最近、「紫雲膏（しうんこう）が売ってない」「どこにも置いてない」と感じている方が増えています。
昔から家庭の常備薬として重宝されてきた紫雲膏が、なぜ今、手に入りにくくなっているのでしょうか。この記事では、その販売中止の背景や、まだ購入できる場所、代替品の選び方までを詳しく紹介します。
そもそも紫雲膏とは？伝統の漢方軟膏
紫雲膏は、江戸時代の外科医・華岡青洲が考案したとされる伝統的な漢方外用薬です。
主な原料は「紫根（しこん）」「当帰（とうき）」「胡麻油」「ミツロウ」「豚脂」などで、自然由来の成分を煮出して作る油性軟膏。鮮やかな紫色が特徴的で、独特の香りを持ちます。
効能としては、軽い火傷、切り傷、あかぎれ、しもやけ、痔による痛み、肛門裂傷などに使われ、皮膚の修復や炎症の軽減を助けるとされます。
薬局や病院で調剤されることもあり、肌トラブルに優しく作用する軟膏として長年愛用されてきました。
しかし近年、店頭で見かけなくなったという声が多く、実際に「販売終了」「在庫限り」と告知するメーカーも出ています。
紫雲膏が売ってないと言われる主な理由
「売ってない」と言われる背景には、いくつかの具体的な要因があります。ここでは代表的なものを整理します。
原材料の入手難
紫雲膏の主成分である「紫根」は、ムラサキという植物の根から抽出される天然生薬です。
この紫根の供給量が近年減少しており、原材料の確保が難しくなっていると指摘されています。
さらに、豚脂や胡麻油などの動植物油も価格高騰や品質基準の厳格化により、安定調達が難しくなっているようです。
製造コストの上昇と収益性の低下
紫雲膏は、漢方軟膏特有の煮込み・濾過といった手間のかかる製造工程を必要とします。
そのため大量生産に向かず、製造コストが高くなりやすいのが現実です。
加えて、医薬品としての品質管理や製造販売承認の維持にもコストがかかるため、採算面で継続が難しいメーカーが増えています。
メーカーによる製造終了
代表的な製品であるクラシエ紫雲膏は、公式に製造終了が発表されています。
他社でも同様に販売を終了しているケースが多く、これが店頭から消えた最大の理由と言えます。
在庫がなくなれば流通も止まり、「どこにも売ってない」という状況になるのは自然な流れです。
医薬品市場の変化
かつては家庭の常備薬として広く使われていた紫雲膏ですが、現在では市販の保湿クリームや創傷治療薬が充実しており、一般消費者の選択肢が多様化しています。
これにより、紫雲膏の需要が徐々に減少し、製造を続けるメリットが小さくなったとも考えられます。
現在も販売を続けている製品はある？
完全に姿を消したわけではありません。
ツムラ紫雲膏など一部のメーカーでは、引き続き紫雲膏を製造・販売している例も確認されています。
ただし、生産量が少なく流通ルートが限定的なため、薬局によっては取り扱いがない場合もあります。
そのため、「販売中止の紫雲膏」と「継続生産中の紫雲膏」が混在しており、情報がわかりにくい状況になっているのです。
また、漢方薬局や専門店が独自に製造しているタイプもあり、調剤薬局で相談すると取り寄せできることもあります。
紫雲膏を購入できる場所と探し方
「どうしても手に入れたい」という方は、以下の方法を試してみてください。
1. 漢方専門薬局に問い合わせる
市販のドラッグストアに置いていなくても、漢方専門の薬局では取り扱っていることがあります。
店舗によっては独自調合の紫雲膏を扱っている場合もあり、成分構成を確認して相談できるのがメリットです。
2. 通販サイトで探す
楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなどの通販サイトで検索すると、まだ在庫のある商品が見つかる場合があります。
ただし、「製造中止」「在庫限り」「入荷未定」といった注意書きがあることも多いため、購入前に必ず確認しましょう。
3. 病院や薬剤師に相談する
医療用の紫雲膏は、医師の判断で処方されるケースもあります。
皮膚のトラブルや痔の症状などで使用を希望する場合は、医療機関で相談するのも一つの方法です。
購入・使用時の注意点
紫雲膏を使用する際は、以下の点に注意しましょう。
- 衣服への着色に注意：紫根の色素が衣類や寝具に付くと落ちにくい。
- 使用部位を清潔に：火傷や傷口など、汚れを落としてから薄く塗布する。
- 保存方法：直射日光を避け、室温で保管。高温下では油脂が分離することがある。
- 禁忌事項を守る：化膿性創傷や広範囲の熱傷などには使用しない。
また、製造元によって成分比や剤形が異なるため、必ずパッケージや添付文書を確認することが大切です。
紫雲膏が手に入らないときの代替品
もし紫雲膏が手に入らない場合は、次のような選択肢を検討してみましょう。
- 同処方の他社製品：ツムラ紫雲膏や漢方薬局の自家製紫雲膏など、同じ処方の製品を探す。
- 保湿・修復系軟膏：皮膚の乾燥やひび割れ対策なら、ワセリンやヘパリン類似物質配合クリームでも代用可能。
- 痔や肛門裂傷向けの外用薬：症状が特定部位に限定されている場合は、目的に合った市販薬を選ぶとよい。
用途によって最適な製品は異なるため、薬剤師に相談して選ぶのが安心です。
紫雲膏はもう買えないの？今後の見通し
現状、クラシエ紫雲膏のように製造終了を発表した企業もある一方で、ツムラ紫雲膏など一部メーカーでは製造が続いています。
ただし、原材料や製造コストの問題が解消されない限り、大量生産の再開は難しいと考えられます。
将来的に製造体制が整えば、処方を引き継ぐ形で再登場する可能性もありますが、現段階では未定です。
そのため、「在庫があるうちに確保しておく」か、「代替品を活用する」という形が現実的な対応となるでしょう。
まとめ：紫雲膏が売ってない理由と、今できること
紫雲膏が店頭で見かけなくなった背景には、原料不足・製造コスト・市場縮小・メーカーの撤退など、さまざまな要因が絡んでいます。
完全に生産が終わったわけではありませんが、流通量が減り、在庫限りの状態が続いています。
もし見つけた場合は早めの購入を検討し、手に入らないときは漢方薬局への相談や代替製品の利用を考えると良いでしょう。
長年愛されてきた伝統軟膏・紫雲膏が、またいつか手軽に手に入る日が来ることを願いたいですね。
