ウイスキー好きなら一度は耳にしたことがある「ベンリアック12年シェリーウッド」。その名の通り、シェリー樽で熟成された豊かな風味が魅力の一本です。そんな人気モルトが「終売になった」との噂を耳にし、驚いた方も多いのではないでしょうか。
今回は、ベンリアック12年シェリーウッドの終売の真相と、味わいの特徴、さらに代わりに楽しめるウイスキーについて詳しく紹介します。
ベンリアック12年シェリーウッドとはどんなウイスキー?
ベンリアック蒸溜所はスコットランド・スペイサイドにある歴史ある蒸溜所で、1898年に設立されました。伝統的なフロアモルティング設備をいまも持ち、職人の手で丁寧に麦芽づくりを行っていることで知られています。
その中でも「ベンリアック12年シェリーウッド」は、オロロソやペドロ・ヒメネス(PX)といったスペイン産シェリー樽で熟成された原酒を使った人気モデルです。
アルコール度数は46%、冷却ろ過を行わないノンチルフィルタード仕様。自然な色味と濃厚な風味をそのままボトルに詰め込んだ一本で、「ベンリアックの樽使いを象徴するモデル」として長年ファンに親しまれてきました。
香りはドライフルーツやモカ、ダークチョコレート。口に含むとレーズンやイチジクのような甘みと、ほろ苦いオークの余韻が広がります。華やかでいてどこか落ち着きのある、クラシックなシェリー系モルトの魅力が詰まっています。
なぜベンリアック12年シェリーウッドは終売になったのか?
「終売」という言葉を聞くと、単なる販売終了のように思えますが、ウイスキーの世界ではさまざまな事情が絡んでいます。
ベンリアック12年シェリーウッドの終売も、その背景にはいくつかの要因がありました。
シェリー樽の供給不足
まず大きな理由として挙げられるのが、「シェリー樽の供給不足」です。
オロロソやペドロ・ヒメネス(PX)といったシェリー樽は、スペイン・ヘレス地方でつくられるシェリー酒を熟成させたあとに再利用される貴重なもの。近年はシェリー酒の消費量そのものが減っており、樽の供給が追いつかなくなっているのです。
シェリー樽は香りと味に独特の深みを与える一方で、手配コストが高く、蒸溜所にとっては安定供給が難しい素材でもあります。
その結果、ベンリアックを含む多くの蒸溜所がシェリー樽熟成モデルを一時的に停止したり、ラインナップを再構築する動きを見せました。
ブランド戦略の再編とリニューアル
もうひとつの要因は、ブランドのリニューアルです。
ベンリアックは2018年ごろ、コアレンジ全体のデザインやラインを刷新し、より明確な味わいのテーマで再構成を行いました。その際、「ベンリアック12年シェリーウッド」は一度終売扱いとなり、後に新仕様として再登場します。
つまり、「完全に消えた」というよりは「旧仕様の終売→新仕様の再投入」という流れです。
ただし、日本国内ではこの新仕様が十分に流通せず、結果として“終売のまま入手困難”と認識されるようになりました。
コスト上昇と味のバランス維持
さらに、原材料価格の高騰や為替の影響も無視できません。
シェリー樽の高騰に加え、熟成にかかる時間とコスト、そして味わいを一定に保つためのブレンド技術など、全体的な負担が増加しました。これらが重なり、旧仕様のままでは採算が取れなくなったと考えられます。
リニューアル後の違いと旧ボトルの価値
2018年に再登場した「ベンリアック12年シェリーウッド」は、同じ12年表記ながら中身がやや変わっています。
オロロソとペドロ・ヒメネス(PX)の2種類に加え、異なるタイプのシェリー樽を組み合わせた「トリプルシェリーマチュレーション」と呼ばれる新構成。味わいは以前よりも軽やかで、フルーティーな印象が強くなりました。
一方、旧ボトルはより濃厚でビター。ドライフルーツやモカ、ナツメグのような重厚感が魅力でした。
そのため、愛好家の間では「旧ボトルの方がシェリー感が強く、深みがある」と高く評価され、現在ではプレミア価格で取引されることもあります。
もし手に入る機会があれば、ラベルデザインやボトリング年を確認してみてください。旧仕様は金色を基調にしたラベル、新仕様はややモダンなデザインが目印です。
ベンリアック12年シェリーウッドの味わいをもう一度振り返る
改めて、このウイスキーの魅力を言葉にしてみましょう。
・香り:レーズン、プルーン、チョコレート、ハチミツ、トーストオーク
・味わい:ドライフルーツの甘みとほろ苦さ、モカやトフィーのようなまろやかさ
・余韻:ビターでスパイシー、長く続く樽香とナッツのニュアンス
この“濃厚な甘苦さ”がベンリアック12年シェリーウッドの真骨頂です。
華やかな香りの中に、どこか熟成を感じさせる深みと落ち着きがあり、まさに「大人のシェリーウイスキー」と言える一本でした。
終売後に選びたい代替ウイスキー
「もう手に入らないの?」と残念に思う方に、近い方向性のウイスキーを紹介します。どれもシェリー樽由来の甘みとスパイス感を楽しめる名品です。
グレンドロナック15年 リバイバル
オロロソとPXシェリー樽で熟成された人気モデル。濃密なレーズンやチョコレートの香りが強く、ベンリアック12年シェリーウッドに通じる味わいがあります。
アベラワー12年 ダブルカスクマチュアード
シェリー樽とバーボン樽の原酒をブレンドしたバランス型モルト。甘みとスパイスが心地よく、価格も手頃で日常的に楽しめる一本です。
ベンリアック ザ・トゥエルブ
同じベンリアック蒸溜所が手がける現行品。オロロソ、PX、バーボン樽の3種類を組み合わせたリッチな味わいで、実質的な後継モデルとも言える存在です。
グレンファークラス12年
伝統的なスペイサイド・シェリーカスク熟成の代表格。香ばしいオークとシェリーの甘みがしっかり感じられ、クラシックな方向性を求める方におすすめです。
いまベンリアック12年シェリーウッドを探すなら
日本国内ではすでに終売扱いのため、一般販売店での入手は難しくなっています。
ただし、海外通販サイトや国内のウイスキー専門店、オークションなどで旧ボトルが出回ることもあります。価格は以前の倍近くに高騰していますが、状態の良いボトルを見つけられればコレクション価値も十分です。
購入の際は、ラベルやシリアル番号を確認し、保管状態が良いかをチェックするのがポイントです。特に古いボトルは液面低下(いわゆるウイスキーレベルの減り)やキャップ劣化にも注意しましょう。
ベンリアック12年シェリーウッド終売の真相を振り返って
ベンリアック12年シェリーウッドの終売は、単なる「販売終了」ではなく、ウイスキー業界が抱えるシェリー樽の供給問題、コスト構造の変化、ブランド再編などが重なった結果でした。
旧ボトルが消えたことで惜しむ声も多いですが、その一方で新しいベンリアックシリーズは、より洗練されたフルーティーさを追求しています。
終売モデルは、シェリー樽全盛期の味わいをそのまま閉じ込めた貴重な存在。もし今、手元に一本残っているなら、それはまさに“時代の味”を感じられるウイスキーです。
これをきっかけに、シェリーカスクの奥深さとウイスキーづくりの背景に思いを馳せてみるのもいいかもしれません。
ベンリアック12年シェリーウッド――終売となった今も、スペイサイドの名モルトとして語り継がれる一本です。

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