トヨタの人気セダン「カムリ」が販売終了──。そんなニュースが2023年に多くのメディアで報じられました。長年トヨタの中核を担ってきたモデルだけに、「本当に終わってしまうの？」「後継車はあるの？」と気になっている方も多いと思います。この記事では、カムリの販売終了の背景や理由、今後のトヨタのセダン戦略、そして海外モデルの動きまでを詳しく整理していきます。
日本国内でのカムリ販売終了の事実
まず結論から言うと、**トヨタ・カムリ**の国内向け生産は2023年12月下旬で終了しました。トヨタ自動車が正式に発表しており、ディーラー向けには同年4月時点で案内が出ていたといわれます。
ただしこれは「国内販売が終了」という意味であり、世界的にカムリそのものが消えるわけではありません。実際、北米やアジア諸国では現在もカムリが販売・生産されています。つまり「日本専売モデルではなく、グローバル専売車へ戻った」という位置づけが正しいでしょう。
なぜカムリは日本で販売を終了したのか？
カムリ販売終了の背景には、複数の要因が重なっています。大きく分けると以下の3つです。
1. 国内セダン需要の減少
近年、日本ではSUVやミニバン、コンパクトカーの人気が圧倒的に高まっています。車高の高さ、視界の良さ、乗り降りのしやすさなどが理由で、特にファミリー層やシニア層から支持を集めています。
その一方で、4ドアセダンは「時代遅れ」「使い勝手が悪い」といったイメージが強まり、販売台数は減少の一途をたどってきました。カムリもその流れの中で、販売台数が1万台を切る年が続いており、採算面でも厳しい状況にありました。
2. 日本市場に合わなかった車格・デザイン
カムリはもともと北米市場を主戦場とするグローバルモデルです。そのため車体サイズが大きく、全長約4.9m、全幅1.8m超と、日本の道路事情や駐車環境にはやや不向きでした。
さらにデザイン面でも、海外向けに合わせたスポーティでワイドな造形が「日本人好みとは言い難い」という声もありました。結果として、販売チャネル内でクラウンやプリウス、カローラなどと役割が重なり、明確な立ち位置を示しづらくなっていたのです。
3. トヨタのラインナップ再編と電動化戦略
トヨタはここ数年、国内モデルの再構築を進めています。その中で、セダンの位置づけを見直し、「クラウンシリーズ」や「ミライ」といった新しい価値軸を持つ車種に重点を移しています。
特にクラウンは、従来のセダンからSUVやクロスオーバーへ派生し、**“クラウンブランドの再定義”**として注目を集めています。こうした方針の中で、カムリは“役割を終えたモデル”と判断された可能性が高いです。
カムリ販売終了の裏にある「トヨタの戦略転換」
カムリ販売終了は、単に1車種の終焉ではなく、トヨタの戦略的な転換点でもあります。ここには以下のような意図が読み取れます。
- 国内セダンの縮小とSUVシフトの加速
- ハイブリッドやEVへのさらなる移行
- グローバルモデルの統一と開発効率化
- 国内専売車種を減らし、海外仕様との共通化を進める
つまり、トヨタとしては「日本市場に特化したセダンを維持するより、世界共通プラットフォームで展開する方が合理的」と判断したのです。これにより、開発コストや生産ラインの効率化が進み、より幅広い地域で競争力を発揮できる体制を整える狙いがあります。
海外では「新型カムリ」が登場している
興味深いのは、カムリが日本で販売終了したのとほぼ同時期に、北米で新型モデルが発表されたことです。2023年11月、トヨタは北米市場向けに第9世代（通称XV80型）を公開しました。
この新型カムリは、全車ハイブリッド化を果たしたモデルで、2.5Lエンジン＋モーターの「トヨタ ハイブリッド システム（THS）」を採用。さらに、電子制御AWD（四輪駆動）を設定するなど、環境性能と走行性能の両立を目指しています。
つまり、カムリは世界的には進化を続けているのです。
トヨタとしては「日本市場では一時的に販売終了するが、グローバルでは成長を続けるモデル」として位置づけていることが分かります。
日本での後継モデルは？クラウンとの関係性
「カムリの後継車は何になるのか？」という疑問も多く聞かれます。結論から言うと、明確に“カムリの後継”とされる車種は存在しません。
しかし、実質的なポジションを引き継いでいるのは**クラウン（スポーツ／クロスオーバー）やプリウス、ミライ**などと考えられています。
- クラウン（クロスオーバー／スポーツ）
ミドル〜ラージサイズのハイブリッド車として、かつてのカムリユーザーが流入している。乗り味や快適性の方向性も近い。 - プリウス
車格はやや下がるが、ハイブリッド専用車として燃費志向のユーザーを吸収している。 - ミライ
水素燃料電池車として次世代セダンを象徴。セダンボディにこだわる層が一部移行している。
つまり、「トヨタのセダン需要を複数モデルで分散して受け止める」形にシフトしているわけです。これもトヨタらしい柔軟な市場対応といえます。
販売終了後のカムリの今後と中古市場の動き
国内での新車販売は終わったものの、ディーラー在庫や中古車市場ではカムリの流通がしばらく続く見込みです。
特に最終モデル（10代目・AXVH70系）はハイブリッド専用車で、静粛性・燃費・内装品質のバランスが高く評価されています。中古市場ではむしろ人気が再燃しており、在庫が少ない地域では価格が上昇傾向にあるとの報告もあります。
また、部品供給やアフターサービスについては、トヨタが長期的に対応を続ける方針です。したがって、「今からカムリを買っても大丈夫？」という不安は、現時点ではあまり心配する必要はないでしょう。
今後の国内セダン市場とトヨタの展望
トヨタだけでなく、国内各メーカーがセダンを減らす動きは加速しています。日産ティアナやホンダアコードも一時販売を停止し、スバルやマツダもSUV比率を高めています。
つまり、「セダン＝高級・特別車」という時代に入りつつあるのです。
トヨタとしても、今後はセダンを完全に消すのではなく、「クラウン」や「ミライ」のように特別な価値を持つ車種として展開していく方針が見て取れます。
カムリが果たしてきた「上質な日常車」の役割は、形を変えてクラウンブランドの中で継承されていくでしょう。
トヨタカムリ販売終了のまとめと今後の注目点
改めて整理すると、トヨタカムリ販売終了の背景には以下のような流れがあります。
- 国内販売低迷（年間1万台未満）
- セダン需要の低下とSUV人気の高まり
- 北米仕様中心の車格・デザインが国内に合わなかった
- トヨタの国内ラインナップ再編・電動化戦略
- クラウンシリーズへの移行とブランド再構築
そして、海外ではカムリが新型として進化しており、「カムリ=終わり」ではなく「市場ごとに再定義される存在」になったといえます。
もしかすると、数年後に右ハンドル仕様が再び日本に導入される可能性もゼロではありません。トヨタは市場の変化に応じて柔軟に動く企業です。
トヨタカムリ販売終了で見えてくる“時代の変化”
トヨタカムリの販売終了は、単なる1車種の終焉ではなく、日本市場の構造変化を象徴する出来事です。
セダンからSUVへ、ガソリン車からハイブリッド・EVへ。クルマの価値基準が大きく変わる中で、カムリはひとつの時代を締めくくる存在になりました。
これからクルマを選ぶ私たちにとって大切なのは、「どんな形のクルマを選ぶか」よりも、「どんな生活を描きたいか」。
トヨタカムリが残した“上質な移動”という哲学は、きっと新しいトヨタ車の中にも生き続けるはずです。
