ウイスキー好きの間で、近年ひそかに話題になっているのが「グレンドロナック21年終売」の噂です。SNSや愛好家のコミュニティでも「もう買えないらしい」「プレミア価格になっている」といった声が聞こえてきます。
果たして、グレンドロナック21年は本当に終売してしまったのでしょうか?それとも一時的な品薄に過ぎないのか――。今回は、この幻とも言われるシングルモルトの現状と、今後の入手方法について徹底的に掘り下げます。
グレンドロナック21年とはどんなウイスキー?
「グレンドロナック21年 パーラメント(GlenDronach 21 Year Old Parliament)」は、スコットランド・ハイランド地方のグレンドロナック蒸溜所が手がける長期熟成シングルモルトです。1826年創業の老舗で、シェリー樽熟成の名手として知られています。
21年は、オロロソとペドロ・ヒメネスという2種類のスペイン産シェリー樽で熟成されるのが特徴。アルコール度数は48%、深い琥珀色の液体から漂うのは、熟したプラムやブラックベリー、ビターチョコレート、トーストしたオークの香り。
一口含むと、濃厚な甘みとスパイスが重なり合い、長く続く余韻が口の中を支配します。まさに「シェリー樽の傑作」と呼ぶにふさわしい味わいです。
名前の“Parliament”は、蒸溜所の周囲に生息するカラスの群れを指す言葉で、自然と共に生きる蒸溜所の象徴でもあります。
なぜ「終売」と言われているのか?
グレンドロナック21年が「終売」とささやかれるようになった理由は、公式発表ではなく、主に“流通量の減少”と“価格高騰”にあります。
近年、国内外のショップやネット通販サイトで在庫が急減。以前は4〜5万円前後で手に入ったボトルが、今ではオークションで3万円台後半〜5万円を超える価格で取引されています。
また、公式サイトや一部の販売店で掲載が消えていた時期もあり、「販売終了なのでは?」という憶測が広がりました。
さらに、2025年には「新パッケージで数量限定発売」というニュースも。これにより、「従来仕様が終売したのでは」という見方が一層強まりました。つまり、“完全な生産終了”ではないものの、従来の通常流通版が市場から姿を消したのは事実です。
公式には「終売」とは発表されていない
一方で、グレンドロナック蒸溜所やブランドを運営するベンリアック・ディスティラリー社から、「グレンドロナック21年を正式に終売する」という発表は出ていません。
ウイスキー専門サイトでも「終売予定はない」との見解が紹介されています。
つまり、あくまで「流通が極端に減っている」「限定出荷に切り替わった」だけで、完全な終売ではないというのが現実。
ただし、21年以上の熟成原酒は希少で、今後も安定して生産できる保証はありません。21年熟成という長期熟成品は、1990年代後半〜2000年代初期の原酒を使用しているため、ストック次第ではいつ終売になってもおかしくない状況です。
終売・品薄の背景にある3つの要因
1. 熟成年数と原酒の制約
グレンドロナック蒸溜所は1996年から2002年の間、操業を停止していた時期があります。つまり、その期間に仕込まれた21年もの原酒は存在しません。
21年という長期熟成を維持するためには、1990年代前半に仕込んだ貴重な原酒を使うしかなく、在庫の制約が生じているのです。
2. シェリー樽の入手難
グレンドロナックの味わいを支えるのは、スペイン産のシェリー樽。特にPX(ペドロ・ヒメネス)やオロロソといった樽は世界的に需要が高く、価格も高騰。
この樽を安定的に確保するのは容易ではなく、生産コストが大幅に上がっています。
3. 世界的な需要の高まり
シェリー樽熟成のウイスキーは、マッカランやアベラワーなど他ブランドでも人気が高く、全体的に原酒の取り合い状態。グレンドロナックは特にアジア圏で人気が高まっており、世界市場に出回る本数が減っていることも、品薄の一因です。
新パッケージでの数量限定リリース
2025年には、日本国内で「新パッケージ版グレンドロナック21年」が数量限定で登場しました。
従来のクラシックなデザインを一新し、より洗練されたラベルとボトルにリニューアル。内容は従来同様、PXとオロロソのシェリー樽で21年間熟成させた原酒が使われています。
この“数量限定”という点が重要です。定番商品ではなく、限られた本数だけが流通する形式のため、再販タイミングを逃すと入手は難しくなります。
リニューアル発売は、ブランドとして「21年を続けたい」という意思の表れでもありつつ、「在庫が潤沢ではない」という裏返しでもあるのです。
現在の市場価格と流通状況
現在、日本国内の販売店やオークションで見られるグレンドロナック21年の価格は以下のような傾向です。
- オークション平均落札価格:35,000〜45,000円前後
- 国内酒販店(在庫僅少品):40,000〜55,000円前後
- 海外ショップ:€200〜€250(関税・送料別)
国内での一般流通はすでにほとんど見られず、在庫は限られた専門店かオークション・並行輸入に頼る状況。
海外サイトでは一部「在庫あり」と表示されるケースもありますが、輸入手数料や偽造品リスクを考えると、信頼できる販売元を選ぶことが欠かせません。
グレンドロナック21年の味わいが“幻”と呼ばれる理由
21年は、グレンドロナックの中でも最も完成度が高いと評されるボトルの一つです。
18年や15年も素晴らしいですが、21年はシェリー樽由来の濃厚さと、長期熟成による深みが絶妙なバランスで共存しています。
- 香り:ブラックベリー、レーズン、オレンジピール、カカオ、スパイス
- 味わい:ダークチョコレート、ナツメグ、ジンジャー、熟したプラム
- 余韻:ドライフルーツとオークの苦味が長く続く
一口飲むと「もう一度味わいたい」と思わせる完成度。これこそが、入手困難になってもなおファンが探し続ける理由です。
多くの愛好家が「これを最後に飲んだのはいつだっただろう」と語るほど、今では“幻の一杯”となりつつあります。
グレンドロナック21年を入手する方法
現在、入手するには次の3つの方法が現実的です。
- 国内の専門店や免税店をチェック
数量限定リリースの際に少数入荷されることがあります。ニュースレター登録やSNSフォローで情報を追うのがコツです。 - オークション・フリマアプリを利用
出品数は少ないものの、定期的にボトルが流通しています。相場を把握しつつ、保存状態や正規ラベルを確認して入札しましょう。 - 海外の信頼できるオンラインショップ
欧州のウイスキー専門サイトでは、在庫が復活することも。輸入時は関税・配送トラブルに注意が必要です。
どの方法を選ぶにしても、今後はさらに希少性が高まると考えられます。購入を検討しているなら、早めの行動が重要です。
グレンドロナック21年の後継や代替として注目のボトル
もし21年を手に入れられない場合、次のボトルも検討する価値があります。
- グレンドロナック18年 アラダイス
同じくシェリー樽熟成。よりフルーティでスイートな印象。 - グレンドロナック15年 リバイバル
PX樽のニュアンスが強く、価格帯も比較的手に取りやすい。 - グレンドロナック12年 オリジナル
若いながらもブランドらしさがしっかり感じられる入門的1本。
いずれも蒸溜所の個性を堪能できるボトルで、21年の“代わり”としてだけでなく、熟成年ごとの違いを楽しむのにもおすすめです。
まとめ:グレンドロナック21年終売は事実ではないが、実質的に“幻”の存在に
結論として、グレンドロナック21年は「完全な終売」ではありません。しかし、在庫減少と価格高騰により、一般的な入手は極めて困難になっています。
2025年に数量限定の新パッケージが発売されたものの、再入荷の見通しは不透明。21年熟成の原酒そのものが少ない以上、今後は“手に入れば幸運”という存在になっていくでしょう。
ウイスキーの世界では、こうした「一期一会のボトル」が多くあります。グレンドロナック21年もそのひとつ。
もし店頭やオンラインで見かけたら、迷わず確保しておくのが得策です。
シェリー樽熟成の極致を味わえる、数少ない名作。その魅力を知ることこそ、ウイスキーを愛する喜びのひとつなのかもしれません。

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