「そうは言っても、どうやって伝えればいいの…?」
値上げが必要だとわかっていても、お客様への伝え方に悩む飲食店のオーナーさんは多いはず。
いきなり値札だけを変える「ステルス値上げ」はお客様の信頼を一瞬で失います。でも、誠実に、きちんと理由を伝えれば、多くのお客様は理解を示し、むしろ関係が深まることだってあるんです。
この記事では、実際にすぐに使えるテンプレートと、値上げを成功に導くための具体的なノウハウを、すべてお伝えしていきます。
なぜ今、飲食店の値上げが避けられないのか
まずは、お客様に「なぜ?」をしっかりと説明できるよう、現状を整理しておきましょう。
今の値上げは、単なる「材料が少し高くなった」という話ではありません。ここ数年で、飲食店の経営構造を揺るがすような、複数の要因が同時に重なっているからです。
主な原因はこの4つ。
- 原材料費の高騰:小麦粉や食用油、食肉だけでなく、調味料や加工品まで、実に様々な食材の仕入れ価格が持続的に上昇しています。円安の影響で輸入食材は特に大きな影響を受けています。
- エネルギー・物流コストの増加:厨房で使うガスや電気の料金、そして食材を運ぶ物流費も大きく膨らんでいます。
- 人件費の上昇:全国で最低賃金が引き上げられ、社会保険料なども含めると、人を雇うコストは確実に増えています。
- 包装資材などのコスト:テイクアウトやデリバリーが定着したことで、容器や袋などのコストも無視できません。
このまま価格を据え置くと、品質を落とすか、スタッフにしわ寄せがいくか、いずれにせよお店の未来が危うくなってしまいます。お客様に末長く愛されるお店であり続けるための「やむを得ない決断」であることを、まずはご自身で腹に落としておきましょう。
値上げを成功に導く3つの事前準備
さて、値上げの理由が整理できたら、次は戦略を練ります。ここで手を抜くと、後で大きなしっぺ返しが来るかもしれません。
準備すべきことは大きく分けて3つあります。
1. 何を、いくら上げるかを決める
全メニューを一律10%上げる…というのは最も簡単ですが、リスクが高い方法です。代わりに、利益構造をしっかり分析しましょう。
- 特に原価率が跳ね上がっているメニューはありませんか?
- 定番の看板メニューは、値上げによる影響が大きいので、最後の手段に取っておくことをおすすめします。
- まずは原価率の高いサイドメニューやドリンクなどから見直すのが現実的です。
2. 値上げ額に「理由」をつける
「なんとなく100円上げよう」ではなく、「主要な食材の仕入れ価格が15%上がったので、このメニューは80円値上げします」と、計算の根拠を持っておくことが大切です。
3. 競合店や市場の動向を確認する
周辺の同じようなお店が既に値上げしているなら、お客様の理解も得やすくなります。地域や業態の相場観を把握しておきましょう。
お客様の心をつかむ「値上げのお知らせ」5つの鉄則
ここからが本番です。お客様への告知で絶対に外してはいけない原則があります。これらは、信頼を損なわないための最低限のマナーと考えてください。
鉄則1:誠実であること
隠したり、ごまかしたりするのは絶対にNG。お客様は敏感です。正直に、オープンに伝えることがすべての基本です。
鉄則2:必ず「感謝」から始める
いきなり値上げの話から入るのではなく、「いつもありがとうございます」という気持ちを最初に伝えましょう。心の準備ができ、受け入れ態勢が整います。
鉄則3:理由を具体的に説明する
「諸経費の高騰により」という抽象的な表現だけでは、お客様はピンときません。「小麦粉と食用油の価格が〇%上昇し、光熱費も大きく増えているため」など、できるだけ具体的な事情を簡潔に書きましょう。
鉄則4:変更内容を明確に示す
いつから、どのメニューが、いくらになるのか。旧価格と新価格を併記するのが親切です。曖昧な表現は混乱や不信感の元になります。
鉄則5:未来への約束を添える
値上げが単なるコスト転嫁で終わらないことを伝えます。「今後も品質には一切妥協せず、皆様に美味しい料理をお届けするために努力してまいります」など、前向きな姿勢を示しましょう。
すぐに使える!状況別「値上げのお知らせ」文例テンプレート
それでは、実際の文章を作ってみましょう。媒体や状況に合わせて、そのままコピー&ペーストして使える文例を用意しました。あなたのお店の名前と数字を入れるだけです。
【基本形】店内ポスター・張り紙用
シンプルで必要な情報が過不足なく伝わる、スタンダードなフォーマットです。レジ周りや入口に掲示しましょう。
【価格改定のご案内】
平素より格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
謹んでお知らせ申し上げますが、昨今の著しい原材料費・光熱費等の高騰により、採算が厳しくなってまいりました。
つきましては、2026年○月○日(○)より、下記メニューの価格を改定させていただくこととなりました。■改定日:2026年○月○日(○)より
■対象メニューと新価格(税込)
・〇〇ラーメン : 850円 → 950円
・日替わり定食 : 780円 → 880円ご愛顧いただいているお客様にご不便をおかけしますこと、心よりお詫び申し上げます。
私どもは、値上げに伴い、これまで以上に食材の品質とサービスに努め、皆様にご満足いただけるよう努力してまいります。何卒、事情をご賢察の上、変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
2026年○月○日
○○商店 店主 ○○
【SNS向け】短文お知らせ
公式LINEやInstagram、X(旧Twitter)などでサクッと伝える場合の文例です。本文に詳細を書くよりも、画像にして情報を視覚化したり、詳細ページへのリンクを貼るのが効果的です。
【大切な価格改定のお知らせ】
いつも○○をご利用いただき、誠にありがとうございます。
原材料費をはじめとする運営コストの持続的な高騰のため、やむを得ず 2026年○月○日 より一部メニューの価格を改定させていただきます。
お客様にはご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません。
今後も、安心・安全な食材と真心込めた料理で、皆様のお越しをお待ちしております。詳細は店頭またはホームページでご確認ください。
○○店 #価格改定のお知らせ
【前向きな印象に】リニューアル伴う値上げ案内
値上げと同時に、メニューの質を向上させた場合には、このようなポジティブな伝え方が有効です。お客様に「上がるけど、それだけの価値はある」と思ってもらうことが目的です。
【ご報告】看板メニュー「特製〇〇」がさらに美味しくなりました
平素よりご愛顧いただき、ありがとうございます。
このたび、皆様により一層お楽しみいただくため、看板メニューの「特製〇〇」をリニューアル!厳選した国産〇〇をさらに増量し、スープの味わいも深く仕上げました。
素材と手間へのこだわりを強化した結果、 ○月○日より、価格を 1,000円 から 1,150円(税込)に改定させていただくこととなりました。
こだわりが詰まった新生「特製〇〇」を、ぜひご賞味ください。
値上げを告知するベストな方法とタイミング
せっかく良い文章が書けても、伝える方法や時期を間違えると効果が半減してしまいます。
ベストなタイミングは「約2週間~1ヶ月前」からです。
あまりに直前だと「突然言われても…」という不信感に繋がります。かといって3ヶ月も前から言い続けると、その間に忘れられてしまったり、お客様が気まずさを感じる期間が長引いてしまいます。約2週間前から店内にポスターを掲示し、SNSでも少しずつ周知を始めるのが理想的です。
告知は複数のチャネルで行いましょう。
- 店内掲示(ポスター・卓上POP):来店されたすべてのお客様に確実に届けられます。
- SNS・公式LINE:普段からフォローしてくれているリピーター客への丁寧な報告として有効です。
- 口頭でのお声がけ:常連様には、店主やスタッフから直接「申し訳ないんですが…」と一言添えるだけで、伝わり方が全く変わります。
絶対に避けるべきは「当日更新」。
メニュー表やレジの価格表示は、実施日の朝までに、必ずすべて新しいものに切り替えておきましょう。忙しい店内でスタッフが誤った価格を言ってしまうトラブルも防げます。
値上げ後もお客様に選ばれる店であり続けるために
値上げが無事に終わったら、それで終わりではありません。むしろ、ここからが本当の勝負です。
スタッフ全員が同じ認識を持つ
アルバイトスタッフも含め、全員が値上げの理由と新価格を正確に理解していることが大前提です。「なんで上がったの?」とお客様に聞かれた時に、スタッフが曖昧な返事をすれば、それまでの誠意が台無しです。簡単なマニュアルを作って共有することをおすすめします。
「値上げ分」以上の価値を提供する努力を続ける
これが最も大切なことです。
- 少し盛り付けに気を配る。
- 挨拶や接客を一段と温かくする。
- テイクアウトの袋の留め具にひと手間かける。
そういった目に見えない部分での気配りが、「このお店は値上げしても通いたい」というお客様の気持ちを支えます。
最初にもお伝えしましたが、適切な価格設定はお店を守り、お客様に安定した品質を提供し続けるための責任です。
一方的な通告ではなく、誠実なコミュニケーションの機会と捉え、この記事で紹介したテンプレートと心構えをぜひ活用してみてください。
正しい伝え方で、お客様との信頼関係をこれまで以上に強固なものにしていきましょう。
