「ボルビックって、もう売ってないの？」――そんな声を耳にしたのは、2020年頃のこと。フランス生まれの天然ミネラルウォーターとして、コンビニやスーパーで長年親しまれていたボルビックが突然姿を消しました。
この記事では、ボルビックが販売終了になった背景と、その本当の理由、そして今買える代替品について詳しく解説します。
ボルビック販売終了の公式発表とその時期
ボルビックを輸入・販売していたのはキリンビバレッジです。公式サイトによると、2020年12月末をもって出荷を終了したと発表されています。理由として挙げられたのは、「製造委託契約の終了」。つまり、ボルビックを製造・供給する契約が終了したため、日本向けの販売を続けられなくなったということです。
この発表が出たのは2020年7月。当時のニュースでも「嗜好の変化が影響した」と報じられ、ボルビックの国内販売は同年12月をもって終了しました。長年親しんだブランドの終わりに、多くのファンが驚きと残念の声を上げました。
なぜボルビックは販売終了になったのか？5つの背景
1. 製造委託契約の終了が直接の要因
まず一番の理由は、公式発表でも明言されている製造委託契約の終了です。ボルビックはフランスのオーヴェルニュ地方で採水され、キリンビバレッジが日本での販売を担っていました。
しかし、契約が満了となり、新たな契約更新には至らなかった。つまり「作れない」「輸入できない」状態になったことが販売終了の直接的な原因です。
この背景には、販売量の減少や採算性の低下など、経済的な判断が関係している可能性が高いとみられています。
2. 国産天然水の人気上昇と輸入水離れ
2000年代後半から、国内のミネラルウォーター市場では国産天然水の需要が急増しました。
「サントリー天然水」や「い・ろ・はす」など、国産ブランドが全国で販売され、どこでも安く手に入るようになったのです。
一方で、輸入天然水は輸送コストや為替の影響を受けやすく、価格面で不利。さらに「安全・安心は国産」という意識の高まりもあり、ボルビックのような海外ブランドの売上は年々減少していました。
日本ミネラルウォーター協会のデータでも、輸入天然水のシェアは2000年代初期の約20％から、2020年には10％を切るまでに縮小。市場構造の変化がボルビック撤退の一因といえます。
3. 水源地の環境問題と持続可能性の課題
ボルビックの採水地であるフランス・オーヴェルニュ地方では、地下水位の低下や河川流量の減少が報告されています。
世界的な気候変動や地球温暖化の影響で水資源の枯渇が懸念される中、採水量を制限する動きが出ているとも言われています。
採水地の保全や地域環境への配慮はブランドの信頼に直結します。水源の持続可能性に関する国際的な課題が、製造委託契約を続ける上での障害になった可能性もあります。
4. 物流・為替コストの上昇と価格競争力の低下
輸入製品であるボルビックは、為替の変動や物流コストの上昇に強く影響を受けます。
円安が進むと輸入コストが上がり、小売価格への転嫁も難しくなる。結果、国産天然水よりも高価になり、販売数が落ちてしまうという悪循環が生まれます。
また、国内ではペットボトルのリサイクル・輸送コスト削減などサステナブルな取り組みが進んでおり、環境対応コストの面でも不利でした。こうした経済的負担が、ボルビック撤退の背景にあったと考えられます。
5. 飲料市場全体の変化と“売場の再編”
ミネラルウォーター市場自体も、かつてのような「水＝健康」という単純な訴求では伸びなくなっています。
炭酸水、フレーバーウォーター、機能性飲料など選択肢が多様化し、棚スペースの奪い合いが進行。販売効率が下がった商品は撤退せざるを得ません。
店頭では「売れる国産ブランドを多く置く」方針が強まり、ボルビックのような輸入ブランドは徐々に陳列数を減らしていきました。消費者ニーズと流通の構造変化、両方の波に飲まれた格好です。
販売終了＝製造中止ではない？海外では今も健在
ここで誤解しやすいのが、「ボルビックが世界的に製造中止になった」というわけではない点です。
フランスでは今も通常通り生産・販売されています。日本国内での販売を終了したのは、あくまでキリンビバレッジの輸入・販売契約が終わったためです。
実際、2021年以降にはアイリスフーズが輸入を再開したとの情報もあり、ネット通販や輸入食品店などで「並行輸入品」を購入することができます。
ただし、以前のように全国のコンビニで手軽に買えるわけではなく、数量・価格ともに限られています。
ボルビックの味や特徴はなぜ愛されたのか
ボルビックは「硬度60mg/L前後」の軟水で、日本の水に非常に近い性質を持っていました。
そのため、クセが少なく、まろやかな飲み口が特徴。コーヒーや紅茶、炊飯、料理などにも合う万能な水として支持を集めていました。
また、ボルビックは「水源からボトルまで一切空気に触れずにボトリングする」という厳格な品質管理で知られており、ナチュラルな清涼感を維持できていた点も人気の理由です。
ブランドストーリーやフランスの自然を感じるデザインも、多くのファンに愛され続けました。
ボルビックが買えない今、代替としておすすめの天然水
販売終了後、多くの人が「ボルビックに近い水はどれ？」と探しています。
ボルビックの特徴は“軟水・まろやか・飲みやすい”という点。これを基準にすると、以下の天然水が代替としておすすめです。
- い・ろ・はす：硬度27〜71mg/L。全国で入手しやすく、環境配慮型のボトルも人気。
- サントリー天然水（南アルプス・阿蘇など）：硬度10〜80mg/Lで、ボルビックに近いバランス。
- クリスタルガイザー：アメリカ産軟水で、硬度38mg/L前後。コスパ重視派に人気。
- 日田天領水：大分県の日田で採水。ミネラルバランスが良く、まろやかな口当たり。
- フィジーウォーター：やや硬度が高め（約106mg/L）だが、まろやかで人気の輸入ブランド。
どれも飲みやすく、日常使いに向いた軟水です。特に「い・ろ・はす」や「サントリー天然水」は全国どこでも買える点が魅力でしょう。
ボルビック販売終了が示す“時代の流れ”
ボルビックの販売終了は、単なる一商品の撤退ではなく、飲料業界の構造変化を象徴する出来事でした。
「輸入ブランドだから売れる」という時代は終わり、いまは“身近で環境に優しい国産水”が主流になっています。
また、SDGsの潮流やサステナブル経営への意識が高まり、「水をどこからどうやって運ぶか」という視点が企業判断に影響するようになったことも大きいでしょう。
消費者にとっても、「ブランドよりも環境」「輸入品よりも地産地消」という価値観の変化が進んでいます。ボルビックの販売終了は、そんな時代の転換点を象徴しているとも言えます。
ボルビック販売終了のまとめと今後
ボルビックはフランスの名水として長年日本で愛されてきましたが、2020年に製造委託契約の終了により国内出荷を停止。
背景には、国産天然水の台頭、輸入コストの上昇、水源地の環境問題、消費者の嗜好変化など、複数の要因が重なっていました。
とはいえ、ボルビックが完全に消えたわけではありません。今でも海外では販売が続いており、ネット通販では入手可能。
ただ、日常的に飲みたい人には、国内ブランドの軟水が現実的な代替になります。
時代や価値観が変わっても、「おいしい水を選ぶ」ことの本質は変わりません。
ボルビックが教えてくれた“水を選ぶ楽しさ”を、次に出会うお気に入りの一本にもつなげていきたいですね。
