カワサキの「W800」は、見た瞬間に心を掴まれる“レトロクラシック”な佇まいが魅力のバイク。
けれど、いざ購入を考えると気になるのは「実際の乗り味」や「現代の道路環境に合うのか」という点ですよね。
今回は、実際にW800に乗った感覚を中心に、その魅力と欠点を包み隠さずお伝えします。
W800とは?クラシックバイクの系譜を受け継ぐ1台
W800は、1960年代の名車「W1」のスピリットを現代に受け継いだモデル。
2011年に登場し、一度生産終了を経て2019年に復活。排気量773ccの空冷並列2気筒エンジンを搭載しています。
見た目は昔ながらのクラシック、でも中身はインジェクションやABSを備えた“今の時代に乗れるクラシック”です。
クロームメッキの輝き、ティアドロップタンク、スポークホイール。
どの角度から見ても“本物感”が漂う仕上がりで、所有欲を満たしてくれる。
ただ「見た目がクラシック」なだけでなく、細部の造形にも一貫した美意識が感じられます。
穏やかでトルクフルなエンジンフィール
W800のエンジンを一言で表すなら「穏やか」。
低回転からしっかりトルクが出るので、街乗りでも扱いやすく、発進からスムーズに進んでいきます。
アクセルを少しひねるだけでトコトコと前へ進む感覚は、最近の高回転型エンジンにはない心地よさです。
360°クランクならではの鼓動感が体に伝わり、まるで機械と呼吸を合わせるような感覚。
回転を上げてもギスギスせず、どこまでも自然なフィーリングが続く。
一方で、スポーツ走行を求める人には“物足りなさ”を感じるかもしれません。
パワフルに吹け上がるタイプではなく、「味わうバイク」という位置づけです。
乗り心地とポジション:リラックスして乗れる理想的な姿勢
乗車ポジションは非常に自然。
広く低めのシートと、やや手前に来るハンドル位置が絶妙で、長時間のツーリングでも疲れにくい設計です。
特に身長170cm前後のライダーには“しっくりくる”という声が多いです。
足つきも良く、取り回しもしやすい。
車体重量はやや重め(約226kg)ですが、重心が低いため扱いにくさを感じません。
信号待ちやUターンでも安定感があり、初心者にも優しい挙動を見せます。
サスペンションは柔らかめで、街中やワインディングでの乗り心地は快適。
ただし高速道路ではややフワつきを感じることがあり、100km/hを超えると安定感が少し落ちます。
それでも、のんびり走るなら全く問題なし。
この「ちょうどいい穏やかさ」がW800の個性です。
ハンドリングと走行性能:クラシックゆえの特徴
W800のハンドリングは、19インチのフロントホイールが特徴的。
この影響で、最新スポーツモデルのようなクイックな動きはしません。
コーナリングでは「スッ」と寝かせるというより、「スルッ」と自然に曲がる感覚に近いです。
慣れればこの安定感が心地よく、ワインディングでも無理のないペースで流せます。
急な切り返しや攻めた走りを求めると限界は見えるものの、穏やかなツーリングなら十分に楽しめます。
実際、オーナーの多くは“攻める”よりも“流す”ライディングを好む傾向にあります。
デザインの完成度と所有感
W800の魅力を語る上で欠かせないのが「デザイン」。
クロームの輝きと深みのある塗装、エンジンのフィンの美しさ、そしてクラシックなメーター。
どこを見ても作り込みが丁寧で、「本当にこれが現行車なのか」と思うほど。
特にガレージに停めて眺めているだけで満足感がある。
街中でも視線を感じることが多く、信号待ちで他のライダーに話しかけられることもあるとか。
W800は「乗るバイク」であると同時に「飾って楽しむバイク」でもあるのです。
また、現代のLEDライトやABSを自然に溶け込ませており、
“古さ”ではなく“味”として完成しているのが好印象。
カワサキらしい誠実なモノづくりが感じられます。
実際に感じるW800の欠点・注意点
完璧に見えるW800にも、いくつかの弱点はあります。
まず、加速の鋭さや最高速を求める人には向かないという点。
トルクは豊かですが、回転を上げても爆発的な加速はありません。
高速道路での追い越しでは少し余裕が欲しくなる場面もあります。
また、クラシックな構造ゆえにフロントの切り返しはやや鈍め。
ワインディングで軽快に振り回すというよりは、落ち着いたライディングを意識する必要があります。
そしてもう一つがクロームパーツのメンテナンス性。
屋外保管だとサビやすく、こまめな磨きや防錆対策が欠かせません。
この手間を「面倒」と感じるか、「手をかける楽しみ」と感じるかで評価が変わります。
長く乗るほど味が出る「育てるバイク」
W800は、最初から派手な刺激を与えてくるタイプではありません。
どちらかと言えば、乗れば乗るほど味が染みてくる“スルメ的なバイク”。
エンジンの鼓動やステップに伝わる微妙な振動、風を感じながら流す時間…。
それらすべてが「バイクに乗る喜び」を思い出させてくれます。
実際、5年以上乗り続けているオーナーの多くが「手放せない」と語っています。
大きな故障が少なく、メカ的な信頼性も高い。
走りよりも“時間を共にする満足感”を求める人にぴったりの1台です。
W800はどんな人におすすめ?
W800を選ぶべきなのは、次のようなタイプのライダーです。
- スピードよりも“味”を求める人
- ゆったりツーリングを楽しみたい人
- クラシックデザインが好きな人
- メンテナンスを楽しめる人
- バイクを“相棒”として長く付き合いたい人
逆に、サーキット走行やハイペースなワインディングを重視する人には物足りないでしょう。
そうした人はZ900RSや他のモダンクラシック系を検討するのも一案です。
まとめ:W800の乗り味は「心で走る」クラシック
W800の魅力は、スペック表では語れません。
数字ではなく、乗った瞬間の「ゆるやかな時間」こそがこのバイクの本質です。
速さを求めず、景色や鼓動を味わいながら走る――そんな体験がしたい人にとって、W800は理想の相棒になるはず。
最新技術で固められたバイクが増える中、
W800はあえて“手で触れ、心で感じる”アナログな楽しみを残してくれています。
クラシックバイクの魅力を今に伝える1台として、これほど純粋に乗る喜びを感じさせてくれるバイクはなかなかありません。
W800 レビュー:最後にもう一度、その魅力を言葉にする
W800は、速さよりも穏やかさ、便利さよりも情緒を大切にした1台。
街を流しているだけで心が満たされ、乗るたびに“原点回帰”できる。
その乗り味はまさに「人間らしさ」を感じさせるバイクです。
クラシックなデザイン、柔らかい鼓動、落ち着いたトルク。
どれを取っても派手ではないけれど、じわじわと心に残る。
“走る芸術品”と呼ぶにふさわしい、W800の世界をぜひ一度体感してみてください。
