「トロワ リビエールって、もう終売になったの？」
そんな声を耳にするようになりました。マルティニーク産の名門ラムとして愛されてきたトロワ リビエール。いつの間にか店頭から姿を消し、「在庫限り」「取り扱い終了」といった表示が目立つようになっています。この記事では、その背景にある事情や、まだ手に入れる方法について、ラム愛好家の目線でじっくりお話しします。
トロワ リビエールとは？ラム界の伝統を背負う存在
トロワ リビエール（Trois Rivières）は、フランス領マルティニーク島で生まれた農業ラム（アグリコールラム）の老舗ブランドです。
「3つの川」という名の通り、オマーン川・ボワダンド川・サンピエール川に囲まれたプランテーションを拠点に、17世紀からラム造りを続けています。
マルティニーク島のラムは、モラセス（糖蜜）ではなく、搾りたてのサトウキビジュースから蒸留されるのが特徴。そのため、サトウキビ本来の青々とした香りやミネラル感が際立ち、同じラムでもカリブ海諸島のほかのブランドとはまったく異なる個性を持っています。
トロワ リビエールは、その中でも「力強く、ドライで、上品なスパイス香」が特徴とされ、世界中のラムファンから支持されてきました。
「終売」と言われる理由―国内取り扱い中止の背景
最近、国内の酒販店や通販サイトで「終売」「在庫限り」と表示されるボトルが増えています。
たとえば「トロワ リビエール 5年」などは、既に販売ページから姿を消し、取り扱い終了と明記されているケースもあります。
その背景にあるのが、輸入元の変更です。
かつて日本でトロワ リビエールを輸入していたのは「ジャパンインポートシステム」ですが、2019年にブランドの親会社がカンパリグループに買収されたことで、輸入契約の再構築が行われました。この結果、旧輸入元での取り扱いが終了し、新たな流通体制に移行するまでの間、国内供給が止まってしまったのです。
さらに、輸入酒市場全体でも物流コストや為替の影響が大きく、ニッチな農業ラムを継続的に輸入するハードルは上がっています。これらが重なり、結果的に「国内での終売状態」となっているのが現状です。
海外では今も生産継続中。完全な終売ではない
ここで大切なのは、ブランドそのものが消滅したわけではないという点です。
トロワ リビエールは現在もマルティニーク島で生産が続いており、海外市場では通常通り販売されています。ヨーロッパの専門店サイトを見れば、ホワイト、アンバー、ヴィンテージ、ミレジムといった幅広いラインナップが並んでいます。
つまり、「日本国内の正規ルートでは終売」でも、「世界的には現行ブランド」。
日本市場だけが一時的に空白期間にある、という状況です。
ただし、再び日本で正式に再販されるかどうかは未定。カンパリグループの輸出方針や市場戦略に左右されるため、現時点では「待つしかない」状態と言えるでしょう。
今でも買える？トロワ リビエールを入手する方法
「どうしても飲みたい」「もう一本確保したい」という方のために、現時点で考えられる入手ルートを紹介します。
1. 国内ショップの在庫を探す
終売と書かれていても、地方の酒店や専門店に在庫が眠っている場合があります。オンラインショップの検索欄に「トロワ リビエール 終売」「在庫限り」と入れると、稀にヒットすることがあります。見つけたら即購入がおすすめです。
2. 並行輸入品を扱う通販をチェック
楽天市場やYahoo!ショッピングなどでは、並行輸入品が出品されることがあります。価格は以前より高くなっていますが、正規輸入が止まっている現状では貴重な選択肢です。
ただし、販売者情報や酒類販売免許の有無、商品の状態（液面・ラベル）を必ず確認しましょう。
3. 海外通販を利用する
欧州のラム専門店（例：Excellence Rhum、The Whisky Exchangeなど）では、トロワ リビエールの在庫が豊富に残っています。英語での購入手続きや関税・送料の負担はありますが、確実に手に入れる手段のひとつです。
4. オークション・フリマサイト
終売品はコレクター需要が高まり、ヤフオク！やメルカリなどに出品されることがあります。
ただし、保存状態の確認や真贋のリスクには注意が必要。信頼できる出品者から購入するよう心がけましょう。
なぜ今、トロワ リビエールが注目されるのか
不思議なもので、「もう買えない」となると、欲しくなるのが人の性。
終売ニュースが広がったことで、トロワ リビエールへの関心はむしろ高まっています。
その理由のひとつが、アグリコールラムならではの個性。
モラセスラムに比べ、トロワ リビエールの味わいはとにかく“生”です。サトウキビの青草、黒糖のようなコク、そして後半に感じるドライな余韻。これを体験すると、多くの人が「他のラムでは満足できない」と口を揃えます。
また、ヴィンテージやシングルカスクなどの限定ボトルは、コレクターの間でも人気が高く、終売をきっかけに価格が上昇しているケースもあります。
終売の裏にある市場とブランドの変化
トロワ リビエールの終売を単なる「供給停止」と捉えるのはもったいない話です。背景には、洋酒業界全体の構造変化があります。
- 買収による再編
カンパリグループがブランドを傘下に収めたことで、販売戦略の見直しが行われました。特定市場を撤退・再導入するのは珍しくありません。 - 農業ラム市場の縮小
一般的なモラセスラムに比べ、農業ラムは生産コストが高く、価格競争力を保ちにくい傾向があります。結果として輸入元が採算を取るのが難しくなることも。 - 価格高騰と流通リスク
為替や原料高騰、物流遅延など、近年の輸入業界を取り巻くコスト上昇も無視できません。これらが積み重なり、「一度ラインを整理する」という判断が取られたと考えられます。
つまり、トロワ リビエールの終売は、ひとつのブランドに限った話ではなく、世界の洋酒市場全体に起きている再編の一端なのです。
代わりに楽しめるラムを探すなら
「トロワ リビエールが手に入らないなら、似た味わいを探したい」
そんな方には、同じマルティニーク産のアグリコールラムをおすすめします。
- ラ・マニー
同じマルティニーク島の伝統ブランド。サトウキビの香りがより柔らかく、軽やかな口当たり。 - クレマン
トロワ リビエールよりもフルーティーで、華やかな香りが特徴。初心者にも飲みやすいタイプです。 - ドメーヌ・ド・セント・エティエンヌ
スパイシーで重厚、余韻の長いタイプ。トロワ リビエールの骨太さが好きな人には相性が良いでしょう。
それぞれ個性がありますが、いずれもマルティニークAOCの認定を受けた農業ラムで、品質・風味ともに折り紙付きです。
トロワ リビエールの「終売」は、一つの転機
ここまで見てきたように、トロワ リビエールの「終売」はあくまで国内正規流通の停止であり、ブランド消滅ではありません。
今後、輸入体制が整えば再販の可能性も十分にあります。
ただ、その日がいつになるかは誰にも分かりません。
だからこそ、今ある在庫は貴重です。もし店頭で見かけたら、迷わず確保しておくのが賢明でしょう。飲むも良し、コレクションするも良し。マルティニークの風を感じる一本として、大切に味わう価値があります。
トロワ リビエール 終売という言葉の裏にある魅力
「トロワ リビエール 終売」――この言葉には、単なる在庫終了以上の意味があります。
それは、時代の流れとともに姿を消しつつある“クラフトスピリッツの原点”を象徴しているからです。
工業化された大量生産の酒が増える中で、トロワ リビエールのような手作りの農業ラムはますます貴重な存在になっています。
終売という事実が、その価値をあらためて浮かび上がらせているのかもしれません。
もう出会えないかもしれない――そう思うと、グラスに注ぐ一杯がいっそう特別なものに感じられます。
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