として、モニターヘッドホンらしい正確な再生が特徴。リスニング用途でも、ミックスチェックや作曲、オーディオ編集などの作業用途にも向いています。
音場と定位:広くて立体的、開放型らしい空気感
ATH-R70xの魅力は、音場の広さにもあります。
音が左右だけでなく前後にも広がり、空間の奥行きを感じられるのがこのモデルの強みです。
オーケストラやライブ音源を聴くと、まるでホールで聴いているような臨場感。定位も明確で、各楽器の位置関係が自然に分かるため、音源の「空間設計」を感じ取ることができます。
密閉型では味わえない、開放型ならではの「空気の抜け」が心地よい。
この点が、ATH-R70xが長年支持されている理由の一つでしょう。
装着感:軽くて優しい、まるで“かぶる空気”
ATH-R70xの装着感は、多くのレビューで高く評価されています。
210gという軽量ボディに加え、オーディオテクニカ独自の「ウィングサポート構造」を採用。頭頂部を圧迫せず、自然にフィットする感覚です。
イヤーパッドは通気性の良い素材で、長時間つけていても蒸れにくい。
締め付け感が少ないため、数時間のリスニングや作業でも疲れにくいのが魅力です。
ただし、このウィングサポートは好みが分かれます。
「浮く感じがする」「合わないとズレやすい」と感じる人もいるので、購入前に試着できるなら確認しておくのがベターです。
長時間使用でも快適?実際の使い心地
軽量で通気性が高いため、長時間使用にも強いのがATH-R70xの特徴です。
閉鎖的な密閉型と違い、耳周りがこもらず熱がこない。編集作業や在宅ワークで1日中使っても、ほとんどストレスを感じません。
また、音質の“落ち着き”も長時間使用に向いています。
高音が刺さらず、低音も暴れないため、耳の疲労感が少ない。
長く音楽を聴いてもリラックスできるバランスの良いチューニングです。
「朝から晩までつけていても平気」というユーザーの声も多く、モニター作業や学習、読書中のBGM再生などにもぴったりです。
注意点:環境と機材を選ぶヘッドホン
ATH-R70xにはいくつか注意点もあります。
- 遮音性がない
開放型のため、外の音が入るし音漏れもします。図書館や通勤時の使用には不向きです。静かな室内での使用が前提になります。 - インピーダンスが高い(470Ω)
スマートフォンやノートPCでは十分に鳴らしきれません。ヘッドホンアンプやオーディオインターフェースが必須です。 - 携帯性が低い
折りたたみ不可でサイズも大きく、持ち運びには向きません。自宅用として割り切るのが良いでしょう。
これらを理解した上で環境を整えれば、ATH-R70xのポテンシャルを最大限に引き出すことができます。
他モデルとの比較:HD600シリーズとの違い
しばしば比較されるのが、SennheiserのHD600/HD650シリーズ。
両者ともモニター系の開放型ですが、ATH-R70xはより中高域がクリアで、低音が引き締まっている印象です。
HD600が「暖かく包み込む音」だとすれば、R70xは「クールで整理された音」。
どちらが優れているというより、目的や好みによるところが大きいです。
正確なモニター用途ならATH-R70x、音楽鑑賞で心地よさを重視するならHD650という選び方もあります。
ATH-R70xは誰におすすめ?
- ミックスやマスタリングを自宅で行う人
- 長時間の作業やリスニングを快適にしたい人
- 開放型で自然な音場を求める人
- 原音に忠実なサウンドを好む人
逆に、外出先で使いたい人や低音重視のリスナーにはやや物足りないかもしれません。
しかし「自宅でじっくり音を聴く」ためのヘッドホンとしては、非常に完成度の高い一台です。
ATH-R70xレビューまとめ|音の純度と快適さを両立した名機
ここまで、ATH-R70xの音質・装着感・快適性を詳しく見てきました。
その総評を一言で言えば「長時間聴いても疲れない、正確で自然なヘッドホン」。
フラットで誠実な音づくりは、派手さよりも「信頼感」を感じさせます。
軽さと通気性で快適性も高く、作業用にも音楽鑑賞にも長く使える相棒です。
開放型の宿命として遮音性や携帯性には弱点がありますが、それを補って余りある音質と装着感。
プロの現場で愛される理由が、実際に使えばすぐに分かるはずです。
静かな部屋で、好きな音楽を、素直な音で味わいたい。
そんなあなたに、**ATH-R70x**はきっとぴったりの一台です。
