こんにちは。そろそろ車検の時期で自賠責保険の更新を考えている人も多いのではないでしょうか。ふと気づくと、自賠責保険料が値上がりしていることに気づいた人もいるかもしれません。実は、2026年には13年ぶりに保険料が約5%前後の引き上げが検討されているんです。
「え、事故って減ってるんじゃないの?」
「どうして今、値上げなの?」
「これからもどんどん上がっていくの?」
そんな疑問の声が聞こえてきそうです。確かに、自動ブレーキの普及などで交通事故件数は減少傾向にあります。でも、保険料が上がる理由があるんです。それは単純な話ではなく、過去から現在、そして未来にかけての複雑な事情が絡み合っているからです。
この記事では、自賠責の値上げ理由を紐解きながら、なぜ私たちの負担が増えるのか、その背景にある「三重の構造的要因」について詳しく説明していきます。最後まで読めば、値上げの本当の理由と、これから私たちがどう向き合っていけばいいのかが見えてくるはずです。
値上げの伏線:30年も続いた国の「借りパク」問題
まず、意外と知られていない「過去の出来事」から話を始めましょう。今から約30年前の1994年と1995年、当時の大蔵省(今の財務省)は、ある大きな決断をしました。自賠責保険の一部が積み立てられている「自動車安全特別会計」から、1兆1200億円もの巨額のお金を「借り入れ」、国の一般会計に繰り入れたんです。
このお金は、重度の後遺障害を負った方の療護施設や在宅ケアなど、交通事故被害者を支援するための大切な財源でした。政府は「2000年度までに全額返済する」と約束しましたが、結局この約束は守られず、返済は長年にわたって先送りにされてきました。2018年になっても、元利合わせて約6000億円近くが返されていない状態だったのです。
被害者の方やその家族からは「借りパク」「ネコババ」と厳しく批判され続けてきたこの問題。実はこれが、現在の値上げ問題に影を落としているんです。
なぜかというと、この特別会計のお金が足りなくなってきたから。2023年には、積立金の取り崩しが始まり、「早ければ10年以内に枯渇する可能性がある」とまで言われました。そこで国が取った手段は、新たな「賦課金」を保険料に上乗せすることでした。つまり、国が長年返済を先延ばしにしてきたツケが、結局は私たちの保険料負担という形で返ってきてしまったというわけです。
ただ、ここにひと筋の希望の光も見えています。2025年末、政府はこの未返済金を一括で返済する方針を明らかにしました。これは大きな一歩で、将来的には保険料引き下げにつながる可能性も出てきました。でも、過去の滞りが今の負担増圧力の一因となっていたことは、覚えておきたい事実です。
事故は減っているのに、なぜ保険料は上がる?そのカラクリ
「ニュースで交通事故が減っているって聞くのに、どうして保険料が上がるの?」
この疑問、とてもよくわかります。実はここに、値上げの最も核心的な理由が隠れています。
確かに、自動ブレーキなどの安全技術の普及で、事故の「件数」は減少傾向にあります。でも、問題は「1件あたりの事故にかかるお金」がものすごく増えていることなんです。
どういうことか、具体的に見ていきましょう。
まず、医療費の高額化です。事故の治療には最新の医療技術が使われることが増え、それだけ費用がかかります。また、高齢の被害者が増えると、治療期間が長引いたり、後遺障害が重くなりやすかったりするため、入院費や介護費用もどんどん膨らんでいきます。
次に、車の修理費がべらぼうに高いという現実があります。最近の車には、カメラやレーダー、超音波センサーといった先進運転支援システム(ADAS)が当たり前のように搭載されていますよね。これらは確かに安全ですが、ちょっとした衝突でも、これらの高価で繊細な部品が影響を受けることがあります。
昔なら「板金と塗装」で済んだような軽い傷でも、今はセンサーの校正(キャリブレーション)に特殊な設備と技術が必要で、修理に時間もお金もかかるようになりました。車が「走る精密電子機器」と化していることが、事故コストを押し上げている大きな原因です。
さらに、保険会社自身の運営コスト(人件費やシステム維持費)も物価上昇の影響で増え続けています。自賠責保険は基本的に利益を出さない仕組みなので、こうしたコストの上昇も保険料に反映せざるを得ないのです。
つまり、「事故の件数減」と「1件あたりのコスト増」が綱引きをしていて、残念ながら後者が前者に勝っている。これが保険料引き上げの基本的なカラクリなんです。安全技術の進歩が、皮肉にも事故の経済的負担を重くするという、ちょっと複雑な状況が生まれています。
もうひとつの負担増:「賦課金」という名の新たな課題
自賠責保険料の中身をもう少し詳しく見てみると、値上げのもう一つの理由が見えてきます。保険料は主に、「純保険料」(将来の保険金支払いに充てる部分)と「付加保険料」(保険会社の運営費など)から成り立っています。
実は2023年、事故減少の効果を反映して、この「純保険料」部分は全国平均で12.4%も引き下げられました。その結果、保険料全体も平均11.4%値下がりしたんです。良いニュースでしたよね。
でも、その一方で新たに加わったものがあります。それが「被害者保護増進等事業に充当するための賦課金」です。名前は難しいですが、要は重度の後遺障害を負った方への支援を充実させるための新しいお金で、保険料に上乗せされるようになりました。自家用乗用車で言うと、年間125円ほどの負担増です。
この賦課金の導入は、重要な問題を二つはらんでいます。
一つ目は、特別会計の積立金が逼迫している事実を浮き彫りにしたこと。本来なら積立金の運用益などで賄うべき支援事業を、新たな保険料上乗せでまかなわざるを得なくなったのは、健全な状態とは言えません。
二つ目は、保険料の決め方に「事故リスクの計算」以外の要素が強く入り込んだこと。自賠責保険が持つ社会保障的な機能が強化される一方で、その財源を利用者である私たちに頼る構造は、今後も負担増が続くのではないかという不安を生み出しています。
2026年の値上げ議論は、単なる事故リスクの再計算だけでなく、この賦課金の必要額や、政府による一括返済後の特別会計の健全性も含めた、大きな財政の見直しの場になるのです。
実は自賠責だけじゃない!任意保険も大幅値上げの波
自賠責保険の動きを理解する上で、ぜひ知っておいてほしいことがあります。それは、今、任意保険も過去最大級の値上げが行われているということです。
損害保険会社各社は、2026年1月以降、平均で6%から8.5%もの保険料引き上げを発表または実施しています。この背景にあるのは、自賠責保険と全く同じ問題です。
- 先進運転支援システム(ADAS)搭載車の修理費の高騰
- 人件費や部品価格の上昇
任意保険には国の積立金問題は関係ありませんが、その分、自動車事故の経済的現実をダイレクトに反映する商品です。だからこそ、修理コスト高騰という根本的な圧力が、より早く、より大きく保険料に跳ね返ってきているんですね。
私たちドライバーにとっては、これは二重の負担増としてのしかかってきます。自賠責保険は対人賠償の基礎部分を、任意保険はそれ以上の高額賠償や対物・車両損害をカバーするもの。両方が値上げされれば、家計や事業のコストに直撃します。
重要なのは、自賠責も任意保険も、同じ社会経済的な土台の上に成り立っているということ。自動車事故にかかるコストが社会的に重くなっているという根本原因は共通で、それが両方の保険料を押し上げているのです。
2026年、結局どうなるの?審議会の行方とこれから
では、肝心の2026年度の保険料は最終的にどう決まるのでしょうか?
決定の場は、金融庁にある「自動車損害賠償責任保険審議会(自賠審)」です。ここで、損害保険料率算出機構が提出した改定案について、専門家たちが公益の観点からじっくり審議します。
現在、審議会をめぐる情報は少し複雑です。一方では、業界団体と金融庁が5%前後の値上げで調整しているという報道があります。でも別の観測では、逆に「引き下げられる可能性」も指摘されているんです。
その理由の一つが、保険会社の事務処理コスト(社費率)の算定基準が14年ぶりに見直されること。IT化による効率化が進んでいるため、この部分が改善されれば、保険料を下げる材料になります。
また、最近街中でよく見かけるようになった電動キックボード(特定小型原付)の事故データに基づく料率の再検討も議題に上がるでしょう。
つまり現在は、
- 値上げ要因(事故単価の上昇、賦課金の必要額)
- 値下げ要因(政府返済による財政改善、事務コスト見直し)
が綱引きをしている状態です。審議会ではこれらの要素をすべて天秤にかけ、制度の長期的な安定と私たちの負担の公平性のバランスを探ることになります。
政府による特別会計への一括返済が実現すれば、それは確かに将来の保険料抑制に向けた希望の光です。ただ、それがすぐに値下げにつながるかどうかは、まだわかりません。
まとめ:私たちが知っておくべきこと、できること
ここまで、自賠責の値上げ理由について詳しく見てきました。まとめると、この値上げは以下のような複雑な要因が絡み合って起こっていることがわかります。
- 過去30年にわたる国の積立金流用問題が財政基盤を弱め、新たな負担(賦課金)導入の一因となった
- 事故件数減少を上回る「1事故あたりのコスト高騰」が続いている(医療費の増加、ADAS車の高額修理費)
- 自賠責保険の社会保障的機能の財源を、利用者からの賦課金に依存する構造が定着しつつある
- 同じ問題が任意保険の大幅値上げにも表れており、ドライバーへの負担は二重になっている
では、私たちはこの状況にどう向き合えばいいのでしょうか?
まず一番大切なのは、やはり「事故を起こさない、巻き込まれない」ようにすることです。どんなに保険料が高くなっても、事故を起こさなければ保険金は支払われません。安全運転は、最も確実な経済的自己防衛策と言えます。
自賠責保険は法律で加入が義務付けられているので、個人で選ぶ余地はありません。でも、任意保険は違います。補償内容を見直したり、複数の保険会社で見積もりを比較したりすることで、全体の保険料負担を最適化する余地はまだあります。
自動車事故のコストが社会的に重くなっているという現実は、簡単には変わりません。でも、その現実を正しく理解し、個人としてできる対策を講じることはできます。社会全体が向き合うべき課題と、個人としての対策を両方考えながら、これからの自動車生活を賢く送っていきたいものですね。
この記事が、自賠責の値上げ理由を理解し、なぜ今負担が増えるのかを考えるきっかけになれば幸いです。
