「えっ、あのキルケニーが終売?」
そんな声がSNSでも聞こえてきます。アイリッシュパブでおなじみのあの赤いビール、滑らかな泡とやさしい口当たりで愛されてきたキルケニーが、日本で姿を消しつつあるという話題が広がっています。この記事では、キルケニーの終売の背景や、なぜ販売終了になったのか、そして今でも似た味わいを楽しめるビールについて、丁寧に紹介していきます。
アイルランド生まれの名ビール、キルケニーとは
キルケニー(Kilkenny)は、アイルランド南東部の古都キルケニーで生まれたビールです。もともとは「スミスウィックス(Smithwick’s)」というブランドの兄弟分として誕生し、滑らかな泡と深みのある味わいで人気を集めました。現在は、ギネスで有名な世界的大手ディアジオ(Diageo)社の傘下で製造されています。
スタイルとしては「アイリッシュ・レッドエール」あるいは「クリームエール」と呼ばれるタイプ。
色は赤みがかったアンバーで、クリーミーな泡が特徴です。苦味は控えめでモルトの甘みとまろやかさが感じられ、ギネスのような黒ビールが少し重いと感じる人にも飲みやすい一本です。
アイルランドではもちろん、日本でもアイリッシュパブの定番ビールとして親しまれてきました。ギネスと並んで注文されることの多い銘柄で、「ギネスの弟分」と表現する人も少なくありません。
キルケニーが日本で終売?その経緯と実情
ここ数年、「キルケニーが日本で終売になった」という情報が相次いでいます。
実際、2021年末ごろから「国内在庫限り」「メーカー出荷終了」といった案内が各地のバーや酒販サイトで見られるようになりました。中には「年内で最後の樽が終わる」といった投稿をするパブもあり、ファンの間では“飲み納め”のムードが広がっていました。
流通面でも、国内の販売代理店が取り扱いを終了しており、現在は一般の小売店や通販サイトではほとんど見かけなくなっています。生樽(ドラフト)の供給もストップしているため、アイリッシュパブのメニューから消えた店舗が多いのが現状です。
ただし、完全に製造中止になったわけではなく、海外では引き続き販売されています。つまり、日本国内向けの輸入・販売が終了した、いわば「国内終売」という形です。海外旅行先や一部輸入専門店などでは、稀に瓶や缶を見つけることができる場合もあります。
なぜキルケニーは販売終了になったのか
メーカーから明確な理由は発表されていませんが、いくつかの背景が重なったと考えられます。
1. ニッチ市場ゆえの需要減少
ギネスほどの知名度があるわけではなく、キルケニーは「通好みのビール」として限定的な層に愛されていました。輸入ビールの中では人気があったものの、国内市場で大きなシェアを占めるほどではありません。飲食店のメニューから徐々に減っていったことも、販売終了の一因とみられます。
2. 輸入コストや物流の高騰
2020年以降、世界的に物流コストが上昇しました。輸入ビールは輸送費や為替の影響を受けやすく、価格を維持するのが難しくなっていました。
輸入元や流通業者が採算を見直した結果、採用を取りやめた可能性があります。
3. コロナ禍による外食需要の減少
キルケニーは家庭向けよりも、アイリッシュパブなどの業務用樽ビールとしての需要が中心でした。コロナ禍で飲食店の営業制限や客数減少が続いたことは、間違いなく大きな打撃です。需要が戻らないまま、輸入を継続するのが難しくなったと考えられます。
4. クラフトビールの台頭
近年は国内クラフトビール市場が急成長し、各地で高品質なレッドエールやナイトロ(窒素ガス注入)タイプのビールが登場しています。こうした新しい選択肢の増加により、輸入ブランドの立場が相対的に弱まったとも言えるでしょう。
キルケニーの魅力を改めて振り返る
終売となっても、キルケニーが残した存在感は大きいものがあります。
その最大の魅力は、やはり“滑らかで優しい味わい”。ギネスよりも軽やかで、モルトの香ばしさとクリームのような口当たりが心地よいビールです。
見た目の美しさも印象的。透き通るような赤褐色に、白くきめ細やかな泡が重なる姿は、まさにアイルランドの伝統を感じさせます。
パイントグラスを傾けた瞬間、モルトの香りが立ちのぼり、ほんのりキャラメルのような甘みが広がる──その穏やかな余韻に惹かれてファンになった人も多いでしょう。
アイリッシュパブでフィッシュ&チップスを頬張りながら、キルケニーを一口。あの時間が恋しいという声が、今もSNS上で絶えません。
今でも飲める?入手方法と残っているお店
現在、日本国内でキルケニーを手に入れるのは難しくなっています。
一般販売ルートではほぼ姿を消し、輸入酒を専門に扱う一部店舗で在庫限りの瓶・缶が見つかる程度。オンラインショップでも「取り扱い終了」や「売り切れ」の表示が目立ちます。
ただし、アイリッシュパブの中には「最後の樽を提供中」として限定で販売していた店もありました。都内や大阪などの老舗パブでは、「もうすぐ飲めなくなるから」とラストオーダーを惜しむファンでにぎわったという話もあります。
もしどうしても味わいたいなら、海外輸入品を取り扱うECサイトや、個人輸入代行を利用する方法もあります。ただし、価格や品質の保証が不安定な場合もあるため、自己責任での利用が前提です。
キルケニーの代わりに飲みたいおすすめビール
せっかくなら、キルケニーの代わりに近い味わいを楽しめるビールを探してみましょう。
同じ“アイリッシュレッドエール”や“クリームエール”の系統を持つ銘柄をいくつか紹介します。
エチゴビール レッドエール
日本のクラフトビールの草分け的存在であるエチゴビールが出す「レッドエール」は、キルケニーに通じる赤褐色の美しいビール。モルトの甘みと軽やかな苦味のバランスが絶妙で、国内でも手に入りやすい一品です。
オハラズ・アイリッシュレッドエール
本場アイルランドのカーロウ・ブルワリーによるレッドエール。しっかりとしたモルト感とトーストのような香ばしさが特徴で、キルケニーよりややコク深い味わいです。輸入品ながら、比較的見つけやすい銘柄です。
TKBrewing ナイトロ・カワサケイ
国内クラフトの中には、窒素ガスを使ってキルケニーのようなクリーミーな泡を再現した「ナイトロ」タイプのビールも登場しています。例えば神奈川のブルワリー「TKBrewing ナイトロ・カワサケイ」は、まさにキルケニーへのオマージュとして人気を集めています。
終売でも消えない、キルケニーという文化
キルケニーの終売は、多くのビールファンにとってひとつの時代の終わりを意味しました。
ギネスと並び、アイルランドの文化を象徴するような存在だっただけに、ただの輸入終了以上の喪失感があります。
それでも、あの“滑らかでやさしいビール”を愛した人たちの記憶の中で、キルケニーは今も生きています。
もしもう一度あの味を求めるなら、似たスタイルのクラフトビールを手に取ってみてください。
グラスの中の赤い液体に、きっとキルケニーの面影を感じるはずです。
キルケニー 終売のまとめ
・キルケニーはアイルランドの伝統的なレッドエールで、ギネスの兄弟的存在。
・2021年頃から日本での販売が終了し、現在は一般流通ではほぼ入手不可。
・背景には需要減少、輸入コスト上昇、コロナ禍の影響などがある。
・代替として、国内クラフトやオハラズ・アイリッシュレッドエールなどのレッドエールが人気。
・終売後もファンの愛は根強く、文化的な存在として語り継がれている。
長年、パブでの時間を彩ってくれたキルケニー。
その赤褐色の泡立ちを思い出しながら、今日もどこかで新しい“お気に入りの一杯”を見つけてみませんか。

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