「ネイキッド グラウスが見つからない」「終売って本当?」――ウイスキー好きの間でそんな声を聞くようになりました。あの独特のシェリー樽香をもう一度味わいたいと思っている人も多いはずです。今回は、ネイキッド グラウスがなぜ販売終了になったのか、その背景やブランドの変化、そして代わりに楽しめる後継ウイスキーまでを詳しく掘り下げていきます。
ネイキッド グラウスとはどんなウイスキーだったのか
ネイキッド グラウス(Naked Grouse)は、スコットランドの名門エドリントン社が手掛けていたブレンデッド・スコッチ・ウイスキーです。
「ファーストフィル・シェリー樽」で熟成した原酒をブレンドし、芳醇な甘さと深みを持たせたのが特徴でした。
キーとなるモルトには、Highland ParkやThe Macallanなどが使われていたとも言われており、価格以上の満足感を得られる“隠れた名作”として人気を集めていました。
そのボトルデザインも印象的で、ラベルを使わずガラスにグラウス(雷鳥)の模様を浮かび上がらせたシンプルで洗練された仕上がり。プレゼントにも選ばれることが多かったウイスキーです。
終売(販売終了)の噂が広まった背景
「ネイキッド グラウス 終売」と検索されるようになったのは、ここ数年のこと。実際に国内外の販売店サイトでは「在庫限り」「販売終了」の表示が目立ち始めています。
では、なぜそうなったのか。背景には大きく3つの理由がありました。
理由① 市場トレンドの変化とブランド戦略の転換
近年、世界のウイスキー市場では“シングルモルト志向”が強まっています。
グレーンウイスキーを含むブレンデッド製品よりも、モルト原酒のみで構成されるブレンデッド・モルトやシングルモルトに注目が集まり、各ブランドもその方向へシフトしました。
エドリントン社も同様で、「Highland Park」「The Macallan」といった高級モルトブランドに注力する方針を打ち出します。
その流れの中で、ネイキッド グラウスも従来の“ブレンデッド・スコッチ”から“ブレンデッド・モルト”へと切り替えられました。つまり、グレーンを使わず、モルト原酒のみで再構築されたのです。
この仕様変更が行われたのが2017年頃。従来の「Naked Grouse(ブレンデッド)」は一旦姿を消し、代わりに「ブレンデッド・モルト版」へと移行しました。
ただし、ブランド名はそのままだったため、当初は多くの人が“いつの間にか味が変わった”と感じたようです。
理由② 「Naked Malt」への名称変更で旧ボトルが実質的に終売に
次の大きな転換点は2021年。
エドリントン社はブランド再構築の一環として、「Naked Grouse」を「Naked Malt(ネイキッド モルト)」へリブランディングしました。
このとき、液体そのもの(ブレンド内容や樽熟成方法)は変わらないと発表されていますが、名前とデザインが一新されました。
その結果、「Naked Grouse」という名前のボトルは市場から消え、旧デザインは“終売”扱いとなりました。
つまり、厳密に言えば「中身は続いているが、旧名称・旧ボトルのネイキッド グラウスは販売終了」なのです。
理由③ エドリントン社のブランド整理と事業再編
2024年に入り、エドリントン社は「The Famous Grouse」や「Naked Malt」などのブレンデッド系ブランドを手放し、より高価格帯のモルト中心ブランドに集中する戦略を明らかにしています。
これにより、従来の「グラウス」ブランド群は新たなフェーズに入り、販売体制や流通が整理されました。
その結果、旧仕様のネイキッド グラウスが新たに再生産される見込みは低く、在庫限りで実質的な終売となっています。
日本市場での現状と在庫状況
日本でも、かつては多くの酒販店や通販サイトでネイキッド グラウスが手に入りましたが、今ではほとんどが「在庫なし」「終売」と表示されています。
楽天市場やAmazonでも、旧ボトルはプレミア価格で取引されることが増えています。
一方、リブランディング後の「Naked Malt」は引き続き正規流通しており、デザインは変わっても味わいは基本的に同じ。
したがって、飲み慣れたネイキッド グラウスを探している人は、「Naked Malt」を選ぶのが最も近い選択肢と言えます。
ネイキッド グラウスとNaked Maltの違いは?
「Naked Maltに変わって味が変わったのでは?」と感じる人もいますが、基本的なレシピや原酒構成に大きな変更はないとされています。
ただし、ブレンドに使われるモルトの比率や樽の個性が微妙に異なるため、味わいに“ニュアンスの違い”を感じる人は多いようです。
ネイキッド グラウスは、やや厚みのある甘さと熟成感が印象的。
一方でNaked Maltは、よりフルーティで軽やかな印象を与えるというレビューが増えています。
この違いは、ブランドとして「よりモダンで親しみやすいウイスキー」を目指した結果とも言えます。
ネイキッド グラウスの代替候補となるウイスキー
「Naked Maltもいいけど、他に似たタイプはないの?」という人に向けて、風味や価格帯が近いウイスキーをいくつか紹介します。
- Monkey Shoulder
同じくブレンデッド・モルト仕様。華やかな香りとスムーズな口当たりで、価格も比較的手頃。ネイキッド グラウスよりやや明るく、軽やかな味わいです。 - ハイランドパーク 12年
ネイキッド グラウスの原酒の一部にも使われていたとされる蒸溜所。蜂蜜のような甘みとスモーキーさが調和し、シェリー樽由来の深みも楽しめます。 - マッカラン シェリーオーク12年
よりリッチなシェリー香を求めるならこちら。価格帯は上がりますが、ネイキッド グラウスの“シェリー樽の余韻”を好む人にはぴったりです。
これらはいずれも「モルト中心」「シェリー樽」「芳醇な甘さ」という共通点を持ち、ネイキッド グラウスファンにおすすめできる選択肢です。
終売ボトルを探す際の注意点
旧ボトルを探すときは、以下のポイントに気を付けてください。
- 「Naked Grouse」表記の有無を確認(現行は「Naked Malt」)
- ラベルではなく、ガラスにグラウスが彫刻されているデザインが旧ボトルの特徴
- 並行輸入品や中古市場では価格が高騰しているため、出品者の信頼性を必ず確認する
- プレミア価格での販売が多いため、購入目的(コレクションか飲用か)を明確にする
希少ボトルを狙う場合は、正規輸入ルートや信頼できるウイスキー専門店での購入が安全です。特に、真贋判定の難しいオークションサイトでは注意が必要です。
ネイキッド グラウスが残した価値と今後の楽しみ方
ネイキッド グラウスは、ブレンデッド・スコッチの枠を超えて“モルトの奥深さ”を手軽に楽しめるウイスキーとして、多くのファンを魅了してきました。
そのDNAは、現在のNaked Maltにしっかり受け継がれています。
旧ボトルが終売となった今でも、ウイスキーの世界では「ネイキッド グラウスのような味わい」を求める声が絶えません。
新しいNaked Maltを通じて、ブランドの進化を感じるのもまた一つの楽しみ方でしょう。
ネイキッド グラウス終売をめぐるまとめ
・ネイキッド グラウスは、2017年の仕様変更と2021年のブランド改称によって事実上終売となった。
・後継ブランドは「Naked Malt」で、中身はほぼ同じながら名称とデザインが刷新されている。
・日本市場では旧ボトルの流通がほぼ終了し、在庫はごくわずか。
・代替としては、Naked MaltやMonkey Shoulder、ハイランドパーク 12年、マッカラン シェリーオーク12年などが有力。
時代の変化とともにブランドは姿を変えても、ネイキッド グラウスの精神――「飾らないモルトの個性」は今も生きています。
もし店頭で旧ボトルを見かけたなら、それはもう出会いそのもの。ウイスキーの物語を感じながら、ゆっくりとグラスを傾けてみてください。

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