最近、「ウシュクベ ストーン フラゴンが終売になった」という噂が、ウイスキー好きの間で話題になっています。
陶器ボトルの美しい佇まいと、モルト比率の高いブレンデッドとして知られるこの一本。かつてはバーの棚でもよく見かけた存在でしたが、現在ではほとんど流通しておらず、希少なオールドボトルとして扱われています。
今回は、そんな「ウシュクベ ストーン フラゴン」の魅力や終売の背景、そして今からでも手に入る可能性について、じっくり掘り下げていきます。
ウシュクベ ストーン フラゴンとは？スコットランド伝統の名が語る“命の水”
「ウシュクベ ストーン フラゴン」という名前は、スコットランド・ゲール語の“uisge beatha（ウシュク・ベーハ）”に由来します。
この言葉は英語の「whisky（ウイスキー）」の語源となったとされており、直訳すると「命の水」。まさにウイスキー文化のルーツを象徴するブランド名です。
ウシュクベの歴史は古く、1790年代にはすでにその名が詩人ロバート・バーンズの作品に登場しています。
彼は「Usquaebae, we’ll face the de’il（ウシュクベを携えて悪魔に立ち向かおう）」と詠み、スコットランド人にとっての誇りと情熱をこの言葉に託しました。
その後、1877年には正式に商標登録され、200年以上の伝統を持つブランドとして今に続いています。
ストーン フラゴンとは？陶器ボトルに込められた伝統美
「ストーン フラゴン（Stone Flagon）」という名は、ボトルの素材に由来します。
一般的なウイスキーがガラス瓶であるのに対し、ウシュクベ ストーン フラゴンのストーン フラゴンは“陶器製ボトル”。ずっしりとした重みと、古代の酒壺のようなデザインが特徴です。
陶器ボトルは遮光性に優れ、熟成香を柔らかく保つとされる一方で、製造コストが高く、取り扱いも繊細。
そのため近年ではこうした陶器ボトルを採用する銘柄はほとんど見られません。
この独特の存在感こそが、ウシュクベ ストーン フラゴンを特別な一本にしている理由の一つです。
ボトルには「Over 210 Years of Tradition（210年以上の伝統）」という刻印があり、ブランドの誇りを静かに物語っています。
手に取ると、その厚みや質感からも“時代を超えたウイスキー”であることが伝わってくるでしょう。
モルト比率85％。ブレンデッドの枠を超えた重厚な味わい
ウシュクベ ストーン フラゴンの最大の特徴は、モルト比率の高さ。
一般的なブレンデッドウイスキーはモルト30〜40％程度が主流ですが、この一本はなんと85％がモルト原酒。
残り15％のみがグレーンという、ほぼモルトウイスキーに近い構成です。
使用されているモルト原酒はハイランド地方の複数の蒸留所から厳選され、熟成年数の異なる原酒が40種類以上ブレンドされているといわれます。
なかには27年以上の長期熟成原酒も含まれるという説もあり、香りや味の奥行きが格段に違います。
香りはドライフルーツ、蜂蜜、トースト、シェリー樽の甘いニュアンス。
口に含むと、モルティーな深みの中にスパイスの刺激と柔らかな余韻が続きます。
「ブレンデッドなのにシングルモルトのようなコクがある」と評される所以です。
終売の背景：なぜ姿を消してしまったのか？
では、なぜウシュクベ ストーン フラゴンは終売となってしまったのでしょうか。
公式から明確な発表はありませんが、いくつかの要因が重なったと考えられています。
まず、陶器ボトルの生産コストと流通の非効率さ。
陶器は割れやすく、重量もあるため、輸送コストが高くつきます。大量生産・大量流通が前提の現代市場には馴染みにくい形態でした。
次に、ウイスキー需要の急増による原酒不足。
世界的なウイスキーブームによって、長期熟成モルトの確保が難しくなり、ブレンド比率の維持が困難になった可能性があります。
また、ブランドの運営会社が変わるたびにラインナップの再編が行われ、限られた生産リソースが主要ブランドに集中したともいわれています。
結果として、伝統的でコストのかかる陶器ボトル仕様は採算が合わず、静かに市場から姿を消したのでしょう。
現在の流通状況：オールドボトル市場での価値
現在、ウシュクベ ストーン フラゴンは国内外の正規販売ルートではほぼ見かけることがありません。
一部のバーや個人コレクター、オークションサイト、古酒専門店などでまれに出品される程度です。
中古市場では、状態や付属品によって価格が大きく変動します。
未開封・箱付きの良好な状態であれば、数千円〜数万円と幅広く取引されています。
ただし、陶器ボトルは液面低下やコルク劣化が起きやすいため、購入時には状態確認が必須です。
古酒買取サイトでは「終売品につき在庫限り」「市場流通は極少」と明記されており、いま手に入れられるボトルは実質的に“最後の在庫”といえるでしょう。
とはいえ、他の超プレミア銘柄ほどの価格高騰は見られず、今のうちに手に入れるチャンスが残っているともいえます。
コレクターが注目する“刻印”と“年代差”
ウシュクベ ストーン フラゴンには、年代によって複数のバリエーションが存在します。
代表的なものに、「Over 170 Years」「Over 210 Years」「Over 225 Years」など、刻印の異なる陶器ボトルがあります。
これらは製造時期やボトリング元の違いによって変化しており、コレクターの間では刻印ごとに希少価値が評価されています。
なかには1950年代に税関スタンプが押された個体も確認されており、まさに“オールドボトルの魅力”を象徴する存在です。
刻印の違いを追うだけでも、ウシュクベというブランドの歴史を感じ取ることができます。
コレクション目的で探す場合は、ボトル底の刻印や陶器の色味、ラベルの書体などを細かくチェックするのがポイントです。
味わうか、飾るか。終売品の楽しみ方
ウシュクベ ストーン フラゴンを手にしたとき、悩ましいのが「開けるか、開けずに飾るか」。
どちらにしても、この一本は特別な体験を与えてくれるでしょう。
もし味わうなら、ストレートか少量の加水で香りを開かせるのがおすすめ。
モルティーで重厚な風味がじっくりと広がり、クラシックなスコッチの世界を堪能できます。
また、陶器ボトルから注ぐ瞬間の“音”や“香りの立ち方”も格別です。
一方で、ボトル自体の造形美を楽しむのもこの銘柄の魅力。
飾っているだけでも、アンティークのような存在感があり、バーやリビングの空間を一変させます。
どちらの楽しみ方でも、この終売品が放つ“時間の重み”を感じることができるでしょう。
終売後の代替候補とブランドの今後
「もうストーン フラゴンは手に入らないの？」という声もありますが、ウシュクベブランド自体は完全に消えたわけではありません。
一部では「Usquaebach Old Rare Blended Scotch」など、ガラスボトル版のブレンドが引き続き生産されています。
ただし、陶器ボトル仕様は事実上廃止されており、あの独特の雰囲気を持つボトルは現行ラインナップには存在しません。
代替としては、同じくモルト比率の高いブレンデッドウイスキー（モンキーショルダー、ティーチャーズ、ジョニーウォーカー グリーンラベルなど）が挙げられます。
しかし、ウシュクベ ストーン フラゴンのような“陶器の温もり”を感じる一本は他にありません。
だからこそ、今なお多くのファンがこのボトルを探し続けているのです。
ウシュクベ ストーン フラゴン終売という時代の節目
ウシュクベ ストーン フラゴンの終売は、ウイスキー文化の一つの節目ともいえます。
大量生産が主流となった今、手作業で仕上げられた陶器ボトルと、熟成原酒を贅沢に使ったブレンドが同居するウイスキーはほとんど存在しません。
それでも、このボトルが語り継がれる理由はただ一つ。
「飲む人の心に残るウイスキー」だったからです。
グラスを傾ければ、200年以上の歴史が静かに語りかけてくる——そんな一本が、ウシュクベ ストーン フラゴンなのです。
終売後の今もなお、その香りと存在はウイスキーファンの記憶に深く刻まれています。
もしどこかでこの陶器ボトルを見つけたなら、それは“時の遺産”との出会いかもしれません。
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