最近、「紅玉が売ってない」「どこに行っても見つからない」と感じる人が増えています。かつてはリンゴ売り場の定番だったこの品種ですが、今では店頭で見かける機会がぐっと減りました。今回は、紅玉がなぜ売っていないのか、その背景にある収穫時期・生産量・流通の事情、そしてどこで買えるのかまで詳しく解説します。
紅玉とはどんなリンゴ?
紅玉(こうぎょく)は、明治時代にアメリカから導入された歴史あるリンゴの品種です。果皮は鮮やかな深紅で、やや小ぶり。酸味がしっかりしていて、加熱しても崩れにくいのが特徴です。甘いだけのリンゴとは違い、酸味と香りが強いことで知られており、アップルパイや焼きリンゴ、ジャムなどの加工用に向いています。
かつては「紅玉=日本の代表的リンゴ」と言われるほどポピュラーでした。しかし、近年は「甘くて蜜入り」「シャキシャキで日持ちする」といった品種が主流になり、紅玉の姿を見かけることが少なくなってきています。
紅玉が売ってないと感じる主な理由
紅玉が「売ってない」と言われるようになったのは、いくつかの要因が重なっているためです。ここでは、代表的な理由を分かりやすく整理します。
① 収穫・出荷時期が短い
紅玉の収穫は早生(わせ)タイプで、一般的に9月下旬から10月上旬がピークです。青森県や長野県など主要産地では、この時期に一気に収穫・出荷されるため、スーパーの店頭に並ぶのも秋のわずか数週間ほど。
11月を過ぎると急激に流通量が減り、冬の終わりにはほとんど見かけなくなります。
つまり、紅玉は「秋限定のリンゴ」なのです。春や夏に探しても見つからないのは自然なことと言えます。
② 日持ちしにくく流通に不向き
紅玉は皮が薄く、水分も多いため、他のリンゴに比べて傷みやすく長期保存が難しい品種です。そのため、遠方への輸送や店頭での長期陳列には向きません。
現代のスーパーは「長く売れる・在庫管理しやすい」果物を優先する傾向があり、結果的に紅玉の取り扱いが減少しています。
店頭に並んでも、鮮度管理が難しく、痛みやすい果実ゆえに販売期間が短くなるのです。
③ 生産量が減少している
紅玉の生産量は年々減っています。かつては国内でも主力品種の一つでしたが、「甘いリンゴが好まれる時代」に変わり、酸味の強い紅玉は敬遠されるようになりました。
農家にとっても収穫時期が早く、保存が難しい紅玉は手間がかかるため、生産量を減らして他の人気品種に切り替えるケースが増えています。
実際、東京都中央卸売市場のデータでも、紅玉の取り扱い量の約8割が青森県産、1割が長野県産と、ごく限られた地域に集中しており、全国流通量は多くありません。
④ スーパーの品揃え戦略の変化
全国チェーンのスーパーでは、年間を通じて安定供給できる品種が優先されます。たとえば「ふじ」「ジョナゴールド」「王林」などは保存性が高く、見た目もきれいで、甘みも強い。これに対して紅玉は販売期間が短く、味に好みが分かれるため、取り扱いリスクが高いと判断されやすいのです。
一方で、農協直売所や道の駅、果樹園の直売コーナーなどでは、いまでも秋になると紅玉が並びます。スーパーで見かけない人も、産地直売所を訪れると出会える確率がぐっと上がります。
⑤ 気候や自然災害による収穫量の変動
ここ数年、果樹全体が猛暑や台風、霜害などの被害を受けています。紅玉は早生種のため、春の気温変化や高温障害の影響を受けやすく、実が小さくなったり収穫量が減る年もあります。
実際、2023年~2024年は全国的に猛暑と降雨の影響でリンゴ全体の収穫量が減少し、紅玉もその影響を受けたと報告されています。
紅玉の旬と販売時期を押さえよう
紅玉を確実に手に入れたいなら、まずは旬のタイミングを知ることが大切です。
- 収穫時期:9月中旬〜10月上旬
- 出荷・流通時期:9月下旬〜11月初旬
- 最盛期:10月
地域によって多少前後しますが、10月を中心に販売されるケースが多いです。長野県や山形県、青森県の直売所・通販サイトでは、この時期に「予約販売」「数量限定」で扱われることもあります。
旬の短い果物なので、見かけたら早めに購入するのがおすすめです。
主な産地と販売地域
紅玉の主要産地は、青森県・長野県・山形県などの冷涼な地域です。特に青森県が全国出荷量の約8割を占めています。
青森の弘前市や黒石市、長野県の中野市・須坂市周辺では、紅玉を看板商品にしている農園も少なくありません。
一方で、関東・関西などの都市部では、紅玉を取り扱う店舗がかなり限定されます。
一般のスーパーでは取り扱いがなく、百貨店の青果コーナーや高級スーパー、農協直売所、またはネット通販(産地直送サイトなど)が主な販売ルートです。
紅玉が手に入りにくい時の代替品
もし紅玉が見つからない場合、アップルパイや焼き菓子づくりに使える代替品を検討するのも一つの方法です。
- 紅玉の代わりになるリンゴ
これらは比較的流通量が多く、秋から冬にかけてスーパーでも手に入ることがあります。特にジョナゴールドは紅玉に近い風味で、アップルパイにもよく合います。
紅玉を探すならここをチェック
紅玉は流通量が限られているため、探す場所を工夫するのがポイントです。
- 産直・直売所
秋の収穫シーズンには、青森や長野の直売所で箱売りされることが多いです。観光農園での「りんご狩り」でも紅玉が含まれることがあります。 - ネット通販・ふるさと納税
信州や東北の果樹園が直送するオンラインショップでは、紅玉の予約販売を実施しています。ふるさと納税の返礼品に設定されている自治体もあります。 - 青果専門店・百貨店
短期間ですが、百貨店の果物売り場で「紅玉フェア」などを開催することがあります。地元産や限定入荷の紅玉が見つかるチャンスです。
紅玉の保存と楽しみ方
紅玉は鮮度が命。購入したら早めに食べるか、新聞紙で包んで冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。
乾燥を防ぐため、1個ずつポリ袋に入れるのも効果的です。ただし、他の果物と一緒に入れると熟成が進みやすいので注意が必要です。
味わうなら、加熱調理がおすすめです。焼きリンゴ、アップルパイ、コンポートなどにすると酸味が引き立ち、香りが一層豊かになります。砂糖やシナモンとの相性も抜群で、「これぞ紅玉」という深い風味が楽しめます。
紅玉が売ってないのは自然なこと?まとめ
「紅玉が売ってない」と感じる理由は、販売終了ではなく“時期と流通の問題”が大きいと言えます。
9〜10月の短い期間しか収穫・出荷されず、日持ちしにくく、生産量も限られているため、スーパーで通年見かけることはほぼありません。
とはいえ、秋の旬に合わせて産地直送やネット販売をチェックすれば、手に入るチャンスは十分にあります。酸味が豊かで香り高い紅玉は、今も根強い人気を持つリンゴ。
もし見かけたら、ぜひ季節の味覚として楽しんでみてください。秋のほんの短い間だけ出会える、特別な一玉です。
