ウイスキー好きの間でじわじわと話題になっているのが、「ベンリアック キュオリアシタス終売」というニュース。スペイサイドの名門蒸留所ベンリアックが誇るピーテッドモルトとして人気を博していたこのボトルが、市場から姿を消してしまったと聞いて、驚いた方も多いのではないでしょうか。ここでは、キュオリアシタスの魅力と終売の背景、そして気になる再販情報や似た味わいの代替銘柄について、じっくり掘り下げていきます。
「ベンリアック キュオリアシタス」とはどんなウイスキー?
「ベンリアック キュオリアシタス(BenRiach Curiositas)」は、スペイサイドのベンリアック蒸留所が手掛けていた10年熟成のシングルモルト・スコッチです。一般的にスペイサイドといえば、フルーティで軽やかな味わいが主流ですが、キュオリアシタスはその常識を覆す“ピーテッド仕様”という珍しい存在でした。
蒸留所が自家製麦した麦芽を55ppmという高フェノール値でピート乾燥し、46%のアルコール度数でボトリング。スペイサイドでありながら、アイラモルト顔負けのスモーキーさを持つ一本として、コアなファンから熱い支持を受けていました。
香りはハチミツやフルーツ、ヒース(heather)の華やかさにピートが重なり、味わいはスモークアップルウッドやナッツ、メープル、スパイスが折り重なるように広がります。余韻にはオークとワックス、フェンネルのニュアンスが感じられ、スペイサイドらしい甘みとピートの煙が見事に融合していました。
終売の真相 ― なぜキュオリアシタスは姿を消したのか
公式な発表として「終売理由」が明言されたわけではありません。しかし、複数の要因が絡み合って、この名作が姿を消したと見られています。
まずひとつは、ベンリアック蒸留所のオーナー企業が変わったこと。2016年にアメリカのブラウン=フォーマン社が買収して以降、ブランド全体のラインナップが再構築されました。ボトルデザインや商品名の刷新が進む中で、「キュオリアシタス」という名前のボトルが整理対象になったのです。
次に、原酒の確保や製造コストの問題。フェノール値55ppmというヘビーピーテッド麦芽は製造工程も手間がかかり、原料確保や熟成管理も難しい部類。長期的な安定供給が難しかったことも、シリーズ見直しの一因と考えられます。
さらに、近年の市場動向として「ピーテッドモルトの限定化・プレミア化」も影響しているでしょう。アイラ島以外のピート系ウイスキーは今や“マニア向け限定”として扱われる傾向が強く、ベンリアックでもスタンダード製品から外れ、限定シリーズへと移行する流れが生まれました。
実際、2019年頃には国内の販売店でも「終売(販売終了)」と明記され、輸入代理店ルートでも再入荷が停止。FineDramsなど海外の大手販売サイトでも「This product has been discontinued and will not be restocked.(再入荷予定なし)」と掲載されており、事実上の生産終了が確定しています。
キュオリアシタス終売後の市場動向と価格の変化
終売が確認された後、国内外で在庫は急激に減少。以前は5,000円前後で購入できたボトルが、いまや倍以上のプレミア価格で取引されるケースもあります。国内ではメルカリやオークションサイトで散発的に出品されていますが、いずれも「終売希少品」として扱われており、すでに一般的な流通ルートではほぼ見かけません。
一方で、ベンリアックのファンはキュオリアシタスの後継ボトルを探し求めるようになりました。結果的に、「ベンリアック スモーキー・テン」など、新シリーズが注目を浴びることになります。
終売後の市場では、こうした“後継モデル”や“似た味わいのピーテッドスペイサイド”への需要が高まっており、転売市場ではそれらのボトルも徐々に価格が上昇。キュオリアシタス自体はもちろん、同系統の味を持つボトル全体が希少価値を帯びています。
キュオリアシタスの味わいを再確認
改めて、このウイスキーが多くの愛好家に支持された理由を振り返ってみましょう。
まず香り。開栓直後から立ち上がるのは、心地よいスモークと果実のアロマ。ピート香がしっかりと存在感を放ちながらも、スペイサイド特有の柔らかい甘さがそれを包み込みます。まるでキャンプファイヤーの後に感じる甘い空気のような余韻が印象的です。
味わいはハニーアップル、トーストしたオーク、ナッツやメープルシロップのようなまろやかさ。強いピートながらも角がなく、煙と甘味が心地よく絡み合います。アイラのような潮気はなく、かわりに花やフルーツの要素が加わることで、複雑で繊細な“スペイサイド・ピーテッド”らしさが際立ちます。
余韻は短めという声もありますが、香ばしいスモークとバニラが静かに消えていく感覚は、むしろ上品。強烈な個性ではなく、バランスの取れた優等生タイプのピーテッドモルトとして記憶に残る一本です。
再販の可能性はあるのか?
残念ながら、現時点で「ベンリアック キュオリアシタス10年」の再販予定や復刻の公式発表はありません。蒸留所の現行ラインナップにも同名ボトルは存在せず、ブランド全体が「ベンリアック スモーキー・テン」「スモーキー・トゥエルブ」など新シリーズに移行しています。
つまり、キュオリアシタスという名のボトルが再び市場に戻る可能性は低いと見られます。ただし、ベンリアック自体はピーテッド原酒を継続的に生産しており、今後の限定リリースやスペシャルボトルで“かつての味”を再現する展開は考えられるでしょう。
もし再販を期待するなら、蒸留所公式や輸入代理店のニュースリリース、SNSなどを定期的にチェックするのがおすすめです。
「似た味わい」を楽しみたい人におすすめの銘柄
キュオリアシタスのように、「ピートのスモーキーさとスペイサイドのフルーティさ」を併せ持つボトルはそう多くありませんが、近しい味わいを探すことは可能です。ここでは、ファンから“キュオリアシタスに似ている”と評される代表的な銘柄を紹介します。
- ベンリアック スモーキー・テン
同じベンリアック蒸留所の現行ライン。キュオリアシタスの後継と目されるピーテッド・スペイサイドで、ピートとハニー、トロピカルフルーツの調和が絶妙。より洗練された仕上がりです。 - カリラ12年
アイラモルトですが、スモーキーながらもライトでフルーティな印象。キュオリアシタスの「スモーク+甘味」バランスを楽しみたい人にぴったりです。 - アードベッグ ウーガダール
こちらもアイラ島ですが、強烈なピートとシェリー樽由来の甘味の組み合わせが特徴。キュオリアシタスよりも濃厚で、スモーキーさを求めるなら満足度は高い一本。 - ベンリアック スモーキー・トゥエルブ
10年よりも熟成感と丸みが増した上位ボトル。果実味とスモークの両立がさらに緻密で、ピート好きにはたまらない仕上がりです。
これらの銘柄はそれぞれ個性が異なりますが、「スペイサイド由来のフルーツ感とピートの融合」という軸は共通しています。キュオリアシタスを愛していた人なら、きっとこの流れに共鳴できるはずです。
ベンリアック蒸留所の歩みと変化
少し背景を見てみると、ベンリアック蒸留所は1898年に創業。長い歴史の中で休止や再稼働を繰り返し、1983年からピーテッド麦芽を導入しました。スペイサイドでピーテッド原酒を手掛けるのは非常に珍しく、その挑戦心こそがキュオリアシタス誕生の原点です。
現在はブラウン=フォーマン社の傘下で、グローバル展開を進めるモダンなブランドに変化しています。デザインやシリーズ構成が刷新され、若い世代や海外市場にも親しまれる路線へ。キュオリアシタスはその過渡期にあった“挑戦の象徴”ともいえるボトルでした。
「ベンリアック キュオリアシタス終売」で見えるウイスキーの今
ウイスキーの世界では、終売が「終わり」ではなく「新しい章の始まり」であることも多いものです。キュオリアシタスが終売となっても、そのDNAはベンリアック スモーキー・テンのスモーキーシリーズに受け継がれ、さらに洗練された形で続いています。
ピートと果実のバランスを楽しむというコンセプトは、ウイスキーづくりの枠を超えて“スペイサイドの新たな挑戦”を象徴する存在にもなりました。いま市場に残るボトルを見つけたなら、それはただの終売品ではなく、時代を記録する一本といえるでしょう。
ベンリアック キュオリアシタス終売のまとめ
「ベンリアック キュオリアシタス終売で話題!」というタイトル通り、このニュースはウイスキーファンにとって大きな出来事でした。終売の背景にはブランド戦略の転換や原酒の希少性があり、再販の可能性は今のところ低め。それでも、その味わいは後継シリーズや他のピーテッドモルトに確かに受け継がれています。
ピートの煙とハチミツの甘み、果実の香りが共演するこの一本を知っている人は幸運です。もしまだ味わったことがないなら、「ベンリアック スモーキー・テン」など後継ボトルを通して、その世界観を体験してみてください。
ウイスキーの楽しみは“出会いと別れ”の連続。キュオリアシタスもまた、その中で永遠に語り継がれる一本です。

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