VRヘッドセットの世界がまた一歩、未来へ進んだ。
今回は、話題の「Bigscreen Beyond 2」を実際に体験し、その進化と使い勝手をじっくりレビューする。
前モデルのBigscreen Beyondは「超軽量・超コンパクトなPC VR」として高い評価を受けたが、Beyond 2ではどこが変わったのか？
実際の装着感や映像の美しさ、操作性、そして誰におすすめなのかまで、率直に語っていこう。
Bigscreen Beyond 2とは？驚きの107g、世界最軽量クラスのVRヘッドセット
Bigscreen Beyond 2は、米Bigscreen社が2025年に発表したPC接続型VRヘッドセット。
最大の特徴はなんといっても「軽さ」。本体わずか107gという驚異的な重量は、一般的なVR機の1/4程度だ。
この数字を見ただけでも、首や肩への負担が劇的に軽減されていることが想像できる。
とはいえ、軽いだけではVR体験は成り立たない。
Bigscreen Beyond 2は単に小型化しただけでなく、映像品質・装着感・視野角などあらゆる要素を磨き上げた“正統進化”モデルだ。
ディスプレイには片目2,560×2,560のマイクロOLEDを採用。
解像度はもちろん、黒の締まりや色の深みも非常に良く、細部までくっきり見える。
暗所での発色も鮮やかで、まるで現実を切り取ったような映像体験が得られる。
デザインと装着感：軽さだけじゃない「ぴったりフィット」の快適さ
実際に装着してまず驚くのは、「何も付けていないような感覚」だ。
本体が軽いだけでなく、フェイスパッドが顔の形に合わせてカスタムフィットする仕組みになっている。
Bigscreenでは購入時に顔の3Dスキャンを行い、そのデータをもとにクッションを製作してくれる。
これにより光漏れが最小限に抑えられ、没入感が格段に高まる。
ヘッドバンドのホールド感も程よく、長時間使っても蒸れにくい。
一方で、最初の装着時は少しコツが必要で、「少し締め付けが強い」と感じる人もいるようだ。
ただ、数回の使用で自然に馴染み、軽量設計の恩恵が実感できるはずだ。
初代Bigscreen BeyondではIPD（瞳孔間距離）が固定だったが、Bigscreen Beyond 2ではIPD調整機構が新たに追加。
これにより、自分の目の位置に正確に合わせられ、視界の歪みや疲労感がぐっと減った。
視線の位置がしっかり合うだけで、映像の立体感や奥行きがまるで変わってくる。
映像体験：エッジまでクリアな美しさと広がりのある視界
Bigscreen Beyond 2の映像は「クリア」という言葉が最もふさわしい。
パンケーキレンズを採用し、歪みが極めて少ない。
従来のVRでは、視野の端がぼやける“スウィートスポット”問題があったが、Beyond 2ではそれがほぼ解消されている。
**視野角は116度（対角）**と広く、両目を使っても自然な見え方が得られる。
広い視界に加え、色の鮮やかさとコントラストの高さが組み合わさり、まさに“窓の向こうに別世界がある”感覚を味わえる。
特に印象的なのは、暗いシーンでの黒の再現力。
有機ELらしい深い黒が表現されるため、夜景や宇宙空間などのシーンでは圧倒的な没入感を生む。
映像クリエイターやVRアーティストの間でも「色が正確」「作品鑑賞にも向く」と評価されている。
ただし完璧ではなく、周辺光の反射やわずかな歪みを指摘する声もある。
このあたりは、超軽量化によるレンズ構成の制約も影響していると思われる。
トラッキング性能と操作感：SteamVR対応で高精度な動作を実現
Beyond 2はスタンドアローン型ではなく、PC接続型（有線）のVRヘッドセット。
SteamVRベースステーションを使う外部トラッキング方式を採用しており、ポジショントラッキングの精度は非常に高い。
これにより、Valve IndexやHTC Viveのように、頭部の微細な動きや傾きも正確に再現できる。
手の動きはSteamVRコントローラーを使って行うため、没入感の高いVRChatやシミュレーションゲームにも最適だ。
一方で、設置や初期設定のハードルはやや高い。
ベースステーションを2台以上設置し、電源を確保する必要がある。
初めてのPC VRユーザーにはやや敷居が高いが、既にIndexやVive環境を持つ人にとってはスムーズに移行できるだろう。
接続自体はシンプルで、DisplayPortとUSBケーブルをPCに繋げば動作する。
遅延も感じにくく、映像の滑らかさは一級品。
ハイエンドGPUと組み合わせることで、リアルタイムレンダリングの美しさを最大限引き出せる。
上位モデル「Bigscreen Beyond 2e」とアイトラッキングの実力
Bigscreen Beyond 2には上位モデル「Bigscreen Beyond 2e」が存在する。
最大の違いはアイトラッキング（視線追跡）機能を搭載している点だ。
この機能により、目の動きをリアルタイムで検出し、視線の方向をアバターやアプリ内に反映できる。
VRChatなどのソーシャルVRでは、より自然な表情表現が可能になり、対話体験が格段にリアルになる。
また、アイトラッキングはフォビエイテッドレンダリング（視線追従型レンダリング）にも応用できるため、
将来的にはGPU負荷を減らしながら高品質な映像を実現する技術基盤として期待されている。
価格はBigscreen Beyond 2が約17万円、Bigscreen Beyond 2eが約20万円前後。
アイトラッキングを使う予定がないなら通常版でも十分だが、
VRソーシャルや研究用途を考えるなら2eを選ぶ価値は高い。
実際の使い勝手と使用感：長時間プレイが快適に
VR体験を長時間続けると、首や肩への負担、熱、レンズの曇りなどの問題がつきまとう。
しかしBigscreen Beyond 2は、その軽さと冷却設計により長時間使用でも驚くほど快適だ。
本体からの発熱は最小限で、内部温度上昇による曇りもほとんどない。
特に映画視聴や作業用途に向いており、「VR内で長く過ごせる」ことが最大の魅力とも言える。
音声出力はイヤホンやヘッドホンを別途接続する必要があるため、
没入感を求めるならインイヤー型や軽量ヘッドホンを組み合わせるのがおすすめだ。
ただし、すべての要素が完璧というわけではない。
軽量化と引き換えにスタンドアローン機能はなく、常にPCとの接続が必要。
また、トラッキング装置を用意する初期コストが高い点も留意すべきだ。
それでも一度体験すれば、この軽さと映像美の両立がどれほど特別かを実感できるはずだ。
コスパとおすすめユーザー層
Bigscreen Beyond 2は「ハイエンドVRを極限まで軽くしたい」ユーザーにぴったりの製品だ。
スタンドアローン型の手軽さはないが、その代わりにPC VRならではの描画力とカスタマイズ性を最大限発揮できる。
・VRChatやVTuber活動など、表情や視線表現を重視する人
・映画や3Dコンテンツを高画質で鑑賞したい人
・既にSteamVR環境を持ち、軽量化アップグレードを検討している人
こうしたユーザーにとって、Bigscreen Beyond 2は理想的な選択肢となるだろう。
逆に、初めてVRを触る人やケーブルレスで使いたい人には、Meta Quest 3のほうが向いている。
総合的に見ると、Bigscreen Beyond 2は「PC VRの完成形に一歩近づいたヘッドセット」と言える。
軽量化、視界の広さ、映像の精細さ、そのどれもがトップクラス。
価格こそ高めだが、体験価値を考えれば納得のクオリティだ。
まとめ：bigscreen beyond 2レビューで見えた小型VRの未来
今回の実機レビューを通して感じたのは、
Bigscreen Beyond 2は「軽量VRの理想形」をほぼ実現しているということだ。
たった107gの本体で、4Kクラスの映像美と広視野角を実現。
長時間でも快適に使える設計、カスタムフィットの装着感、そしてSteamVRによる正確な動作。
どれを取っても完成度が高く、VR体験の新たな基準を打ち立てたといえる。
VRはこれまで“重い・疲れる・酔う”という印象が強かった。
しかし、Bigscreen Beyond 2はその固定観念を覆す存在だ。
軽さと没入感が両立したこのヘッドセットは、次世代VRの方向性を確実に示している。
これからPC VRを極めたい人、より快適な没入体験を求める人にとって、
Bigscreen Beyond 2は間違いなく“買って後悔しない一台”だ。
