音楽好きにとって、良い音で聴く時間は何よりも贅沢なひとときですよね。今回はソニーが誇るフラッグシップウォークマン「NW-WM1ZM2」を実際に使って感じた特徴や使用感を、できるだけリアルにお伝えしていきます。価格もサイズも“本気”のプレーヤー。その実力はいかほどなのか、じっくり見ていきましょう。
圧倒的な存在感を放つフラッグシップDAP
NW-WM1ZM2は、ソニーのSignature Seriesに属するハイエンドのデジタルオーディオプレーヤー(DAP)です。ウォークマンと聞くとコンパクトな携帯プレーヤーを思い浮かべる人も多いですが、このモデルは明らかに別次元。まず持った瞬間に感じるのがその“重厚さ”。本体の素材には99.99%純度の金メッキ無酸素銅が使われており、手にするとズシリとした約490gの重量感があります。
この素材は単なる見た目の高級感だけでなく、音質面でも意味があります。ソニーによると、銅筐体は電気的な安定性を高め、デジタルノイズを抑える効果があるとのこと。つまり、音の土台をより静かに整えるわけです。外観の美しさと機能が完全に一体化した設計です。
デザインと操作性:アナログの心地よさとデジタルの便利さ
ディスプレイは5インチのHD解像度。スマホ並みに見やすく、タッチ操作もスムーズです。再生や音量などの物理ボタンは側面に配置され、目視しなくても指の感覚で確実に操作できるようになっています。このボタンの押し心地がまた絶妙で、「機械を操る楽しさ」を感じられるのが魅力です。
OSはAndroidベース。従来のウォークマンとは違い、Wi-Fi経由でストリーミングサービスを直接使えるようになっています。SpotifyやApple Music、Amazon Musicなどもアプリを入れればすぐに利用可能。スマホを経由せず、高音質でお気に入りの曲を再生できるのは非常に便利です。
一方で、Androidならではの“もっさり感”を感じる場面も。アプリの切り替えや起動速度はスマートフォンほどサクサクではなく、あくまで音楽再生を最優先にした設計という印象です。
音質:静寂の中に広がる空間と厚みのある音
このモデルの最大の魅力は、何と言っても「音」。再生を始めた瞬間から、音の密度と静けさに驚かされます。背景が圧倒的にクリアで、音がスッと空間に浮かぶように感じられるのです。音の粒立ちは細かく、ボーカルが前に出ながらも楽器の一音一音がしっかりと存在感を持っています。
S-Master HXというソニー独自のデジタルアンプを搭載し、PCM 384kHz/32bitやDSD 11.2MHzなどのハイレゾ音源にネイティブ対応。さらにDSDリマスタリング機能をオンにすれば、通常の音源でもアナログ的な柔らかさが加わり、自然な響きに変化します。
特に印象的なのは音の“余韻”です。クラシックの弦の震えや、ジャズのハイハットの抜け方など、スタジオの空気感まで伝わってくるようなリアリティがあり、まさに没入感そのもの。ヘッドホンやイヤホンの性能を最大限に引き出してくれます。
バランス出力と接続性の進化
本体上部には4.4mmバランス出力と3.5mmシングル出力を搭載。高級ヘッドホンやリケーブル派のユーザーには嬉しい仕様です。特に4.4mmで接続したときの音の立体感は別格。左右の分離が良く、音場が一気に広がります。
また、Bluetooth機能も進化しており、LDACやaptX HDなどの高音質コーデックに対応。ワイヤレスでも音質を犠牲にせず楽しめるのは、現代的なウォークマンらしいポイントです。ただし、やはり有線接続のほうがこのモデルのポテンシャルを引き出せます。
ストリーミング時代のウォークマンとして
NW-WM1ZM2はローカル再生に加え、ストリーミングとの親和性も高めています。Wi-Fi接続でハイレゾ音源を直接配信するサービスにも対応しており、アプリ次第で音源の選択肢が大幅に広がります。スマホでは難しい高音質再生を、これ一台で完結できるのは大きな魅力です。
ただ、Android搭載により起動時の処理やアップデートなどが入る点は注意が必要。純粋なオーディオプレーヤーに比べると、やや扱いに“デジタル機器らしさ”が残っています。それでもストリーミング再生でこの音質を体験できるのは、他社モデルでもなかなかありません。
バッテリーと実使用感
バッテリー持ちは使用環境によりますが、FLACやMP3などの再生で約40時間前後、DSDやストリーミングでは20〜25時間程度が目安です。連続再生時間は十分で、出先でも充電を気にせず使えます。
一方で、重量は約490gとかなりヘビー。ポケットに入れて気軽に持ち歩くタイプではありません。リスニングルームやカフェなど、腰を据えてじっくり音楽を楽しむ場面で真価を発揮します。持ち運びより“据え置き的ポータブル”という表現がしっくりきます。
競合モデルとの比較
同シリーズの「NW-WM1AM2」と比べると、NW-WM1ZM2は明らかに音の厚みと深みが違います。筐体素材の違いがそのまま音に現れており、NW-WM1AM2が軽やかで爽やかな鳴り方をするのに対し、NW-WM1ZM2はどっしりと安定した音像を描きます。
Astell&KernやFiioなど、他ブランドのハイエンドDAPと比較しても、NW-WM1ZM2の音の自然さと中域の滑らかさは際立っています。派手さや刺激は控えめですが、長時間聴いても疲れにくく、音楽そのものを深く味わえるタイプです。
実際に使って感じたメリットと気になる点
良かった点
- 音の立体感と情報量が圧倒的
- 物理ボタンやUIが洗練されていて操作が心地よい
- Wi-Fiとストリーミング対応で利便性が高い
- 長時間のリスニングでも耳に優しい音質
気になった点
- 重くて持ち運びには不向き
- Androidの動作がやや緩慢な場面あり
- 価格が非常に高価(50万円前後)
それでも、音楽体験を極めたい人にとってはこの上ない満足感があります。価格に見合う価値を感じる人が多いのも納得です。
NW-WM1ZM2を選ぶべき人
このウォークマンは、単なるガジェットではなく“音を愛する人のための楽器”です。スタジオクオリティの音をそのまま持ち歩きたい人、イヤホンやヘッドホンの性能を限界まで引き出したい人には最適。逆に「気軽に音楽を聴きたい」という用途なら、もう少しライトなモデルでも十分かもしれません。
音質を優先するか、携帯性を取るか。その判断軸を明確にしておくと、このモデルの価値がより理解できます。
まとめ:NW-WM1ZM2の特徴と使用感を詳しくレビューで紹介
NW-WM1ZM2は、ウォークマンの名にふさわしい究極の音楽再生機。素材、回路設計、アンプ、すべてが“音のためだけに存在する”構造です。Androidによる柔軟性と、ソニー独自のオーディオ技術が融合したことで、ハイレゾもストリーミングも極上の音で楽しめます。
確かに高価で重い。それでも一度聴けば、その理由がすぐにわかるでしょう。音楽を“聴く”というより“感じる”体験を求めるなら、NW-WM1ZM2はまさに理想の一台です。
