「値上げを伝えなければならない…でも、どうやって書けばお客様を怒らせずに、理解を得られるんだろう?」
もしあなたが今、そんな不安や悩みを抱えているなら、この記事がその一助となるはずです。価格改定は、どんなに小さなお店や個人事業主でも、いつかは直面する経営上の決断ですよね。
実は、値上げの「伝え方」には明確なポイントと、使える文例があります。それを押さえれば、お客様からの信頼を保ちながら、必要な価格調整を前向きに進められるんです。
今日は、そんな値上げ案内文の書き方の基本から、すぐに使える例文とテンプレート、そして絶対に避けるべき失敗例まで、具体的にご紹介します。
なぜ「伝え方」がこんなにも大切なのか?
突然ですが、皆さんはこれまでに、特に説明もなく値段だけが上がっている商品やサービスに出会って、がっかりしたり、不信感を抱いた経験はありませんか?
お客様の立場に立つと、値上げは単なる「値段が上がる」という事実だけが問題なのではありません。その背景に「この会社は誠実だろうか」「私たちのことを考えているのだろうか」という、信頼関係そのものが問われる瞬間なのです。
だからこそ、しっかりとした説明と丁寧な言葉遣いが求められます。良い伝え方は、お客様に「やむを得ない事情があるんだな」と理解を促し、場合によっては「応援しよう」という気持ちにさえつながります。
逆に、悪い伝え方は、長年築いてきた信頼を一瞬で崩し、最悪の場合、SNSで炎上してしまうことも…。
まずは、どんなビジネスにも共通する、値上げを伝えるときの4つの基本原則を確認しましょう。
誠実な値上げ案内の4つの黄金ルール
- 理由は「具体的に、正直に」
「諸経費の高騰により…」というありきたりな表現だけでは、お客様の心には響きません。どこが、どれくらい高騰しているのか、可能な範囲で具体的に示しましょう。例えば、「主要な原料である小麦の国際価格が前年比で約30%上昇したため」や、「全国的な最低賃金引き上げに伴う人件費の見直しのため」といった形です。具体的であればあるほど、嘘偽りがなく、誠実な印象を与えます。 - 「お知らせ」ではなく「ご案内・お願い」の姿勢で
一方的に「お知らせします」と伝えるのではなく、「ご理解いただけますと幸いです」「何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます」といった、お客様に理解を求め、許可を請う姿勢を見せることが大切です。この姿勢の違いが、お客様の受け止め方を大きく変えます。 - 十分な「猶予期間」を設ける
明日から値上げです、ではお客様は計画が立ちません。特に定期購入や継続的なサービスでは、少なくとも1ヶ月前、取引先などへのビジネス上の通知であれば、2〜3ヶ月前には伝えるのがマナーです。この猶予期間は、お客様にとっての心の整理期間でもあります。 - 感謝の気持ちを忘れずに
値上げを伝える文章の一番最初と一番最後には、必ず日頃の感謝の気持ちを書きましょう。値上げという「負担をお願いする」内容だからこそ、その前後でしっかりと「支えていただいている感謝」を伝えることで、バランスが取れたメッセージになります。
シーン別・すぐに使える値上げ案内文の例文
ここからは、実際のビジネスシーンに合わせて、そのままコピーして一部を変更するだけで使えるテンプレートをご紹介します。
1. オンラインサービスやサブスクリプション向けの例文
メールやアプリ内通知で送ることを想定した例文です。デジタルサービスのお客様は情報に敏感ですから、特に明確さが求められます。
件名:【重要】サービス「○○」の料金改定に関するご案内
いつも「○○」をご利用いただき、誠にありがとうございます。
平素より格別のご愛顧を賜り、心より御礼申し上げます。
さて、この度は誠に恐縮ではございますが、サービスを継続的により良いかたちでお届けするため、【YYYY年MM月DD日】 より、月額利用料金を下記の通り改定させていただくこととなりました。
【改定内容】
旧料金:月額 1,000円(税込)
新料金:月額 1,200円(税込)
今回の改定に至りました背景には、主に以下の2点がございます。
- サービスの基盤となるサーバーおよびセキュリティコストの継続的な上昇
- お客様により便利にご利用いただくための新機能開発・保守に係る投資
私たちは、価格以上の価値を提供し続けることをお約束し、引き続き機能改善と安定したサービス運用に全力で取り組んでまいります。
【YYYY年MM月DD日】 までにお申し込みいただきますと、現行の料金プランをあと6ヶ月間ご利用いただけますので、ご検討いただければ幸いです。
ご不明な点がございましたら、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
引き続き「○○」をどうぞよろしくお願い申し上げます。
2. 飲食店や小売店(対面接客)向けの例文
店頭のポスターや、SNS、メルマガでの告知を想定しています。お店の温かみや、お客様との距離の近さを感じられるような文章がおすすめです。
【大切なお知らせ】一部メニュー(商品)の価格改定について】
いつもご来店(ご利用)いただき、まことにありがとうございます。
日頃のお引き立てに心より感謝申し上げます。
さて、長らく価格を据え置きでご提供してまいりましたが、昨今の急激な食材原価(原材料費)および光熱費の高騰により、大変心苦しいお願いではございますが、【〇月〇日(曜日)】 より、一部のメニュー(商品)の価格を改定させていただくこととなりました。
今回の改定は、お客様にこれまでと変わらぬ、あるいはそれ以上の「品質」と「安心」をお届けし続けるためにどうしても必要な決断でございます。
お客様にはご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解のほど、お願い申し上げます。
今後とも、変わらぬご愛顧を賜りますよう、スタッフ一同、より一層の努力をしてまいります。
(具体的に価格が変わるメニュー名を列挙する場合は、ここに箇条書きで明記すると親切です)
3. 取引先(BtoB)へのビジネス文書向けの例文
契約書の変更を伴うこともある、正式な通知です。丁寧さと共に、ビジネスライクな正確さと明確さが求められます。
件名:製品「○○」の価格改定のご案内とお願い
株式会社○○
営業部 部長 △△ △△ 様
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、突然のご連絡となり、大変恐縮ではございますが、長らくご購入いただいております製品「○○」について、誠に遺憾ながら価格を改定させていただくこととなりましたので、ご案内申し上げます。
【改定詳細】
- 改定対象製品: ○○シリーズ全品
- 改定実施日: YYYY年MM月DD日受注分より
- 改定内容: カタログ価格を約10% 値上げさせていただきます。
(新旧価格対照表を別紙または添付ファイルにてご確認ください)
この度のやむを得ない改定は、昨今の世界的な半導体不足および特殊金属の市場価格高騰が継続しており、現行価格での製造・供給の維持が極めて困難な状況に至ったためです。
貴社には多大なご迷惑とご心配をおかけし、心からお詫び申し上げます。
つきましては、何卒、厳しい経営環境をご賢察いただき、本価格改定をご了承いただけますよう、伏して願い上げます。
引き続き、製品品質の維持・向上に努め、貴社により一層ご満足いただけるよう尽力してまいります。
ご不明な点がございましたら、下記担当まで何なりとお問い合わせください。
絶対に避けたい!値上げ案内の失敗あるある
ここまで良い例を見てきましたが、逆に「これはまずい」というパターンも知っておくと安心です。
- ステルス値上げ: 何のアナウンスもなく、いつの間にか値段が上がっている。これは不信感の最たるものです。
- 偉そうな通知: 「〇月〇日より値上げします。以上。」のような、一方的で高圧的な文章。お客様はお客様を「お客様」と思っていないと受け取られかねません。
- 理由が曖昧すぎる: 「経費の都合により」だけでは、お客様は「経費削減努力をしていないのでは?」と疑ってしまいます。
- 謝罪がない、あるいは謝罪ばかり: お詫びの気持ちは必要ですが、「申し訳ありません」の連発ではビジネスの自信が感じられません。「お詫び」と「これからも提供する価値への自信」 のバランスが大切です。
- SNSや口コミでの反応を無視する: 値上げ案内を出した後は、必ずお客様の反応を見守りましょう。不満の声があれば、誠意を持って(ただし感情的にならずに)対応する姿勢を見せることで、信頼回復のチャンスになります。
より理解を得るための応用テクニック
基本の形ができたら、さらにもう一歩、お客様の心に寄り添う技をいくつかご紹介します。
- 旧価格のラストオーダー期間を設ける: 「〇月〇日までにお申し込みいただければ、現行価格が適用されます」という猶予を与えることで、お客様に選択肢と心の余裕を与え、突き放された感じを和らげます。
- セットで「価値アップ」を伝える: 値上げと同時に、新しいサービスや機能、包装のリニューアルなどをお知らせする方法です。単なる「コストアップ」ではなく、「より良いものへのアップグレード」という前向きな文脈を作り出せます。
- 値上げ理由をビジュアル化する: SNSやブログで告知する際には、原料の国際価格の推移グラフや、光熱費の請求書の比較(個人情報は伏せて)など、視覚的に「仕方ない」理由を説明するのも効果的です。
あなたの誠意が、信頼を築く
値上げは確かにデリケートな話題ですが、それは単なる「値段の変更」ではありません。あなたがお客様とどのような関係を築き、どのような未来を約束したいかを伝える、貴重なコミュニケーションの機会でもあるのです。
今回ご紹介した値上げ案内文の例文とテンプレートを参考に、あなたのビジネスらしい誠実なメッセージを作ってみてください。丁寧で誠実な伝え方は、一時の売上以上に、あなたのビジネスを支えてくれるお客様との、かけがえのない信頼関係を守り、強くしてくれるはずです。
最初に感じた不安が、少しでも軽くなり、前向きに伝える準備ができたなら、これ以上の喜びはありません。どうか、必要な一歩を自信を持って踏み出してください。
