S N20はどんな製品？生産終了の背景を整理しよう
工場や制御盤でよく見かける「S N20」。これは三菱電機が製造していた低圧電磁接触器、いわゆる「電磁開閉器」と呼ばれる機器の一つです。モーターのオン・オフ制御や安全停止などに使われ、産業現場では長年の定番モデルでした。
しかし、S N20はすでに2015年10月に生産終了。メーカーの公式発表でも「旧S-Nシリーズから新しいS-Tシリーズへ移行」と明記されています。つまり、今は新品としての入手が難しく、在庫品や中古品が一部流通しているだけという状況です。
では、いざS N20が壊れたとき、どうすればいいのか？ そこで登場するのが「代替品（互換モデル）」です。
三菱電機公式の代替品は「S T21」
まず結論から言うと、S N20の正式な後継モデルは三菱電機の「S T21」です。これはメーカー自身が公表している正式な代替機で、互換性・安全性・性能すべての面で最も信頼できる選択肢です。
S T21はS Nシリーズからの進化版として設計されており、下記のような特徴があります。
- 定格電流：20A（AC-3級 / AC200V）
- 補助接点：同等または改良型
- 外形寸法：ほぼ同等（置き換え可能）
- 国際規格対応（CE, UL, TUVなど）
- 操作コイル電圧：AC100V / AC200V対応
このように、S N20と同じ環境にそのまま設置できるケースが多く、制御盤の配線や設計を大きく変えずに置き換えられるのが大きなメリットです。
価格も新品で8,000円前後が相場で、AmazonやFA機器専門ショップで普通に入手できます。
なぜS N20は生産終了になったのか？
S Nシリーズ全体の生産終了は2015年。この背景には「環境対応」と「製品規格の更新」があります。
- 環境規制の強化
旧S-Nシリーズでは一部に鉛やハロゲン系樹脂が使われていたため、RoHS指令やREACH規制に適合させるため新シリーズに切り替え。 - 安全規格の国際統一化
海外向けにUL・IEC規格がより厳格になったことで、S-Tシリーズがそれに対応。 - 設計の省エネ化・コンパクト化
S-Tシリーズは消費電力を抑えつつ、同等以上の性能を実現しており、省エネ志向の設備設計にも対応可能です。
つまり、S N20は「時代の変化」によって役目を終えたといえます。
互換性チェック：S T21はどこまで置き換え可能？
「S T21ならS N20の代わりにすぐ使える？」という質問はよくあります。結論から言えば、多くのケースで置き換え可能ですが、いくつか確認すべきポイントがあります。
- 定格電流と用途
S N20が扱っていたモーター容量（最大4.0kW程度）に対して、S T21もほぼ同等。AC-3級200Vなら問題なし。 - 補助接点構成
S N20は「1a1b」構成が標準でした。S T21では同構成または増設可能なので、補助回路を使用していた場合は型番を確認。 - 端子ネジサイズ・取付方式
レール取付（DIN35mm）またはパネル取付のどちらかを使っている場合、現行モデルの固定方式に合うかを確認。 - 外形寸法
S T21はS N20より数ミリ小さい程度で、ほぼ同サイズ。制御盤の改造は不要な場合が多いです。
これらを確認すれば、S T21へのスムーズな置換が可能です。
他社互換機も存在する？コスパを重視するならチェック
三菱純正以外でも、S N20と同等クラスの電磁接触器を出しているメーカーがあります。代表的なのは下記のような製品です。
これらはいずれもAC200V・約20Aクラスの電磁接触器で、機能的にはS N20相当。外形や端子構造はメーカーごとに異なりますが、制御盤設計を新規に行う場合や、費用を抑えたい現場では有力な代替候補になります。
ただし、注意したいのは「ネジ位置」「補助接点数」「コイル電圧」などの細かい仕様。完全互換ではないため、置き換え時は必ずカタログで比較してください。
コスパで見るとどれがベスト？
コスト面では以下のような特徴があります。
- 三菱 S T21：信頼性重視。純正品で安全。価格はやや高め（7,000～8,000円台）。
- 富士電機 SC-4-1／SC-5-1：安定した品質でコスパ良好。5,000円前後。
- IDEC MUF18／MUF20：小型・軽量で安価。省スペース用途に強い。
- オムロン J7KNA-20：世界規格対応で信頼性高め。価格も中間帯。
もし既存設備を長く使う場合は、純正のS T21がベスト。
一方、制御盤を新設・更新するなら、富士電機やIDECなどの互換機でコスパを取る選択もアリです。
中古・在庫品を使うのはアリ？
S N20はすでに新品生産が終わっているため、中古やデッドストック品がネットオークションなどで見つかることもあります。ただし、長期保管品は内部接点の劣化やコイル絶縁の低下が懸念されるため、産業用途ではおすすめできません。
また、保守パーツとして一時的に使う場合でも、次回交換時にはS T21など現行モデルへの切り替えを計画するのが安全です。
代替選びで失敗しないための3つのチェックポイント
- 定格電流と電圧が一致しているか
AC200V 20A クラスならOK。AC-3級、AC-1級など用途別に確認。 - 制御コイル電圧が同じか
S N20のコイル電圧はAC100V／AC200V対応が多い。代替機も一致しているか要確認。 - 補助接点の構成と端子位置
リレー保持回路などで補助接点を使っている場合、代替品の構成（1a1bなど）を合わせる。
この3点さえ押さえれば、代替選びでトラブルになることはほぼありません。
S T21が選ばれる理由と導入メリット
多くの設備管理者がS T21を選ぶ理由は、やはり「安心感」です。
- メーカー公式代替だから信頼性が高い
- 既存回路との互換性がほぼそのまま
- 部品供給が安定している（今後も長期販売予定）
- 設計が新しく、消費電力が少ない
つまり、「現場の手間を最小限にして更新できる」というのが最大のメリットです。特に、工場停止リスクを避けたい現場では純正代替が最も現実的な選択です。
まとめ：S N20の代替品は「S T21」が最有力！
S N20が手に入らなくても、焦る必要はありません。
三菱電機の後継モデル「S T21」がそのまま置き換え可能で、性能・安全性・互換性のすべてで上位互換です。
もしコストや入手性を重視するなら、富士電機のSC-4-1やIDECのMUF18なども検討可能です。ただし、完全互換ではないため、必ず仕様書を確認しましょう。
設備を長く安定して運用するためにも、今後は**S N20からS T21への切り替え**を前提に整備しておくのがベストです。
S N20の代替品は「S T21」で決まり。互換性・コスパ・信頼性の三拍子そろった最適解として、これからのメンテナンス計画にぜひ取り入れてみてください。
