緑内障と診断されて、まず提案される治療が「点眼薬(目薬)」です。
でも種類が多くて、どれが自分に合うのか分からない――そんな方は少なくありません。
この記事では、緑内障治療に使われる点眼薬の種類や特徴、副作用、そして選び方のポイントをわかりやすく解説します。
緑内障の点眼薬は「眼圧を下げる」ことが目的
緑内障は、目の奥にある視神経が少しずつ傷つき、視野が狭くなっていく病気です。
一度失った視野は元に戻らないため、「進行を止める」ことが治療の中心になります。
そのための基本治療が、眼圧を下げる点眼薬です。
眼圧とは、目の中の水(房水)が出入りするバランスで決まります。房水が多く作られたり、うまく排出されなかったりすると眼圧が上昇し、視神経を圧迫します。
つまり点眼薬の役割は、
- 房水の産生を抑える
- 房水の排出を促す
このどちらか、または両方を通して眼圧を下げることです。
主な緑内障点眼薬の種類と特徴
現在、緑内障治療に使われている点眼薬は大きく分けて6系統ほどあります。それぞれ作用の仕組みや副作用が異なります。
プロスタグランジン関連薬(FP受容体作動薬)
もっとも一般的に使われているのがこのタイプです。
ぶどう膜強膜流出という経路から房水の排出を促し、眼圧を下げます。
1日1回で効果が持続し、初期治療の第一選択となることが多いです。
代表的な薬にはキサラタン、タプロス、トラバタンズ、ルミガンなどがあります。
副作用としては、目の充血、まぶたや目の周囲の色素沈着、まつ毛が伸びる、まぶたがくぼむといった外見上の変化が挙げられます。
点眼後は目の周囲を軽く拭くことで、これらの副作用を減らすことができます。
EP2受容体作動薬(エイベリスなど)
比較的新しいタイプの点眼薬です。
プロスタグランジン系と似ていますが、別の受容体に作用し、房水の排出を促します。
まぶたのくぼみや色素沈着などの副作用が少ないとされ、見た目の変化を気にする人にも使われやすい傾向があります。
ただし、白内障手術を受けた方や予定がある方では使用が制限される場合があるため、医師の判断が必要です。
β遮断薬(チモロールなど)
房水の「産生を抑える」タイプの薬です。
以前は主流でしたが、全身への影響があるため、現在は慎重に使われます。
喘息や心臓病がある人には向かない場合があり、内科との連携が必要なケースも。
点眼薬といっても、涙道を通じて体内に吸収されることがあるため注意が必要です。
炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)
毛様体の酵素を抑えて房水の産生を減らす薬です。
代表例はトルソプトやエイゾプト。
内服薬と違い、点眼薬として使えば全身への影響が少ないのが特徴。
ただし、点眼時にしみる感じや一時的なかすみを感じることがあります。
α2受容体作動薬(アイファガンなど)
房水の産生を抑えると同時に排出を促す「二重作用型」です。
作用が強い分、長期使用でアレルギー性結膜炎や眼瞼炎が起こることも。
数カ月経ってから赤みやかゆみが出ることもあるため、違和感を感じたら早めに医師に相談を。
Rhoキナーゼ阻害薬(グラナテックなど)
比較的新しい作用機序で、線維柱帯からの房水の流れを改善するタイプです。
他の薬で効果が十分でない場合に追加されることが多いです。
点眼後に一時的な充血が出やすいですが、2時間ほどで落ち着くケースが一般的です。
点眼薬の選び方と組み合わせ方
まずは1種類からスタート
治療は1剤から始めて、効果や副作用を見ながら調整していくのが基本です。
目標は「20〜30%の眼圧低下」。
進行度によっては、さらに低い眼圧を目指します。
1剤で十分な効果が出ない場合は、作用の異なる薬を追加します。
最近では2種類の有効成分を1本にまとめた「配合点眼薬」もあり、点眼本数を減らせるメリットがあります。
継続しやすさも大切な基準
緑内障は「一生付き合う」治療です。
効果が高くても、1日3回も点眼が必要だったり、刺激が強くて続けづらければ意味がありません。
1日1回で済む薬、刺激が少ない薬、使いやすいボトルなど、自分の生活リズムに合うものを選ぶことが、長く続けるコツです。
副作用・全身疾患とのバランスを見る
副作用が気になる場合は、種類を変えることで解決できることがあります。
例えば、まぶたの色素沈着が気になるならEP2作動薬へ、充血が強いなら他系統への変更など。
また、心疾患・呼吸器疾患・腎機能障害がある場合は、使えない薬もあります。
必ず主治医に持病や服用中の薬を伝えましょう。
点眼の正しい使い方
どんなに良い薬でも、使い方を間違えると効果が半減します。
眼科医が推奨する基本の点眼手順は次のとおりです。
- 手を洗う
- 下まぶたを軽く引き、1滴を正確に点眼
- 点眼後は1〜2分目を閉じ、目頭を軽く押さえる
- 溢れた液はティッシュで優しく拭き取る
複数の薬を使う場合は、5分以上間隔をあけて点眼します。
また、点眼後すぐにコンタクトレンズを入れないように注意しましょう。
継続が難しいときの工夫
点眼の継続は、緑内障治療の最大の課題です。
忙しくて忘れてしまう、外出先で点眼できない、という方も多いでしょう。
そんなときは、
- スマホのアラームを設定する
- 朝晩のルーティンに組み込む
- 合剤で点眼回数を減らす
など、自分に合った方法を試してみてください。
医師と相談して、負担を減らす形を探すのが一番です。
定期検査で進行を防ぐ
点眼を続けても、病気の進行を完全に止めることは難しい場合もあります。
そのため、定期的に眼圧測定・視野検査・眼底検査を受けて、効果を確認することが大切です。
自己判断で中断したり、症状がないからと放置するのは危険です。
違和感があればすぐ眼科へ。治療内容を調整することで、視野の維持が期待できます。
緑内障の点眼薬はどれがいい?自分に合う治療を医師と相談を
結論として、「どの点眼薬が一番良いか」は人によって異なります。
眼圧の高さ、視野の状態、体質、副作用の出方、生活スタイル――それぞれの条件で最適な薬は変わります。
重要なのは、「続けられる治療」を見つけること。
気になる副作用や使いづらさがあれば、遠慮せずに眼科医に伝えましょう。
緑内障は、早期発見と継続治療で進行を抑えられる病気です。
自分に合った点眼薬を見つけ、無理なく続けていくことが、視力を守る第一歩になります。
