「いつものインタール吸入液が手に入らない」と困っている方も多いのではないでしょうか。喘息やアレルギー治療で長年使ってきた人にとって、突然の供給停止は本当に不安ですよね。この記事では、現在のインタール吸入液の供給状況や、代替品・代用薬の候補、そして今できる対応方法をわかりやすく整理して紹介します。
インタール吸入液とは？どんな薬だったのか
インタール吸入液（一般名：クロモグリク酸ナトリウム吸入液1％）は、アレルギー性喘息などの症状を予防するための薬です。発作を直接止める薬ではなく、マスト細胞の働きを安定させ、ヒスタミンなどの炎症物質が放出されるのを防ぐことで「発作を起こりにくくする」タイプの治療薬として知られてきました。
使用方法はネブライザーを用いた吸入。1アンプル（2mL）を1日3〜4回吸入するのが一般的で、症状が落ち着けば1日2〜3回に減量することもあります。小児から高齢者まで幅広く使われてきた、安全性の高い薬として長年親しまれていました。
インタール吸入液が供給停止に？その背景と現状
2025年秋、製造元のサノフィ株式会社および沢井製薬株式会社（ジェネリック版の「クロモグリク酸Na吸入液1％サワイ」などを製造）が、製造ラインの無菌管理に問題が見つかったとして自主回収（クラスII）を発表しました。
対象ロットは2025年製造分の一部で、品質検査のやり直しが必要になったことから、出荷を一時停止する事態となっています。
この結果、全国の医療機関や薬局では在庫が急速に減少。現在は「供給再開の目処は2026年春頃」とされており、実質的には入手が困難な状態が続いています。喘息やアレルギー治療の現場では、代替薬や一時的な治療変更が進められています。
代替品候補1：クロモグリク酸ナトリウム吸入液（ジェネリック）
まず最も近い代替候補は、インタール吸入液と同じ有効成分を持つクロモグリク酸ナトリウム吸入液。かつてはサワイや日医工などから販売されていましたが、2025年現在はいずれも出荷停止・販売終了の状態となっています。
つまり、「同成分のジェネリックで代替できる」という選択肢は、今のところ現実的ではありません。これが今回の混乱の大きな原因でもあります。医療機関でも在庫分を限られた患者に優先的に処方している場合が多く、新規での入手は難しいと考えておきましょう。
代替品候補2：他の吸入抗アレルギー薬・吸入ステロイド薬
インタール吸入液と同じように「炎症を抑えて喘息を予防する」作用を持つ薬として、吸入ステロイド薬（ICS）があります。これは近年の喘息治療の主流であり、症状を安定化させる点で代替的な役割を果たすことができます。
代表的な例としては以下のような薬剤があります。
これらは医師の指導のもとで使う必要があり、インタール吸入液のような「非ステロイド系抗アレルギー薬」とは分類が異なりますが、喘息コントロールという目的では有力な代替手段になり得ます。
代替品候補3：剤形が異なるクロモグリク酸製剤
クロモグリク酸ナトリウムは、吸入液以外にもいくつかの剤形で存在します。
- 点鼻薬（例：インタール点鼻液）
花粉症やアレルギー性鼻炎などに使われるタイプ。気道炎症への直接的な作用は限定的ですが、アレルギー体質の改善補助として使われることがあります。 - 点眼薬（例：インタール点眼液）
アレルギー性結膜炎に使用されるもの。呼吸器症状には効果が及びませんが、同成分の安定供給ルートとしては残っています。 - 内服薬（細粒）
かつてはインタール細粒も存在しましたが、こちらも生産終了となっており、現在はほとんど入手できません。
このように、剤形が異なると薬の吸収経路や効果範囲も変わるため、「吸入液の代替」としては限定的。ただし、同成分にこだわる場合には参考になります。
代替が難しい理由と供給問題の背景
今回の問題をより深く見ると、「なぜ代替が見つからないのか」という点が重要です。
インタール吸入液のような無菌製剤は、製造過程で高度な衛生管理が必要です。わずかな工程不備でも安全性に影響が出るため、メーカーが自主的に回収を行うことは珍しくありません。
さらに、国内でこの製剤を扱っている企業が限られており、1社が止まると供給全体が途絶えるという構造的リスクを抱えています。
薬価が低く、需要が特定患者層に偏っていることから、他社が代替製造を引き受けるインセンティブも低いという課題も指摘されています。その結果、代替薬が「理論上は存在しても、実際には供給されていない」という状況に陥っているのです。
患者が今できる対応策
1. 医療機関に早めに相談する
自己判断で中止や切り替えを行うのは危険です。まずは主治医にインタール吸入液の在庫状況を確認し、他の吸入薬や治療方針について相談しましょう。
2. 発作時の緊急対応を確認する
インタール吸入液は「予防薬」なので、代替がない期間は発作時に備えることが大切です。発作が起きた際に使える救急吸入薬（サルタノール、メプチンなど）を医師と相談しておくと安心です。
3. 生活環境の見直し
薬の供給が不安定な時こそ、アレルゲンや刺激物の回避、睡眠環境の改善、空気清浄機の活用など、生活面でのコントロールも重要になります。
4. 最新情報をチェックする
製薬会社や日本呼吸器学会、日本アレルギー学会の公式発表で、供給再開や代替案に関する情報が随時更新されています。定期的に確認しておきましょう。
医療現場からの声と今後の見通し
現場の医師からは、「吸入ステロイド薬への切り替えでコントロールできているケースも多い」という報告がある一方で、「小児や高齢者で副作用を考慮するとインタール吸入液が理想的だった」との意見もあります。
サノフィは再試験・再出荷の準備を進めており、再開時期の目標を2026年春としていますが、再発防止策の徹底や行政の確認作業を経るため、前後する可能性もあります。
長期化する場合は、吸入ステロイドを含む他剤への恒常的な切り替えが進むと見られています。
インタール吸入液の代替品まとめと今後の対策
現時点では、インタール吸入液に完全に置き換えられる代替薬は存在しません。最も近い同成分製剤も供給停止中であり、実際の代替は「治療体系の再設計」という形になります。
代替候補としては以下が挙げられます。
- クロモグリク酸Na吸入液（ジェネリック各種：現在停止中）
- 吸入ステロイド薬（ICS）またはICS＋LABA配合薬
- クロモグリク酸点鼻・点眼など同系成分の局所製剤（限定的な代用）
今後は、供給再開までの期間をどう乗り切るかが焦点です。医師と連携し、症状のコントロールと安全性の両立を図りながら、必要に応じて他剤を組み合わせる柔軟な治療方針が求められます。
インタール吸入液の代替品に関する最新まとめ
「供給再開はまだ先」「代替薬も限られている」——そんな中で不安を抱く方も多いと思います。けれど、医療現場ではすでに多くの代替策が検討されており、適切に管理すれば症状を安定させることは可能です。
焦らず、主治医としっかり話し合い、自分に合った治療方法を一緒に見つけていきましょう。
インタール吸入液が再び安定して供給される日まで、安心して過ごせるようにサポート体制を整えておくことが何より大切です。
