ソニーの4Kハンディカム「FDR-AX60」。家庭用ビデオカメラとしては高級機に位置づけられ、手ぶれ補正や画質の良さで人気を集めていました。そんなAX60がいつの間にか店頭から姿を消し、「販売終了」の文字が見えるようになっています。この記事では、販売終了の背景や後継モデルとの違い、そして今から購入を検討している人に向けて代替機種を紹介します。
FDR-AX60とはどんなカメラだったのか
まずはAX60がどんなカメラだったのかを簡単に振り返っておきましょう。
発売は2018年。ソニーが誇る「空間光学手ぶれ補正」を搭載した4Kハンディカムとして登場しました。これはレンズとセンサーが一体で動く構造で、手持ち撮影でもブレを最小限に抑える仕組み。歩きながらの撮影や、子どもの運動会など動きの多いシーンでその真価を発揮しました。
レンズはZEISS(ツァイス)バリオ・ゾナーT*。広角26.8mmからの撮影が可能で、風景からポートレートまで幅広く対応。光学20倍ズームに加え、4K時30倍、HD時40倍までの全画素超解像ズームにも対応しており、遠くの被写体もくっきり撮れると評判でした。
さらに、ファインダーやマニュアルレンズリングを搭載し、「撮る」ことを楽しめる仕様。いわゆる家庭用ビデオカメラの中では珍しく、撮影志向の強いユーザーからも支持されていました。
FDR-AX60が販売終了した理由
では、なぜこの人気モデルが販売終了になってしまったのでしょうか。
2023年末頃から、ソニーストアや家電量販店のサイトで「販売終了」「入荷終了」と表示され始め、実質的な生産完了となりました。メーカー公式から明確なアナウンスはありませんが、背景にはいくつかの要因があると考えられます。
ひとつは、家庭用ビデオカメラ市場の縮小。スマートフォンやミラーレスカメラの動画性能が大幅に向上したことで、わざわざハンディカムを購入する人が減少しています。
もうひとつは、ソニー自身が製品ラインを整理している点。AX60を含むハンディカムシリーズは、ここ数年新機種の登場が少なく、今後はより小型なVlogカメラやαシリーズへのシフトが進むとみられています。
つまり、FDR-AX60の販売終了は「モデル交代」というより、時代の流れによる市場整理の一環と言えるでしょう。
後継モデルはある?最も近いのはFDR-AX45A
「じゃあ、AX60の後継モデルはどれ?」という疑問を持つ人も多いはず。
結論から言うと、AX60の“正式な後継機”は存在しません。ソニーが発表している4Kハンディカムの最新モデルは「FDR-AX45A」で、これが実質的な代替機という位置づけになります。
AX45Aも同じく「空間光学手ぶれ補正」を搭載しており、ブレに強い点は共通です。センサーサイズも同じ1/2.5型 Exmor R CMOS。光学20倍ズームや全画素超解像ズームの性能もほぼ同等です。
しかし、AX60とAX45Aには明確な違いもあります。
AX60にはファインダーとマニュアルリングが搭載されていましたが、AX45Aにはファインダーがありません。これにより、より軽量で扱いやすくなった一方で、「構えて撮る」感覚を重視するユーザーには物足りないという声もあります。
また、AX45Aは内蔵メモリー64GBを備えており、SDカードなしでもある程度の撮影が可能。気軽さでは上回りますが、操作面での自由度はAX60が勝っていました。
販売終了の背景にある市場の変化
FDR-AX60の販売終了は、単にひとつのモデルが消えたというだけではありません。ここには、家庭用ビデオカメラ市場の大きな転換点があります。
スマートフォンのカメラ性能は年々進化し、4K撮影はもちろん、手ぶれ補正やHDR動画など、かつてハンディカムの専売特許だった機能をスマホが標準で備えるようになりました。
また、YouTubeやSNSへの投稿文化が広がる中、よりコンパクトで持ち運びしやすい「Vlogカメラ」や「ミラーレス一眼」の需要が高まっています。
ソニーも例外ではなく、「ZV-E10」などのVlog向け機種や、「αシリーズ」の動画性能を強化する方向に舵を切っています。
こうした流れの中で、AX60のような“大型ハンディカム”は市場から徐々に姿を消していったのです。
代替機として検討できるモデル
AX60の代わりに検討できる機種はいくつかあります。ここでは、用途別に代表的な選択肢を紹介します。
ソニー FDR-AX45A
AX60と同じ「空間光学手ぶれ補正」を搭載した現行モデル。
より軽量で、価格も比較的手ごろ。旅行や子どもの行事撮影など、手軽に高画質を求める人におすすめです。ファインダーが不要で、液晶モニター撮影が中心の人にはちょうど良いバランスです。
ソニー ZV-E10(ミラーレスカメラ)
もし「動画の自由度をもっと上げたい」と考えるなら、ミラーレスも選択肢に入ります。レンズ交換が可能で、背景ボケや高感度撮影などの表現幅が広がります。Vlog撮影にも対応しており、ハンディカムからのステップアップにも適しています。
パナソニック HC-VX992M
同価格帯の4Kハンディカムとして人気。手ぶれ補正性能も高く、ソニーに近い操作感があります。カラー調整や高倍率ズームが得意な点も魅力です。
中古市場を含めるなら、まだAX60の在庫が残っている店舗もあるようです。中古品を探す際は、付属バッテリーの劣化具合や液晶の焼け、SDカードスロットの接触などをしっかり確認しておきましょう。
FDR-AX60を今から購入する場合の注意点
販売終了後のモデルを購入する際はいくつか注意が必要です。
まず、在庫が少なく価格が変動しやすい点。販売終了後は中古市場で値上がりする傾向があります。
次に、修理サポート期間。メーカーの修理受付は通常、販売終了後7年ほどですが、在庫部品がなくなれば早期に終了することもあります。長期使用を考えている人は、保証期間を確認しておくと安心です。
また、アクセサリーの入手性にも注意。専用バッテリーやリモコン、外付けマイクなどが徐々に市場から減っていくため、必要な周辺機器は早めに揃えておくのがおすすめです。
それでもFDR-AX60が評価される理由
販売終了となっても、FDR-AX60の評価は今なお高いままです。
理由は、やはりその撮影安定性と画質。特に「空間光学手ぶれ補正」は、同価格帯のビデオカメラの中でも群を抜いて優秀でした。長時間の手持ち撮影でも映像が揺れず、旅行や行事での記録には非常に強い味方です。
また、ファインダー付きという点も見逃せません。屋外で液晶が見づらい場面や、しっかり構えて撮りたい時にファインダーがあると撮影体験がまるで違います。
そのため「AX45Aも悪くないけれど、やっぱりAX60が欲しい」という声も多く、今でも中古市場で根強い人気を保っています。
FDR-AX60が販売終了した今、どう選ぶか
ビデオカメラのあり方が変わりつつある今、重要なのは「何をどんな風に撮りたいか」です。
家族の思い出を手軽に残したいならAX45A。動画制作や表現の幅を広げたいならミラーレスやVlogカメラ。
一方で「ブレずに安定した映像を撮りたい」「ファインダーで構えて撮る感覚を残したい」という人には、販売終了後でもFDR-AX60は魅力的な選択肢のままです。
在庫や中古市場をうまくチェックすれば、今でも手に入れることは可能です。
ただし、販売終了モデルであることを理解し、サポート期間やアクセサリー供給などを確認しておくことが大切です。
FDR-AX60販売終了のまとめ
FDR-AX60の販売終了は、ひとつの時代の節目といえるでしょう。
高い手ぶれ補正性能、ファインダーやマニュアル操作といった“撮る楽しさ”を備えたモデルが姿を消すのは惜しいですが、その遺伝子はFDR-AX45Aや他のソニー製カメラにも引き継がれています。
これからビデオカメラを選ぶなら、AX60が持っていた魅力を基準に「自分にとって何が大事か」を整理してみてください。
そして、時代が変わっても、思い出を残すという楽しみは変わりません。
販売終了した今だからこそ、FDR-AX60の価値を見直すタイミングなのかもしれません。
